メガヒヨの生息日記

メガヒヨ(観劇、旅行、鳥好き)のささいな日常

ミュージカル『ネクスト・トゥ・ノーマル』(ネタバレ注意!!)

2013年09月23日 | 国内エンタメ

next to normal
2013年9月22日 シアタークリエにて
演出マイケル・グライフ 日本版リステージ ローラ・ピエトロピント

【キャスト】
ダイアナ(Wキャスト)  安蘭けい
ゲイブ(Wキャスト) 辛源
ダン 岸祐二
ナタリー 村川絵梨
ヘンリー 松下洸平
ドクター・マッデン 新納慎也

【あらすじ】
アメリカのとある一家の物語。
その朝も、一見どこにでも見られる平凡な光景が繰り広げられていた。
主婦ダイアナの奇行を除いて。

ダイアナは十数年前に精神の病と診断されて以来、薬による闘病を続けている。
家族は彼女を支えるが、16歳の娘であるナタリーは負担と感じることを隠しきれない。
確固たる治療法が定まっていない状況の下、ダイアナは投薬治療に身も心も翻弄され続ける。
そんな中、彼女は薬の摂取を止めてしまう。

そこで夫ダンはダイアナを、カリスマ医師と評されるドクター・マッデンのところに連れて行く。
当初はカウンセリングや催眠療法による治療が行われていたが、回復のきざしが見えたところでそれは破綻。
ドクターは新たな手段として、電気療法を提案する。
その副作用は少々の記憶が失われるということ。
果たしてダイアナとダンの決断は…!?

next to normalについてはB'wayで観劇するチャンスはなかったものの、2009年トニー賞のパフォーマンスで大変気になっていた。
精神病患者をヒロインに据えるという、挑戦的な題材は今までに観たことがなかったもの。
音楽も心の叫びを音符に乗せたかのような激しい響き。

日本で翻訳公演がされると聞いた際には、是非行かなくてはと思った。
国内でトップの実力を誇る安蘭けいさんとシルビア・グラブさんのダブルキャストな上、脇を固める俳優さんたちも文句なしの方々。
期待は膨らむ。

当日の席は最前列上手側。
舞台装置の2段目の奥が少々見切れるものの、安蘭さんの張りのある歌声をスピーカーを通さずに聴くことが出来た。
もちろん音楽は生演奏である。

以下ネタバレ警報!!

結論から言うと、メガヒヨにはあまり合わなかったみたい。
決して何かダメな部分があったというのでは無い。
安蘭さんを始めとするキャストの熱演は目を見張るものがあった。
ただ解釈が困難なシーンが多々あり、客席の自分はついていくのが必死な面も。
幕が下りる頃には疲れ果ててしまっていた。

もちろん部分を切り取れば、心を打つ場面もあった。
特にナタリーは可哀そう。16年間も母親からは二の次にされているのに、父親からは「お母さんを支えるんだ。」の一点張り。
だからってお薬に溺れるのはどうかと思うけれど、まぁやりきれないよね。
そんな彼女が「ノーマルな生活は求めない。あまりにも遠いから。ノーマルの隣位がいいよね。」と、思春期の少女にしては達観しすぎたセリフを口にしたときは、じーんときた。

ダイアナに関しては、ゲイブの死因を思い出したときの張り裂けんばかりの胸の痛みが安蘭さん渾身の演技で伝わって来た。
先天性の難病ならともかく、腸閉そくは早期に気がつけば死亡に至らなかったかも知れないものね。
取り返しのつかない己れの過失に囚われ、そのまま心が蝕まれている彼女。
でも第二子のナタリーのことを考えると、そこまでゲイブにこだわるのってどうなの!?と観客の自分は思ってしまう。
精神の病というのはそう単純なものではないのは分かるけどね。
それでもやっぱりしっくりこないので、ゲイブを巡るシーンではダイアナの気持ちにシンクロ出来ずに醒めた気持ちで観ていた。
劇場中の観客が涙をこぼす場面も、自分だけ気持ちがつるつると滑っているようだったな。

