山奥の鍛治工房

趣味でやっている鍛冶作業の記録

質量効果

2006-06-30 21:35:59 | Weblog
刃物にしても何にしても、鉄鋼材で熱処理を施して使うものの宿命ともいえる
ような現象がある。
 どんな現象であるかというと、作る製品の大きさによって異なるが、余りにも
大きいと焼きが入らない、という事態が起こる。
 それを質量効果と呼ぶ。
 具体的にどのようなものかというと、例を挙げてみる。
 今現在使用している鍛造用のハンマーの打撃面が割れてしまい、今年の1月に
修理をした。
 破損した部分を削って、元の大きさに火造り、焼き入れを施すとあら不思議。
オイル焼き入れにしたのだが、オイルが一瞬燃え上がって、その炎が鎮火したのを
見計らって引き上げると、また真っ赤に…。
 これが質量効果。
 どういうことかというと、質量が大きいと外の表面は冷やされても、中心は
高熱状態が続いてなかなか冷えないということ。もちろん水や油などの冷却能力、
使用される量にもよるけれども。
 例に挙げたハンマーの大きさであるが、重量は1KG。ハンマーの径は3~4
センチであった。使ったオイルは粉ミルク缶1杯である。
 結局のところ、オイルが少なかったことにほかならない。オイルそのものの
冷却能力も大きくはない。
 ならば、液体窒素で焼き入れやっちゃれー。
 これは間違い。気化した窒素が断熱材の働きをして焼きが入りません。
 下手をすると急激な気化で膨張して容器が破損してしまう恐れすらある。
 むしろ、液体窒素で焼き入れするとせば、焼き入れを施したものを常温に戻して
それから行うのが通常らしい。この方法をサブゼロ処理、深冷却法という。
 
 

焼切りタガネ製作

2006-06-18 18:12:08 | Weblog













本日、市販の平タガネを用いて、焼き切りタガネを製作。
画像1は元のタガネ。19ミリの長さは300ミリ。
画像2はそれを刃先から100ミリのところを金ノコで切断した。
画像3は切断した物の切断面をグラインダーで面取り整形し、竹を柄にして番線でくくった。
以上。
簡単でしょ。
残りは予備タガネの素材に回すつもりでいる。

タガネの刃角について

2006-06-14 21:56:34 | Weblog










鍛冶七つ道具の一つ。タガネについて述べる。
鍛冶に使うタガネは、生切りタガネと焼切りタガネ、それに金敷に刺して使うイザリタガネとが
あるけども、それぞれの刃角は違う。
相変わらずヘタレな模式図で恐縮だが、コンクリートをはつる、ハツリハンマーを生切り、あるいは
焼切りタガネとして代用した場合、刃角が大きいため、溝も浅く広い。たちまちは、薄い生鉄をもって
鋼を割り込もうにも、こんな状態ではとてもではないが非常に難しい。割れるのは割れるが、がたがたの
ぼろぼろになってしまう。
 一方、焼き切りタガネは刃角が小さいので、生鉄に鋼を割り込むのには適している。溝は深く狭い。
割り込み口を鋼の厚みに広げてやらねばならないが、ぼろぼろにはならない。
刃の角が取れた状態で描いているが、本来は角がある。
 通常見かける、鉄板を切る平タガネを改造して作る事も可能。
その方法については、後日掲載します。

最初の火床はこんな感じでした。

2006-06-11 20:30:35 | Weblog












持ちもん整理しよったら、今現在使うてる火床の作り立てほやほやの画像が
出てきたので掲載します。
材料は、2トンダンプの鉄輪ホイール。頑丈なうえ重たいのが欠点。
当初はこんな感じでありました。
真ん中に鉄管が煙突のごとく立ってますが、これ送風管。その上に乗っておるのが
初代のロストルです。
 風量調整ダンパーは水道用のものを使って、脚は鉄パイプ。
煙突状態の送風管は、現在はもとより半分の高さにしております。
もう少し太いパイプにすれば良かった、と後悔しきりです。
その周囲には山粘土。のちに耐火煉瓦を組んだので総重量は60キロ近くはあります。
重たい事この上ない。
 参考までに。

