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ネタバレ必至で読み解く主観的映画批評の日々!

コラテラル・ダメージ

2008-09-02 22:28:17 | 映画(か)
評価点:70点/2001年/アメリカ

監督:アンドリュー・デイヴィス(「逃亡者」など)

同時多発テロ前に撮られた映画が、タイムリーな話題を扱っていた。

元爆弾担当の消防士(アーノルド・シュワルツェネガー)がテロによって殺された妻子の仇を討つため、単身ゲリラ地域に乗り込む。
そこで目にしたのはゲリラと密接に暮らす人々の世界だった。

▼以下はネタバレあり▼

テロやその報復が毎日のように取り上げられるうような、最近において、現実とのリンクをどうしても感じて観てしまった。
これが作られたのはあの事件のずいぶん前だというから、時代の流れやめぐり合わせは不思議だと思う。

シュワルツェネッガーとテロといえば「トゥルー・ライズ」の話を思い出してしまうが、
それとは比べられないほどシリアス。
勿論、娯楽性がないわけではないけれど、現実的に感じた面も多い。
逆にこれほどテロに対して真摯な(比較的に)態度であるから公開できたのかもしれない。

全体的には良く出来た作品だと思った。
この映画を、ただ「テロに対して理不尽なまでの強攻策を打ち立てるアメリカ」として観ればおそらくアメリカ的な思想に陥るけど、日本人である僕が中間(比較的に)的な立場で見ると
まあ、それほど安直な描き方はしていないと思う。
ただ僕自身がよくそういった面を注意していたから、そう感じたのであって、実際のアメリカ人にとっては、やはり「テロ報復をあおる」映画なのかもしれない。

それは終わり方に象徴されている。
主人公は事件解決後沈黙したままだという報道で終わる。
しかし彼の本当の役割は、
「テロリスト側」と「その被害者」とにあるギャップを伝える事ではなかったのか。
だからアメリカ的ではあるけど、(劇中の報道陣に対して)コメントを残すとか
インタビューに答えるなどすればよかったと思う。

それはストーリーの構造的な部分にも関わることだ。
主人公の死んだ妻子に良く似た母子が登場する。
実は、その母子は彼の仇の妻子だったのだけれど、そこで主人公にとっての矛盾が起こる。
その仇の生い立ちもわかる(多少強引だけど)。
そこには立場を分かつにもかかわらず、ある種の共通性があった。
そうした面を前面に出せば、きっと意味のある映画になったのではないかと思う。
またその仇の恋人が主人公を騙していたあたりは、意外ではなかったけれど、ある意味安心した。
もしあれで、そのまま味方になっていたとしたら、リアルさのかけらもない。

伏線の張り方は、特別巧さは感じないけども及第点ではあった。
台詞一つの「元爆弾捜査班」という肩書きだったけど、全くなくはない。捜査する側から仕掛ける側になったという戸惑いや皮肉についてのシーンを入れてもよかったとは思うけど。

全体的に展開が速いと感じたのは確かだ。
そのことによって先が読めてしまう所はあった。

やはり細かく見ていかないと、テロ報復奨励映画になってしまうだろう。
政治的、思想的な限界がアメリカ映画の「良さ」を衰退させていく事は間違いない。
おそらく、この映画を観てアメリカ人は、「テロはいけない事だ」と決心するのだろう。
そういう意味ではもっと突っ込んだものじゃないと駄目だとも思う。
どんな映画でも、アメリカ人はそうもっていきそうだけど。


(2002/04/29執筆)


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