チキチキ読書日記

無駄に読み散らかした本の履歴です。

日本社会の歴史 上 網野善彦 岩波新書

2005年10月13日 00時02分06秒 | 歴史
少し前に惜しくも亡くなられた歴史家、網野善彦氏による日本通史。従来のような支配階層を重点的に描く歴史とは異なり、女性や老人、障害者など一般的に弱者とされる人々にも光を当て、その時々に彼らがいかに扱われたのかについても言及が多い。
これまで単一民族、単一国家として二千年の歴史があるという漠然とした共通認識があるのだが、それを本書を通じて否定していく。
古代はまず、日本どころか国という概念すら希薄である。朝鮮半島との交流も思っていたよりも盛んで、ものすごい数の渡来人がわたってきている。
右よりを公言する論客が元気だし、なんとなく国全体が右傾化し、閉じたナショナリズムが加速している。それは朝鮮半島、中国の人々への差別「意識」となって現前する。
『網野史観』は一つのイデオロギーであるかもしれない。頭から鵜呑みにするのはよくないかもしれないが、国全体が分けも分からず右傾化している現在、改めて読んでもよい一冊であろう。