外国で一時的個人的無目的に暮らすということは

猫と酒とアルジャジーラな日々

2019年チュニジア・トルコ・イタリア旅行記(18)~イスタンブール4日目前半・ファーティフ地区「リトルダマスカス」編~

2020-06-21 16:18:00 | トルコ

 

 

イスタンブール滞在4日目は、シリア人が多く住んでいて「リトルダマスカス」(参考)と呼ばれているという噂のファーティフ地区に出かけた。

 

 

まず、いつものようにテラスで朝食。この日は鳥たちにパン屑を投げながら食べた。すずめ、キジバト、カラス、カモメ等、お馴染みの鳥たちが集まってくれた。

 

 

ああ、楽しかった~餌付けしながら食事をするのはけっこう忙しかったが。

 

 

ファーティフ地区には、トラムとメトロを乗り継いで行った。スルタナメットからトラムに乗り、アクサライで降りて少し歩いてメトロに乗り換えるのだ。メトロの「Emniyet-Fatih」(エムニイェット・ファーティフ)駅で降りて、ほんの少し歩けば「リトルダマスカス」と呼ばれている界隈に着く。

 

 

スルタナメット駅付近のケバブ屋さん。毎日猫にケバブをおすそ分けしているそうだ。

 

 

メトロ

 

 

この駅で降りた。

 

 

駅からアクシェムセッティン(Akşemsettin)通りを少し行って、イエメン料理屋の角で右に曲がってバリパシャ(Balipaşa )通りに入ったら、アラビア語の看板を出したシリアの食材を売る店やシリア菓子店が集まる一帯に着く。

 

 

イエメンレストラン「ハドラマウト」。イエメンレストランの名前は、「バーブルヤマン」か「ハドラマウト」であることが多い。

 

 

シリアの食料品があるとのサインを出しているお店

 

 

ファラーフェル屋「あなた好みのファラーフェル」(ファラーフェル・アラー・キーフ・キーファック)←シリア風の発音

 

 

ファラーフェル屋のすぐそばの少し大きめの食料品店に入ってみたら、懐かしいシリアの食材が並んでいた。うっとり・・・

 

シリアでよく見た塩辛いチーズが色々ある。塩抜きをしてから食べる。

 

 

ムハンマラ(焼いた赤パプリカのペースト)やオリーブ

 

 

あれもこれも買いたくなったが、ホテル暮らしで冷蔵庫もないので我慢して、土産用のザアタルミックス(参考)の小袋のみ購入。

 

 

緑色のと黄土色のがあった。黄土色の方はアレッポ風で、クミン粉末が入っているらしい。

 

 

シリア人の常連客とアラビア語のダマスカス方言で挨拶を交わしていた年配の男性店員に、シリア人のお店が集まっている場所はどこにあるか質問したら、「ここですよ」という答えが返ってきた。やはり、この辺りが「リトルダマスカス」なのだ。語尾を伸ばして歌うように抑揚をつけて発音するダマスカス方言は、イタリア語のヴェネツィア方言のような優美さが感じられ、耳に心地よく響く。

 

 

ついでにシリア菓子とファラーフェルのおススメの店も聞いたら、「シリア菓子店はこの店の周辺に3か所あります。その中で一番美味しいのは『ヌレッティン』ですが、値段がかなり高い。他の2軒も十分美味しいので、そのどちらかで買えばいいでしょう」とアドバイスしてくれた。私にお金がないって、どうしてわかったのかな。(見りゃわかるわ) ファラーフェルは先ほど見かけた「あなた好みのファラーフェル」が美味しいということなので、後で買いに行くことにした。

 

 

トルコ在住のシリア人とゆっくり話す機会はなかなかないので、ここぞとばかりに他にも色々質問したのだが、彼は終始笑顔で快く答えてくれた。いい人だ。大まかな内容は以下の通り。細かいことはもう忘れてしまったが。

 

(この辺は「リトルダマスカス」って呼ばれているそうですね)

この辺りの店は、どれもダマスカス出身のシリア人の店ですよ。ちなみに、南部のガジアンテプには、国境を挟んだ向かい側のアレッポから避難した人が多いです。ガジアンテプとアレッポには、昔から国境を越えた経済的・社会的な繋がりがありますから。アレッポ側にはトルコ語を話すトルクメン人が住んでいるし、ガジアンテプ側にはトルコ語と並んでアラビア語を母語とするアラブ系トルコ人がいます。

 

(あなたはこのお店の主人ですか?)

