外国で一時的個人的無目的に暮らすということは

猫と酒とアルジャジーラな日々

ぬれハンバーガー

2011-05-01 18:21:49 | トルコ
「有名なぬれハンバーガー」と札を出したケースの上に、オレンジが山積み。



イスタンブルは巨大な屋台村である。
というのは大げさだが、とにかく外食産業が盛んな土地で、レストランや食堂だけではなく路上のいたるところで食べ物を売る人たちがいるので、買い食いには不自由しないのである。

有名なところではシミット(ゴマつきのドーナツ型パン)やミディエ・ドルマ(ムール貝のピラフ詰め)、マルマラ海岸のサバ・サンド、冬の名物ケスターネ・シェケリ(焼き栗)などがあるが、それ以外にも色んなものが路上で食べられる。なにを食べても大抵おいしいのが、トルコのすごいところである。まずいものって、あんまり食べたことがない。長距離バスの休憩で入った無個性なドライブインで注文したチーズトーストなんかですらおいしかったので、感心したことがある。パンがおいしいせいだね。

私の3ヶ月にわたる鋭い観察によると、街角のケバブ屋さんのチキンドネル・サンドと、路上のいたるところでワゴン車でられているノフトル・ピラウ(チキンスープ味のヒヨコマメのピラウ)が、値段の安さといい、腹の膨れ具合といい、トルコ買い食い界の二大横綱であるが(もちろん味もよい)、伏兵として、ここでは「ぬれハンバーガー」をぜひ紹介したい。

日本には「ぬれおかき」とか「ぬれせんべい」がありますね。あれを作った人はどういうつもりで作ったのでしょう。パリッと乾燥した歯ごたえが身上の食べ物をあえてしっとりさせてしまったのは、どうしてなの?カラッと明るいだけではなく、陰影や深みのある食べ物を演出しようとしたのかしら?実際、ぬれていることにより、しょうゆの味と香りがより際立っていて味わい深いことは認めるが、歯に問題がある私としては、ミルキーやキャラメルやグミと並んで、避けて通りたい食べ物のひとつである。

幸いなことに「ぬれハンバーガー」は歯に優しい食べ物である。
街角のケバブ屋さんの店頭にさりげなく設置されたショーケースでいつも湯気を立てているが、その存在に気づくのに2ヶ月くらいかかった。そのくらい控えめな存在なのである。イスタンブル滞在約2ヶ月目に、「この水槽みたいなケースの中の、茶色いハンバーガーみたいなものはなんだろう?」とようやく気がついた。よく見ると「ぬれハンバーガー」と書いたトルコ語のラベルが貼ってある。うーん、気になる。いつか食べてみなくてはならない・・・。
そんなある日、映画館から出たら盛大に雨が降っていた。傘を持っていない私はずぶぬれになりながら、トルコ語学校に向かった。
その途中で、タクシム広場からイスティクラール通りに入る手前の角にあるファーストフード屋さんの店先で、ほかほか魅力的な湯気を立てているこの謎の食物が目に入った。授業開始まで時間もあるし、ここで少し休んでいこう、ついでに前々から気にかかっていた「ぬれハンバーガー」を味わってしまおう、と思い立った。自分も雨にぬれていることだし、なんとなく親近感もわいてくる。

ハンバーガーのパンは湯気で暖かく湿っていて、ところどころに茶色っぽい肉汁が浸み込んでいた。ハンバーグは肉の粒が粗めで、キョフテ(トルコの肉団子)に近いかんじ。他の具はない。身体が冷え切っていたせいか、ふんわりと優しく、とてもおいしく感じられ、道端でうたた寝してる、春の猫を見かけたときみたいな、なごんだ気分になった。そう、あれはなごみ系の食べ物なのだ。よく晴れた、気温の高い日にも食べてみないと公平で科学的(?)な判断は下せないと思うが、いまのところ「ぬれハンバーガー」に対して深い好意を抱いている私である。


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