羽口の鉄管を保護するには

2006-06-10 11:56:10 | Weblog


















鍛冶作業するにあたって、昔ながらの火壷方式の炉および卸鉄専用炉の羽口(はぐち)の形状について。
木炭といえどもコークスよりは火力は弱い。されども羽口(はぐち)付近は高温になり最低でも1300度
内外には達すると思われる。
 鉄管を用いて羽口にすると、肉厚のあるものはまだしも薄いとたちまち融けてしまってどうにもならない。
そのために、粘土で作ってやるとよい。鉄管よりは耐火性があるし、鉄管が融けるよりも先に犠牲になってくれる。
材質は、焼きもん作る粘土で、そう焼き締まらない童仙坊(どうせんぼう)か白鍋土にコークス粉あるいは焼け土を混ぜて
作り、素焼きにする。
 図の寸法はかなりでたらめなので参考にもならないが、使用される鉄管の径等を考慮してそのつど大きさを決めて製作
するとよいと思います。なお、粘土は焼けると熱収縮でかなり小さくなります。鉄管にはまらない場合も出てきます。
鉄管との接合は粘土で合わせて下さい。

てこずってます

2006-06-04 20:16:04 | Weblog
あずって、あずりあげてこの状態。
救いは、ぺたりぺたりと白熱して火花
散り上げるほどの温度に達しなくても
くっ付いてくれた事。
でも、ひび割れは健在。

炭切りレポート1
オガ炭編
縦割りは難しいけども、横切りはポンポンポーンと
軽く切れました。

*注『あずる』 手こずる、を意味する。広島、島根西部の方言。

そして、わしは考えた

2006-06-02 22:47:38 | Weblog
この間は、燃料について述べた。
今回は、その燃料に風を送ってやらねば温度は上がらない。
送風装置。いわゆるフイゴ、ブロアーと呼ばれるもの。
七輪で最初に趣味鍛冶をやったときのものは、ウチワ1本でばたばたと煽いで、または
火吹き竹でもって吹いて火力を上げていた。最も原始的な、体力一本勝負的な送風である。
箱フイゴについては、これはずっと後のこと。
もちろん製作に挑んだが、実物は見たものの設計図はないし、寸法精度は最悪で結局挫折。
次に目をつけたのは、ドライヤー。
これは便利だ。風量の調整はできぬが趣味鍛冶にはこれで事足りる。ただ、電源がないと
意味はない。
 ホームセンターで売られているブロアーだが、たちまち風量と勢いはいいのだけれども、
壊れやすい。ベアリングが熱変形して軸が傾き動かんようになってしまった。
 さて困った。本式の鍛冶専用のブロアを買う金がない。(それは半年後に解消して購入。現在4年目) 
 どうしようか…。
 そこで新たに目をつけたのは、農薬を散布するミスト機と呼ばれる農機具である。
 粉末の農薬を広範囲にばらまくために、2ストエンジン駆動のブロアが搭載されている。
 風量もあるし、スロットルを調整すればエンジンの回転が変えられるのでなかなかのもの。
 それっ・・・中古の薬剤タンクが壊れて、リペア品もない処分される直前のポンコツミスト機を入手。
 で、ここでコケた…。
 2ストエンジンであるため、作動時の騒音と振動と排気ガスはものすごい。
 元々背負って使うものだけに、台座をこさえて動かんように固定してやる必要も出て来たし、なによりも
このご時世である。燃料がバカにならないのだ。それも25:1あるいは50:1という混合ガソリンが
必要になってくる。 
 ただ、唯一の救いが電源なしの、ほんま河原のドテッパチ、砂浜などで使えるという点である。
 送風管も100ミリ径になってしまうが、それは塩ビの水道管と継ぎ手で解決できる。火床の鉄管と
結ぶ時は、壊れたチャリンコのタイヤチューブで結べばよい。
 うーん。野外でトッテンカーンと打ちたいけれども、電源がないから送風機が使えん、という場合には
有効に思えるのだが、いかがなものだろうか?