夫のダンについては。
この人が結局どうなのか一番の謎だった。
最後のシーンを見ていると、ゲイブを見て衝撃を受けたようにも取れるし、当初からゲイブのことは見えていたけれどあえて見ぬふりをしていて、この幻影が息子だとやっと認めたという風にも取れる。
メガヒヨの理解力不足かも知れないけれど、こういう白黒はっきりしないのは嫌だなぁ。
もう一度チケットを買って観に行けばいいだけかも知れないけれどね(^-^;

それとゲイブ。
彼については、いい加減に成仏しなさいと言いたい。
今後は父親の心の中で生きていくのだろうか。
うーん。それにしても辛源くんの母性本能くすぐり属性を見ていると、ダイアナがこの幻に取りつかれちゃったのも分かるなぁ(笑)

あとはヘンリー。
彼はいい子だね。登場のときはキモかった(笑)けど。
それにしても、マリファナはかなり問題なのでは?
next to normalというタイトルがついた理由のひとつに、人は必ずしも完璧ではないということもあったのかもね。
彼を含むノーマルとされる人々のすぐ隣は、重症の精神疾患のダイアナが位置してるということで。
誰でもあちら側にすぐ行く可能性はありますよ、ということを含んでいたり。

最後にドクター・マッデン。
ダイアナの幻覚の彼はエラいことになっていた。さすがは新納さん。
この医師は自分の職務を粛々とこなしているのだけなのだろうけど、人の精神を扱うということはやっぱり重いね。
客席から観ていて改めて感じた。

こんな感じで多々感じる面はあった。
しかし自分の気持ちは、この作品に対して一歩引いた位置にある。

その判断基準には、ストーリーの展開や登場人物の心境変化は影響しない。
実はこのメガヒヨ、分かりにくい作品、観客の解釈に委ねる手法は苦手。
劇場作品には、何がどうでどうなのか、はっきり分かりやすく表現することを求めるのである。
このnext to normalは残念ながらそれには当てはまらなかった模様。
いや、単なる自分の理解力不足かも知れないけどね。

そんな訳で、傑作とされる脚本の流れにいまいち乗り切れずにいた二時間半。
あくまでこれはメガヒヨ個人の好みの問題であって、作品の優劣には一切関わりのない話。
現にミュージカル・ファン仲間の方々は何度でもリピートしたいって言ってるものね。

あ、最後にこのことは書いておかなきゃ。東宝がやらかした失態!!
宣伝チラシのあらすじで、ゲイブがすでに亡くなっていることを盛大にネタバレしくさりおった。
さすがに抗議が押し寄せたのか、その後書きなおしたようだけどね。
観客は何も知らなかったら目の前の辛源くんや小西くんがこの世の人ではないなんて!!って衝撃を受けるわけで、そういう娯楽性を作品から理不尽にもぎ取った東宝スタッフの罪は大変重いとしか言い様がない。
こんなことは二度と起こらないよう、気を引き締めてもらいたいものである。

本当。これさえ無ければ、メガヒヨの感想も少しは違っていたかも知れないからね。



2 コメント

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Unknown (sato)
2013-09-24 06:16:47
○については、いい加減に△△しなさい…爆笑!
やっぱりメガヒヨさんの感想は期待を裏切らない(拍手)

絶対に好みは別れる作品だと思います。
とても丁寧な感想、ありがとうございます。
気に入ったのでまた読みに来ると思います(笑)

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恐縮です (メガネヒヨコ)
2013-09-24 22:16:17
satoさん、こんばんは!

N2Nを一番のお気に入りミュージカルとされているsatoさんの前で、こんな感想をひけらかすのも恐縮ですが、読んで下さりありがとうございます。

確かに観客の感想は両極端に分かれそうですね。
でもショーの完成度はとても高かったですので、観に来た人全員の心に何かを残したことかと思います。
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