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第43回草津夏期国際音楽アカデミー&フェスティバル (8月26日〜30日)

2023年08月31日 | コンサート
毎年恒例になっている晩夏の草津にやってきた。もちろんフェスティバルの一環として草津音楽の森コンサートホールで開催されるコンサートを聴くためである。今年はその終盤の4つの音楽会とアカデミーの優秀な生徒達によるスチューデント・コンサートを楽しく聴いた。まず26日はドヴォルジャークの弦楽六重奏イ長調、スラブ舞曲作品46-1&8と作品72-2(作曲者による四手連弾版)、ブラームスの弦楽六重奏曲第一番というプログラムだ。ここではショロモ・ミンツ(初参加)、高木和弘、般若佳子、吉田有希子、タマーシュ・ヴァルガ、大友肇らの名手によるブラームスの集中力の高い緊密なアンサンブルの演奏がとても素晴らしかった。ブルーノ・カニーノと岡田博美による迫力満点の連弾が二つの弦楽六重奏曲の間にアクセントを添えた。27日は「室内楽の神髄」と題されたプログラムで、ルードルフ太公のクラリネットとチェロの為の「ラルゲット」、その師匠ベートーヴェンのピアノ三重奏曲「太公」、スメタナの「モルダウ」(カーン=アルヴェルトによるピアノ版)とピアノ三重奏曲ト短調というプログラム。ルードルフ太公はベートーヴェンのパトロンでピアノ三重奏曲等多くの曲を献呈した相手としても有名だが、彼は音楽も嗜みベートーヴェンを師としたと歴史書では知っていたものの、その作品を生で聴ける機会は貴重だった。しかしこの日の圧巻はやはり悲壮な雰囲気に貫かれたスメタナのピアノ三重奏曲であったろう。それはクリストファー・ヒンターフーバー、カリーン・アダム、タマーシュ・ヴァルガらウイーン勢による渾身の演奏だった。その前にヒンターフーバーは超絶技巧の極みと言ってよいであろうピアノ版「モルダウ」を鮮やかに弾き切った。28日はとても多彩なプログラムで、カリーン・アダムスと般若佳子によるマルティヌーのヴァイオリンとヴィオラのための二重奏曲第二番、データー・フルーリー、カリーン・アダムスと高橋アキによるフルートとバイオリンのためのソナタ、高橋アキのピアノ独奏による一柳慧の「限りなき湧水」+「雲の表情I」と武満徹(西村朗編曲)の「さようなら」、若木麻有、大木雅人、四戸世紀、高子由佳、水谷上総、酒井由佳、蛯澤亮、上間善之、村中美菜ら管楽器9名によるF.クロンマーのパルティータ変ロ長調作品78、そして最後はそれにチェロの大友肇とコントラバスの須崎昌枝を加えたドヴォルジャークの管楽セレナードニ長調作品44だった。この日はまずその交響曲群とは趣の異なるマルティヌーの多彩な作風が興味を引いた。そして万感の想いで弾かれた武満に涙し、ボヘミアの郷愁を漂わせつつ最後に生き生きとしたマーチが戻ってくるドヴォルザークのセレナーデに心が弾んだ。今回参加した本公演最後の29日は「パノハ弦楽四重奏団へ感謝を込めて」と題されたオール・ドヴォルジャーク・プログラムだった。1998年以来毎年この音楽祭にハウス・カルテットとして参加してくれていたパノハはメンバー一人の引退による解散のためにもう草津に来ない。「感謝」はそうした彼らの長年の貢献への感謝なのだ。最初にカリーン・アダムと高木和弘と吉田由紀子による「ミニアチュア」作品75、続いてカリーン・アダム、泉里沙、吉田由紀子、タマーシュ・ヴァルガという珍しい組み合わせによる弦楽四重奏曲「アメリカ」作品96、そして最後はピアノのヒンターフーバーにクワルテット・エクセルシオが加わって弦楽五重奏曲イ長調作品81。「アメリカ」はアダムが弦楽四重奏は初めてということでスリリングだった。一方ピアノ五重奏の方は白熱しながらも極めて高い完成度が示された名演だった。今回の最後は30日の朝から開始されたアカデミーの各クラスから選ばれた優秀生によるスチューデント・コンサートだった。今回は8名が成果を発表したが、パガニーニのヴァイオリン協奏曲第2番(終楽章)を弾いた星野花(ミンツ・クラス)とシューマンの交響的練習曲(主題〜X)を弾いた今井梨緒(ヒンターフーバー・クラス)とサンサーンスのチェロ協奏曲第1番(1楽章)を弾いた上野玲(ヴァルガ・クラス)の3名に手納基金奨励賞が与えられた。個人的には沼津冬秋(インデアミューレ・クラス)によるモーツアルトのオーボエ協奏曲ハ長調(第1楽章)も天晴れと感じた。とは言え全員が良く弾いていた。この中から将来コンサートホールで出会える音楽家が出て来てくれることを楽しみに待ちたいものだ。

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