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東響第717回定期(12月16日)

2023年12月18日 | 東響
桂冠指揮者ユーベル・スダーンが久しぶりに登場し、ドイツの編曲物を集めた興味深いプログラムだ。まず最初はぐグスタフ・マーラーが編曲を施したシューマン作曲交響曲第1番変ロ長調作品38「春」である。稚拙と云われているシューマンのオーケストレーションの弱い部分に手を入れた基本的に原曲に忠実な編曲なのだが、この曲のトレードマークでもある春を告げるかのような冒頭のファンファーレは聞き慣れたメロディではない。なんでもこれがシューマンが最初に構想したメロディだそうだが、いささか違和感があると同時にそこに華やいだ春の喜びは感じられない。まあそれはともかく全体の印象としてマーラーの筆を尽くして手入れのために大層密度の濃い響きになっている。そしてそれをスダーンは輪をかけて緻密に、そして力感豊かに響かせるので、ロマンティックというよりも、黒光りする鋼のような隙のない堅固な、とても立派なシューマンが出来上がった。続いてはアーノルド・シェーンベルクが大オーケストラ用に編曲したブラームスのピアノ四重奏曲第1番ト短調作品25だ。編曲の基本路線は弦楽部分は弦楽、ピアノ部分が管楽器ということなのだが、決して其れだけに留まらないアイデア満載の華やかな曲に仕上がっている。圧巻は作曲家自身が「ジプシー風ロンド」と名付けた終楽章で、様々な打楽器が醸し出すジプシー風音楽の熱狂はシェーンベルクの独壇場だ。スダーンはそうした曲に真正面から真面目に対峙し、まるで聳え立つ大伽藍のような立派な音楽に仕上げた。

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