いやいや、この店の主人はサウジ在住のシリア人で、私は単なる従業員ですよ。トルコで自分の店を開くには多額の資金が必要ですから、私には無理です。シリアでは開店資金はほとんどかかりませんでしたが。トルコでは税金や家賃などの費用も高くつきます。私はダマスカスでは洋服工場を営んでいましたが、ここでは資金がないので無理です。

 

(トルコでの生活はどうですか?)

トルコは生活費が高いので、暮らしは厳しいですね。トルコ語も話せませんし。でも、シリア人を大勢受け入れてくれたのはトルコです。

 

(最近、トルコでは滞在許可等に関して、シリア人に対する扱いが厳しくなっていると聞きましたが)

以前はシリア人に対する労働・居住地等に関連した取り締まりはゆるかったのに、最近厳しくなったことは確かです。イスタンブールの滞在許可を持っている人以外は、当局に強制退去させられるようになってきています。私はガジアンテプで滞在許可を申請しましたが、仕事を探してイスタンブールに移住しました。ここ以外の地域では、なかなか仕事が見つからないのです。強制退去になってはいませんが、私にイスタンブールの滞在許可がないせいで、子供たちは3人とも学校に通うことができないでいます。公立ではなくて私立の学校であれば通うことは可能ですが、費用が高額で手が届きません。

 

(国連や支援団体から、何か支援は受けていますか)

国連からの支援は一切ありません。赤新月社からは月120リラ(現在のレートで1900円弱)を支給されていますが、全然足りません。

 

(シリアに帰ろうと考えていますか)

シリアに帰るための状況が整って、早く帰れることを願っています。シリアでは戦争のために大勢が亡くなり、多くの人が国外に避難せざるを得なくなりました。今は一部の地域を除いて戦争は、ほぼ終わっています。しかし経済状況が厳しくて物価も高く、生活していける基盤がありません。イラクやレバノンとの国境も未だ閉ざされており、ビジネスを開始するのは困難です。

 

(イスタンブールのイマモール新市長についてどう思いますか)

イスタンブールの市長は国家の法律・決定事項の制約を受けるので、人が変わってもあまり変化はないと思います。

 

(トルコ以外の国、例えばサウジなどに移住したいと考えたことはありますか)

サウジは、シリア人に対する締め付けを強めています。トルコはシリア人を300万人も受け入れてくれましたが、同じアラブの国であるサウジは違います。サウジに限ったことではありませんが。

 

 

せっかくの機会なので、アサド政権やロシア、イランについてどう思うか、反体制派とクルド人勢力の関係をどう見ているか等、もう少し突っ込んだことを聞こうかとも思ったが、その場の和やかな雰囲気が壊れそうな気もしたし、ジャーナリストでもないのに初対面でそういう政治的な話をするのも気が引けて、言い出せないままに終わった。どうも私は気が弱いというか、詰めが甘いんだよな・・・

 

 

店を出てから周辺を少し歩いてみた。シリア人のお店が集中しているところはごく限られた区域で、その周りは普通のトルコの街という感じだった。(ファーティフモスクの辺りまで行けば、もっと色々お店があったのかもしれないと後で思った)ファーティフ地区には宗教熱心なムスリムが多いので、イスタンブールの他地域に比べて、ヒジャーブで髪を覆った女性の姿が目立った。

 

 

「私ほど君を愛せる人間は誰もいない」と落書きされている。そんなこと壁に書かれても。

 

 

この辺りも猫が多かった。

 

 

うちの近所の駐車場にいる子にそっくりの猜疑心の強そうな顔。ドッペルゲンガーか。

 

 

 

その辺をくるりと一回りしてからさっきの店の辺りに戻り、シリア菓子店の1つで土産用のバクラワ詰め合わせを買った。

 

 

高級だという「ヌレッティン」は素通り

 

 

ヌレッティンほどではないが、十分美味しいという「スルタン」に入る。だって予算があまりないんですもの。スルタン菓子店のフェイスブックはこちら

 

 

アラブ菓子界の横綱(?)「クナーファ」様。若い男性の2人連れがイートインコーナーでこれを嬉しそうに食べていた。

クナーファの本場と言われるパレスチナ西岸地区ナブルスのクナーファ情報はこちら

 

 

シリア人の菓子職人がマスクや手袋を着用して作業していた。コロニャの時代を先取りか。

 

 

数種類のバクラワを合計1㎏分買って、250gずつ箱に詰めてもらった。137リラ(現在のレートで約2140円)。賞味期限は1週間から10日くらいで、保存状態によるとのことだった。お土産として渡したイタリア在住の友人たち(日本人と中国人)には非常に好評だった。

