チキチキ読書日記

無駄に読み散らかした本の履歴です。

海辺のカフカ 下 村上春樹 新潮文庫

2005年10月20日 12時56分46秒 | 文学・小説
上から続く

本書はこれまでの村上作品の王道を行くような傑作である。
いたるところにこれまでの作品の断片のようなものを感じる。
夏、海、少年、少女、記憶、森、夢、過去、失われてしまったもの……。
そして甘美ですらある死の風景。
これらを陳腐な言葉で表現するならノスタルジーであろう。
ノスタルジーは『世界の中心で愛をさけぶ』でその効果の大きさが改めて浮き彫りになった。
失ったもの、戻らない時間への郷愁はいつでも人を切なくさせる。
本書のラストはまさにノスタルジックな表現で満ちている。
それぞれの別れと過去との決別。
しかし主人公は15歳。その後に待っているのは未知なる未来。

海辺のカフカ 上 村上春樹 新潮文庫

2005年10月20日 12時38分58秒 | 文学・小説
久しぶりの村上春樹。
しかし村上春樹の文学の感想あるいは書評などを書くのはひどく難しい。
去年、芸大の卒業設計課題で村上春樹の文学館を計画したが、おそろしく難しかった。結果は破綻したものになってしまったが…。また再度挑戦してみたい。
本書は少年が主人公で、しかも旅をして成長していくというようなあらすじをちらっと聞いていたので、ヘルマン・ヘッセの一連の作品のような、いわゆるビルドゥングスロマンを創造していたのだが違った。
物語は少年の章と、もう一人(一組)の登場人物ナカタさんとホシノ青年の章が交互に展開する。
この辺りは『世界の終わりとハードボイルド・ワンダーランド』を想起させるが、どうやら本柵は『世界の……』の続編として計画されたものらしい。
この上巻では少年とナカタさんは交わることがなくパラレルに話は展開していく。
少年はやがて何かに導かれるまま四国は高松を目指す。
それからのち舞台はほとんど高松である。
村上春樹の小説に、僕のふるさとである高松という地名が出てくることに違和感を感じたが、高松の中身はうまく誤魔化されている。
以下 下へ続く