今年で18回目を迎える大晦日昼1時から夜8時半までのマラソン演奏会である。隣の大ホールでは広上淳一指揮の交響曲全曲演奏が挙行されているのだから、この日は上野の東京文化会館はベートーヴェン・ファンで埋め尽くされるわけだ。演奏メンバーに一昨年から新たにクァルテット・インテグラが加わった。古典四重奏団は1986年、クァルテット・エクセルシオは1994年、インテグラが2015年の結成ということなので、日本を代表する重鎮、ベテラン、新進気鋭の常設アンサンブルがベートーヴェンの中期・後期の弦楽四重奏曲で技を競うのだから興味は尽きない。今年は作品59のラズモフスキーの3曲「エクセルシオ」が担当した。彗星の如く登場して話題になったこのアンサンブルもいつしかベテランの域に達し、しなやかさは何時もながらだが、ラズモの3番では強く後期を感じさせるような仕上がりになっていることにアンサンブルの円熟を感じた。続いて「古典」は作品127と130(大フーガ)の2曲。ストイックを脱して融通無碍な境地に達しようとしている印象を強く持った。最後は新鋭「インテグラ」による作品131、132、135の3曲。晩年のベートーヴェンの諧謔的な筆致を材料に遊び尽くしたような極めて個性的な演奏。これは決して否定的な意味ではなく、若く新鮮な感性で作曲者の本質的な部分を引き出したということだ。この3曲がこんなに文句なく楽しい曲だったとは、これは大発見だ。これからがとても楽しみな若者達である。終了後は会場は大歓声に包まれ、心満たされて上野の森をあとにした。
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