山奥の鍛治工房

趣味でやっている鍛冶作業の記録

今回は画像なし

2008-09-28 21:42:56 | Weblog
土曜日。
安芸太田町加計にある町ぐるみ博物館の一つであり、
現役の鍛冶屋を訪ねてみた。
工房は町のメインストリートに面し、中は昔ながらの作り。
火床は2つあり、そのうち一つは現役。
訪ねたとき、いらっしゃったのは近所の建築屋さん。
特徴的なのは、一基のモーターで複数の機械を作動させていること。
伝達には平ベルトで、駆動しておるのはスプリングハンマーと手作りグラインダー、回転水砥石および
ボール盤である。
 駆動モーターは特別にしつらえられた木製のフレームの上部にあって、作動時はその振動で全体が揺れ
ちと見学しておる自分にとっては恐ろしかった。
 当工房の鍛冶職人さんとお話をちょっとばかりさせていただいた。
 もうこの仕事をしておる人も少なくなったこと。
 年なのでいつお迎えがくるやらわからん。
 そんなことを仰ってました。
 鍛接剤のことも話させていただきました。
 ピンク色をしているのが特徴の碇印の鍛接剤。
 これを使っていらっしゃったので、驚きました。
 どこ探しても見つからん一品ですから。
 聞くところによれば、昨年購入したと言うことでした。
 ということは、まだ製造されているということになります。
 見学させていただいた工房では、燃料は木炭。
 火床のほうも昔ながらの直吹き炉。しかし底は10センチ
の深さであまり深くはないように見えました。
 スプリングハンマーも寺澤鉄工所あるいは福井鉄工所製ではなくて
土佐坂本商会となっておりました。
 基本的構造は一緒ですが、前の弾み車にブレーキシューとそれを押さえる
鉄バンドが特徴。
 見学時にされていたのは、石工さんが使うハンマーの製作と削岩機のビット
の先焼き、つるはしの手直しなど。
 技術的な話では、
 メッキものは割れる(加熱すると亜鉛または錫の影響が出る)
 コークスは火力が強すぎる。
 鍛接剤は低い温度でもくっつく。
ということ。
 体が第一資本であることもあり、体は丈夫かな、って聞かれてしまい
デスクワークばかりで弱ってます、と答えました。
 大変貴重なことばかり。
 でも好きですね。
 


野鍛冶の技を見た

2008-09-15 20:10:10 | Weblog
9月14日(日)午後2時30分~3時30分頃
松永家最大の刃物。それは押し切り。
主に藁を切る農具である。
取り扱いを間違えば、指が飛ぶ恐ろしい指ギロチンに
なる。
 その刃を、親父様より仰せつかり、欠けたる部分以外を
研いだ。
 ほんまは全体を研がんとならんだが。手抜きではありませぬ。
 画像が増してワヤクタになってしまいましたが、件のブツ。
 これ全て実家の近所にあった野鍛冶(昭和40年代に廃業)
が製作したもの。
 柄の口金すらも鍛接でやっておるみたい。
 特筆すべきは、藁を刃に押し当てるアーム部。
 一部鍛接剥がれがあるけど、とにかくすごい。
 ピン穴の先を、タガネでセギってつまみ出し、それを安全ガード
にしてある薄い帯鉄に鍛接でくっつけてあるところ。
ハンドル部分も2枚の厚板材と一緒に鍛接してまとめあげてある。
2枚合わせた中間にスペーサーと思われる鉄片がありこれも鍛接。
 それにしてもよく作りんちゃった、とその力量に感心してしまうばかり。
 中華包丁と餅きり包丁を足して2で割ったような刃は、恐ろしい。
分解するとそれはギロチンみたい。
 特徴的なのは、刃が緩やかにカーブを描いておること。
 これは日本刀の刃とよく似ているし、切り込みは抜群。
 扱い間違うと、指ギロチンになるのはこのため。
そうでなくても手ひどい怪我を負う。
 長い間手入れもせんと放置していたので、目も当てられんほど
赤錆が浮いていた。
 研ぐとベンガラを摺ったようで、砥石面は赤茶色に染まり、
粘ってしまい何回も洗わねばならなかった。
 また、錆もかなり深く、研いでもぽつんぽつんと黒い斑点として
残り、それが細かな刃こぼれの遠い原因になっておるようにも
みられた。
 刃が欠けておるのは、祖父が生前誤って硬い木の枝を草と一緒に
切ったため。
 めくれた部分を観察すると、どうも割り込みのようだ。
 しかしながら鋼材の種類が不明。
 地金材も不明。
 作られてからざっと5~60年は経っているであろう、と思われる
代物である。
 しかしながら、それを叩き延べて広げた職人さんの技には
ただ感心するよりほかにない。
 刃の出方は、乱れ調子で漫画に出てくる包丁の刃にそっくり。