 

詰めてもらうのを待っている間、職人の1人のおっちゃんと少しお喋りした。初対面のアラブ人男性と話すといつも聞かれる類のことを案の定質問される。

お「どこでアラビア語を勉強したの?」

み「ダマスカスです」

お「結婚してるのか?」

み「してません」

お「なぜ結婚しないんだ?」

み「結婚は女性の自由の墓場だからです」

(別にそういう理由で結婚していないわけではないのだが、こう言うとウケることが多いので、大体いつもこう答えている。実際、話を横で聞いていた従業員の若者が大受けしていた)

お「日本にはムスリムはどのくらいいる?日本の人口は?出生率は?」

み「ムスリムは少ないです。人口は1億2千万くらいだったかな・・・出生率はものすごく低いですよ」

(これもよく質問されるが、覚えてないので、いつもてきと~に答える)

 

おっちゃんの家庭は奥さんと子供5人の7人家族らしい。彼も「トルコは物価が高くて大変だよ。状況はだんだん厳しくなっている」と嘆いていた。シリアに帰りたいかと聞くと、それまでとは違う真剣な面持ちになって、「シリアには今もまだ戦争があるから帰れないよ。過去には化学兵器攻撃などもあって、大勢が亡くなった。でも、帰れる状況になれば、もちろん帰りたいよ」と話していた。

 

お菓子の次はファラーフェルサンドを買って、公園で食べることにした。

 

 

さっき勧められた店へ行くと、この状態だった。行列のできる人気店のようだ。

 

 

レジで先に払って番号札兼レシートを受け取り、順番を待つ。飲み物は外の冷蔵庫から自分で取って一緒に払うシステムだ。

ホンムス25gとアイランも買った。サンドイッチと合わせて12リラ(200円弱)。

 

 

ファラーフェルサンドはトマト・レタス・玉ねぎとピクルス入りで、シリア風の巨大なサイズ。ホンムスはタヒーナたっぷりの濃厚な味だった。どちらも懐かしいシリアの味だ。トルコにも「フムス」はあるが、味が少し違う。

 

 

公園のベンチを占拠するお猫様。足がはみ出てますぜ。

 

 

「昼寝のジャマすんなよ」 はい、すんません。

 

 

食後は、いつものようにホテルに戻って昼寝した。

 

 

(続く)

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2 コメント

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リトルダマスカスのおしゃべりが素晴らしい! (Zhen)
2020-06-25 21:53:22
Michiさん
動物との食卓、日本では衛生上の問題で、自宅はともかくホテルやレストランでは、基本NGですよね。
特に鳥類は言語道断ってことでしょうが、それは、それで味があると思います。
悪い意味でなく、そのようないい加減さも好きです。

リトルダマスカスは、いわゆるシリア難民によって作られいるのでしょうが、日本人は、「やむなく国を離れる」って経験が歴史的にもない。幸せなことである反面、そのような境遇の人を社会として理解できないのかな、と思います。難民に対して、冷たいと言うか、包容力がないというか。ワラビスタンにいて感じることです。

リトルダマスカスで、おっちゃんとお話しできるMichiさんが、羨ましいです。やはり言葉の壁は高いな、それとMichiさんのような美女の特権かな。何しろ僕のようなオヤジじゃ、胡散臭くて嫌がられるんじゃないかって。

まったくの蛇足、余計な話ですが、来週から在宅勤務がなくなります、ほんと、残念な会社です。国内出張が、解禁されたので、週2日は、出張なので、週5日オフィスに行く訳じゃないので、なぐさめみたいなものですかね。

Zhen
Zhenさんへ (michi)
2020-06-27 15:51:21
動物におすそ分けしながら食べるのは楽しいので、中東辺りに行ったら必ずやりますね~

難民に対する理解を深めるにはどうしたらいいのか…難しい問題だと思います~特にクルド人等の場合、文化の違いが大きすぎて。

言葉の壁は大きいですね。私も知っている言語で、わかる範囲で話を聞いているだけです~(美女ってだれ?どこ?なに?)困難な状況にいる人々は、自分たちのことを知ってもらうために積極的に話してくれるので、「理解してあげたい、そしてそれを誰かに伝えなければならない」と思います。

テレワーク終了、ホントに残念ですね。またコロニャ以前の状態に戻るなんて、もったいない・・・お仕事ご苦労様です~

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