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東京シティ・フィル第348定期(1月15日)

2022年01月16日 | コンサート
常任指揮者高関健の指揮、ソリストに戸澤采紀を迎えたウインターシーズン最初のコンサートだ。ほの暗いイングランドの海、灼熱のスペイン、そしてスコットランドの廃墟に題材を得たバラエティに富んだ三曲が並び、まさに「音の風景画」を見る思いだった。一曲目はブリテン作曲歌劇「ピーター・グライムス」から4つの海の間奏曲。最初からオケは絶好調で、作曲家の精緻なオーケストレーションを余すところなく表現し尽くした立派な演奏だった。続くラロ作曲スペイン交響曲でもオケは実に自信に満ちた輝かしい響きでよく鳴った。そしてそれに負けずに対峙する戸澤の超絶技巧は実に鮮やかだった。不安定なところが全くなく、顔色ひとつ変えない超然とした完璧な弾き振りには驚かされた。もうコンサートが終わってしまうのではなかろうかと思われる程の盛大な拍手に、アンコールはクライスラーの「レチタティーヴォとスケルツオ・カプリース」をケロリと弾きのけた。全く見事という他ない出来栄えだ。しかし何故か音楽的には満たされないものが残ったのは私だけだろうか。聞きながら理由を考え続けていたのだが、結局私がスペイン交響曲に求めるエキゾチズムやラテンの色彩というものを十分に感じることができなかったのではないかという結論を得るに至った。それほどに彼女の醸し出す音楽は、蒸留水のごとく純度が高かったということだったのではないか。そして休憩を挟んで最後に置かれたのはメンデルスゾーンの交響曲第3番イ短調作品56「スコットランド」だ。これは堅固で堂々たる、ある意味メンデルスゾーンのセンチメンタルな印象からはちょっと遠い、しかしながら大層立派な演奏だった。ここではシティ・フィルの卓越した木管群やホルン群が大活躍して、堅固な中にも魅力的なニュアンスを添えていた。揚々たる勇壮な主題が高らかに奏されるフィナーレには胸が高鳴った。これで、このオケの定期では久しく聞かれなかったフライング拍手がなかったなら、更に感動は大きくなったことだろう。

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