砥石2

2008-09-07 18:32:14 | Weblog
実家にある砥石の実画像である。
番号順に
1。荒砥石(大村砥石)と中砥石(人工砥石)
2。青砥石(産地不明)
3。面修正した大村砥石(両端のみを削っただけで、あとは少しずつ使いながら
直してゆくことにした)
4。凍結して割れた天然の中砥石(備水)
5。凍結して割れた天然の中砥石の側面(備水)

 どれも共通していること。
 真ん中で刃物研いでおるがゆえに凹んでおる。(人工の中砥石を除いて)
1面ならまだしも4面とも(爆)
 これでは途中でまっ二つに折れてしまうのは道理。
 要は使い方が下手。

 いずれをも面修正しようかと考えたが、とどめを刺しそうな気がしたので
大村砥石だけを面修正。
 ぼこぼこになりました(汗)
 砥石の画像に何やら赤茶けた部分があるけど、アレがハリと呼ばれる部分。
 青砥にも茶色っぽい筋があるけど、これは石英(チャート層)がハリとなって
邪魔をしている部分。
 凍結して割れた備水であるけど、結構きれいに長手方向に割れとります。
 片割れを探したけど、いつのまにか消えてた。
 
土曜日の早朝に更新した方法で包丁を実際に研いで、メンテナンス。
ステンレス系はどうも天然砥石には不向きのようだ。
変に引っかかってしまう。
 切れ味が戻ったところで終了。

 鍛冶作業。
 鍛接うまく行かず。
 鍛接剤に大量の汗をたらし込んだ結果と思われ、
くっつかぬ。
 ヤケクソになって、熔解ぎりぎりに温度を上げるも
温度が上がらん。
 炉にも問題が出て来たか?
 
 鍛冶屋の女神様より、ちと作業を休め、って言われた気がする
作業でありました。


 

研ぎをかけるとき

2008-09-06 03:39:54 | Weblog
よく目にする砥石であるが、原型は立派な直方体である。
しかしながら、真ん中ばかりで研いでしまいがち。
面直しをせぬと、画像のごとし。
これまこと研ぎにくい。
全体を使うて研げと、物の本には書いてあるがどうも
それは無理。だって個人差あろうし、結局は真ん中で研いで
凹むのは道理。
そこで、鍛冶研ぎ。(岡山時代に押し掛けで刀鍛冶に出入りしてた頃教わった方法)
こんな道具がある。
「へ」の字になった木製の砥石押さえなる道具をもって
砥石を押さえ、研ぐ。(作るのがちょいと難があるけども)
 砥石にもちょいと細工(もったいないけどな)
 端をちょいと削ってテーパー加工。
 それをやらんでも、端っこからちょくちょくと研いでいくのがベスト。
真ん中からまっ二つに折れず、天寿ほどは全うする。
 昔の人の知恵を拝借しただけの話。
 これでやってみたところ、意外とよかった。ただしストロークが短いので
何かと気ぜわしくガシガシと研ぐことにはなるが、だんだん長くなってゆく。
 ということで、再現してみたい方法ではある。
 人工砥石と天然砥石と比較する上でも試してみたい。
 それ以前に、実家の砥石の面を直さんことにはどうもならんけども(汗)