It's just me,myself and I

横浜育ち、米在住23年の女性のくだらない日記の中に、日米のギャップ、バークレーでの生き方、パイロットの毎日が見られる。

ボランティアとは会話をしない

2018-03-17 | Weblog



Rちゃんのお母さんが、私の状況を理解して、それでも来て欲しいというので、仕事が入らなければ午前7時に病院へ行く事になった。 前夜は仕事に呼ばれる順番が5番だったので「80%くらいの確率で来れると思います。」と言っていたのに、深夜過ぎには2番になってしまった。 絶対来れるとは言い切れないと、お母さんには言っていたものの、行けなかったら悪いなぁと思ってドキドキしてしまった。


そしたら2番のまま、その日は大丈夫そうだったので(仕事が入らなそうだったので)、青いボランティア用のベストを持って病院へ向かった。 ボランティアの中には1時間運転したり、電車に乗ったりして病院へ来る人たちがいる。 私は10分程度のドライブなので、大したことはないし、人様の役に立てて嬉しい。40分くらい運転しなければいけない立場だったら、他のボランティアを選んでいたと思う。

病院に到着した時は外がまだ暗くて、病棟も静かだった。 ナースステーションへ行って挨拶をした。「おはようございます。 ボランティアのOOです。 OOOO号室のRちゃんのお母さんの代わりに、付き添います。」すると、いつものピリピリした感じではなく、普通に対応してくれた。「先程、お母さんが付き添いについて聞いて来たわよ。」 あ、待ってるかな。 真っ暗な部屋に入る。 ドア側の患者さんはお父さんとお母さんが来ていた。 お父さんが暗闇でスマホをいじっている。 窓側のRちゃんの方へ進むと真っ暗で、お母さんがイヤフォンを耳に入れたまま背を向けて寝ていた。すごく疲れているだろうから起こしたくないけど、きっと今日はやることがたくさんあるから、私が来たなら知らせてほしいだろう。軽く腕を揺さぶる。 反応なし。 起こしたくないという気持ちが自分を止めるが、今度はふくらはぎを揺さぶってみる。 全然動かない。 するとタイミング良く看護師さんが入って来て、質問があるからと、お母さんを起こしてくれた。 看護師さんと話しながら私に気付いたお母さんは、「来てくれて本当にありがとう。 あなたが来れなかったら、今日は諦めるところだったわ。」と荷物をまとめ始めた。 紙に、電話番号や、病院のWIFIパスワード、iPadのパスワードを書いてくれた。


Rちゃんは前日に手術をしたので、痛み止めが点滴に入っていて、ぐっすりと寝ている感じだった。 もちろんどういう手術かは聞かない。普段は7時に目が覚めるとお母さんが言っていたので、「起きるかな〜。」と数分おきにRちゃんの顔を見た。 1時間に2回くらい、お医者さん、看護師さん、なんらかのスタッフがRちゃんの所に来る。 まだ病室が暗い時に4人くらい入ってきた。 手術をしたお医者さんとインターンの先生達かと思われる。暗闇にブルーのベストを着て座っている私に一瞬びっくりした感じで、「こんにちは、付き添いを頼まれたボランティアのOOです。」と挨拶をすると、目をそらして何も言わずにRちゃんの傷口を診はじめた。 はははは。 なんや、挨拶もできんのか医者は。スタッフの半分の人は特にお話をしてくれなかった。 まぁいいけど。 女医さんっぽい人は二人くらい、「あら〜、ありがとう。」と言ってくれた。 「医療に関心があるの?」と聞いてくれる人もいた。 医大を目指している人は病院でボランティアをしていると入学の時に有利なので、そういう人がボランティアをしていることが多いのだ。 それか子育てを終えたママ、企業から引退した人が多い。「いえ、ただのボランティアです。」私は答えた。


ボランティアコーディネーターのスタッフは、会話の中で私の職業を知って、そのあとは彼女達がコーディネーター仲間に嬉しそうに言いふらしてしまっているけれど、病棟の医療スタッフや患者さんの家族は何も知らないし、私はそれでいい。 航空と違う場所で働けるのが楽しいから、本職と混合したくない。


フレンドリーではなかった医師団が、さっきまで高い位置にあったRちゃんのベッドを低い位置に降ろしたまま去ってしまったので、Rちゃんにとって見慣れない私がすぐ横に座っていたらびっくりして怖いかなと思って、2メートルくらい窓側に移動してぐっすり眠るRちゃんを見守った。Rちゃんとは前日に病室と、ウサギを塗るクラスで話したくらい。


お医者さんや看護師さんが訪問して彼女の体を動かすたびにRちゃんは少しだけ起きる。 スタッフが去った後に、ゆっくりベッド側に行って、「Rちゃ〜ん。 ボランティアのOOだよ。 ママは少しだけ出てるけど、すぐ帰って来るからね。よく寝た? 本読む? テレビ見る? それともまだ眠かったら、目を閉じていいよ〜。」と静かにつぶやいてみた。 多分聞こえてたと思うけど、Rちゃんは目を閉じた。 私はちょっとだけ、知らない人だから恥ずかしくて目を閉じたのかなと思ったけど、手術後だし、痛み止めも入ってるから、こんなもんだろう。お母さんが残して行った連絡先の紙の裏側に、ちょっとした連絡日記のようなものを書いて、ナースステーションに寄って「帰りま〜す。」と伝えて病院を出た。

パイロットとして電話待ちでお給料をもらいながら、病院でボランティアまでしちゃって、すごく有効に時間を使うことが出来た。