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ネタバレ必至で読み解く主観的映画批評の日々!

アメイジング・スパイダーマン2

2014-05-04 21:51:44 | 映画(あ)
評価点:74点/2014年/アメリカ/143分

監督:マーク・ウェブ

これくらい馬鹿のほうがかえって安心できるのか。

高校を卒業しピーター・パーカー(アンドリュー・ガーフィールド)とグウェイン(エマ・ストーン)は、それぞれの道へ進もうとしていた。
ピーターは彼女を失うのではないかという思いの中、スパイダーマンとしてNYを駆け回り、グウェンは科学者としてオックスフォード大学への進学を考えていた。
そんなある日、NYの電力をすべて管理しているオズボーン社で事故が起こる。
事故の被害者となったマックス(ジェイミー・フォックス)は身体が電気と一体となるという突然変異を起こしてしまう。
有り余るエネルギーをもち、その騒動をスパイダーマンが止めに入ったことでマックスはスパイダーマンを恨むようになる……。

待ちに待った(?)ゴールデンウィークの目玉作品、新「スパイダーマン」シリーズの最新作である。
私の大好きなアンドリュー・カーフィールドのとぼけたピーターが大活躍するシリーズだ。
前シリーズがかなりシリアス路線で進んでいたのに対して、今回のシリーズはコメディ要素が強い。
その好き嫌いはあるにしても、3Dという映像体験も重なってか、映画館はどこも混雑していた。
GWでしかも大雨の29日の午後に行ったのだが、2Dや吹き替え以外ほとんど空きはなかった。

もちろん私は予約していったので3D字幕ですけれども。

▼以下はネタバレあり▼

前作からの「バッカプル」ぶりは健在である。
その点は安心して良い。
予告では、三体もヴィラン(いわゆる悪魔超人)がいるので焦点がぼやけてしまうのではないかと心配したが、かなりまとまりのある作品になっている。
見所をしっかりと押さえているため、シリーズ第2作目とは思えないほど、独立性がある。
この前のテレビ放映を見逃していても十分楽しめる。
そして、もちろんマーヴル・ファンの期待にも応えるように、原作を踏まえた展開になっている。

ピーターはトビーとは全く違って自分がスパイダーマンであることに対して大きな不安を抱いていない
不安があるとすれば、守るべき人を守れないことがあるかも知れない、という点だけだ。
だから、人助けをどんどん行う。
クモの糸を大量発注しているという描写が前作にあったが、今回はそれすらない。
もはやクモの糸を大量購入しているのは、彼(スパイダーマン)しかいないのに、問題にさえされない。
だから、民衆たちの関心も「誰がスパイダーマンなのか」ではなく、「スパイダーマンはNYに必要か」という議論になっている。
ものすごく温かい街である。
NY市警と対立することもないし、彼に異を唱える(ゴッサムシティの「バットマン」のように)ような野暮なことはしない。

動きもコミカルで、悲壮感なくバッタバッタと悪人を退治してしまう。
挙げ句の果てに、恋人であるグウェンは思わず「ピーター」と街中で叫んでしまうほどだ。
彼女も彼女で、オックスフォード大学への最終面接まで彼氏といちゃつくほどのバカッぷりを見せてくれる。
キャラクター造形が私たちと等身大過ぎて、前シリーズの重さはどこへいったのかと思うほど、笑える場面や台詞が多い。

その明るいテイストに、きちんと色を付けているのが、死者の「遺志」である。
それによって物語が俄然しまってみえる。
私が映画館を後にしたとき、同じ会場にいたカップルの男子が、彼女に必死になって説明していた。
「だから、助けようと思ったけど、ぎりぎり助けられへんかってん。
だから彼女は死んでしまってん」
「え~~マジで!? 最悪やん」という会話をしていた。
おいおい、めちゃ死んでたし、お葬式のシーンもあったやん! 大丈夫か?!

それは余談だが、今回のテーマはその「遺志」をいかに引き継いでいくかという話になっている。
前回で死んだベンはもちろんのこと、グウェンの父親が亡霊として現れ、「彼女に近づくな」と繰り返し警告する。
また、実父のリチャード・パーカーの遺言を閉鎖された駅で見つけ、その遺志を継いでオズボーン社と対峙する。
最後には、グウェンがスピーチで話したことを受け継ぎ、再びスパイダーマンになることを決心する。
主要キャラクターがこの二作で多く死んでいくが、それでもその死を受け継いでいくという方向性をしっかりと示している。
だから、話は非常に重たいはずなのに、明るく受け取ることができる。
自分が暗くつらいときでも、自分が誰かの明るい希望になれるように、というメッセージはすごく勇気づけられることだろう。
等身大のキャラクターだからこそのメッセージだろう。

また、それはピーターだけではない。
親友のハリーもまた彼の父親の遺志を継ぎ、ヴィランとして立ちふさがる。
ちょっと思い込みが激しくて、前シリーズのジェームズ・フランコよりも、むしろクリストファー・ミンツ=プラッセ(「キックアス」のレッド・ミスト)に近い匂いがするキャラクターだ。
(ちなみにハリー役のデイン・デハーンは「「プレイス・ビヨンド・ザ・パインズ 宿命」にも出ている注目俳優)
父親からの遺されたメッセージを受け取るという点で両者は共通するが、全く方向性を異にしてお互いが対峙していくという様子は非常に対照的で物語としても美しい。
相変わらずドダイに乗ったダサイ造形なのは、もはや仕方がないとして、物語にしっかりと食い込んでいく。

ヴィランといえば、エレクトロと名乗るジェイミー・フォックスの設定も良かった。
「何も持たない」と信じ込んでいた彼は、スパイダーマンに助けられることで自分の価値を見出す。
しかし、エレクトロとなった彼がスパイダーマンに対立することで、激しい怒りに変化させる。
そのゆがみは非常に現代的だし、また大衆にも共感を得やすい感情だろう。
「俺たちはともに裏切られたんだ」と訴えるグリーン・ゴブリンと、エレクトロには明確な戦う理由がある。
だから物語はシマるし、説得力がある。
エレクトロは、どう考えても「ウォッチメン」の海パン男にしか見えなかったのに火星で瞑想に耽らなかったのが少し残念だ。

前シリーズとは違ったおもしろさが、きちんと描かれている。
「スパイダーマン」という素材そのものが魅力的で、アメリカ的なのだろう。
2作目にして、次回作がますます楽しみになってきた、稀有なヒーロー映画だ。

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