チキチキ読書日記

無駄に読み散らかした本の履歴です。

評論家入門―清貧でもいいから物書きになりたい人に 小谷野敦 平凡社新書

2005年01月30日 13時47分16秒 | 生き方・ハウツー・スキルアップ
著者は『もてない男』で恋愛至上主義の現代の状況に一石を投じて一躍有名になった人である。『もてない男』は以前読んだがイジワルな言い方をすると単なるもてない男のヒガミである。どうもこの人はヒガミ気質のようなものがあるらしい。本作は評論家になるためのハウツー本かと思って読んだのだがハウツーになっているのは「寝食を惜しんで読書しろとか」そういう誰でもわかりきっているような内容で、あとは有名な評論家の批評だとか、論争についてだとかの話題に終始している。タイトルを変更したほうがいい。『ダカーポ』でたまにやっている特集読むほうがよっぽど参考になる。それにしても文体って性格出るなあ。この人のネクラな性格が文体にありありと出てるよ。

腕時計一生もの 並木浩一 光文社新書

2005年01月26日 13時46分48秒 | サブカルチャー
以前NHKの特集でスイスの時計職人「時計師」の世界を特集した番組をみた。価格の上限を見たらキリがない腕時計の世界である。
ドキュメントの主人公はベテランの時計師と若手の天才時計師であった。二人とも年に一度開催されるバーゼルの時計見本市に出品するため新作を製作していた。その一部始終を放送していたのだが、気が付けば身を乗り出すようにして画面を見ていた。彼らが取り組んでいるのは「時計の歴史を200年早めた男」アブラアン・ルイ・ブレゲが考案した「トゥールビヨン」という機構を持たせた機械式時計である。この装置は機械式時計が人間の腕につけらる、それゆえに常にその姿勢が変動するという宿命に立ち向かうべく考案された技巧である。この姿勢値誤差とよばれる誤差を修正するために小さな歯車やバネを複雑に組み合わせてその装置はつくられる。
一つの部品を組むのに数時間をかける。手先の超不器用な僕などは失神しそうな世界である。
そうして作られた彼らの「芸術品」は時計市に出品され、6000万円近い値段がついていた。ドキュメントをずっと見ていたから、その時計にしては法外な値段もむしろ安く感じられたぐらいである。
僕の愛用の時計も一応「機械式」である。いわゆる自動巻きと呼ばれるもので、腕の振動で振り子を揺らし時計の原動力とする。予定では二十歳で『オメガスピードマスター』30歳で『ロレックス・エクスプローラー』を手にしているはずだったが、いまだに6000円の『セイコー5』である。
しかも二代目。なかなかいい時計です。

養生の実技 五木寛之 角川ONEテーマ文庫

2005年01月21日 14時10分12秒 | 生き方・ハウツー・スキルアップ
「強い心身(からだ)が折れるのだ」という帯のコピーを見て思わず買ってしまった。日々の72歳にして日々のほとんどを旅先で過ごしているという筆者はさぞかしタフなんだろうと常々うらやましく思っていた。しかし本当は腰痛、歯痛、偏頭痛など数え切れないほどのからだの不調とうまく付き合いながら多忙な日々を乗り切っていることがわかった。僕はビビリなのでからだの不調があるとすぐに医者に行く。行くとなんとなく安心するのである。もちろん医者の意見もきちんと聞き薬もきちんと飲む。しかし最近では余計な抗生物質などは出来るだけ飲まないようにしている。医者の言うことは守るべきであるが、それよりも五木の言うように「身体のメッセージ」に忠実にありたい。日々注意深くからだと付き合い、不調の前兆を読み取り自分自身で病の芽を早期に摘み取るのである。ここのところ目が痒く、鼻がむずむずする。ひょっとしてとうとう花粉症?

人間を幸福にする経済―豊かさの革命 奥田碩 PHP新書

2005年01月19日 01時02分34秒 | 政治経済
元トヨタ自動車の奥田氏の提言をまとめた本である。現在は日本経団連の会長として活躍されている。まず氏が訴える理念は「人間の顔をした市場経済」「多様な選択肢を持った経済社会」という二点である。以前評した本にも書いていたように市場経済はえてして市場原理主義へと変貌する。奥田氏もこれに懸念を持っている。・・・強者が勝者になり、弱者が敗者となる。それを市場のなりゆきにまかせておくと、勝者が一方的に偏って、ついには敗者が再起不能なダメージを被ることになる。そして所得や資産の格差が拡大し、社会が階層化し、その固定化がもたらされると。今の世の中はどうもwinner takes allを加速させようとしているようにしか思えない。自分もwinnerになるしかないのか。

蒼穹の昴(1) 浅田次郎  講談社文庫

2005年01月17日 16時18分28秒 | 文学・小説
この本を職場の上司に紹介されたのが確か今から四年位前。なかなか文庫にならないなあと思って気になっていた本である。ついに文庫化されたので早速買って読んでみた。時は清代の中国。西大后が権力の中枢に座り、列強の侵犯を受け始める時代である。幼い糞拾いの子春児と地方の豪族の放蕩次男坊文秀の二人が主人公である。二人とも名高い占い師に将来は国を動かす人間になると予言される。文秀の方は順当に科挙の試験を突破し、ついに主席で進士に合格する。一方何も運命が変わらない春児は自ら宦官になることを決意し、壮絶な行動にでる。
さてこれからの二人の運命はどうなっていくのやら。二巻が楽しみである。

日本の「構造改革」 -いま、どう変えるべきか- 佐和隆光 岩波新書

2005年01月13日 23時56分33秒 | 政治経済
この本で筆者が槍玉に挙げているのは「市場原理主義」である。アメリカの同時多発テロ後の応酬も「イスラム原理主義」VS「市場原理主義」との戦いであると述べている。これはハンチントンのベストセラー「文明の衝突」を批判して出た言葉である。佐和は文明が他の文明を排除するために武力を用いて「衝突」することはありえないと述べている。
今小泉内閣の下に日本が成し遂げようとしているのが市場原理主義である。市場主義は悪いことではないが市場原理主義は良くない。完全を目指そうとするあまりそこから零れ落ちる人やモノ・そして文化などあらゆるものを排除する。
透明性は重要だが徹底した市場主義は日本には合わない。しかしでは、どうすればこの長期停滞から脱出できるのか。
佐和の意見は以下である。
一つ目は技術革新を行うこと。二つ目は人的資源の劣化をくいとめること。三つ目は資本収益率の高い投資機会に向けて資本を誘導することである。
なるほどたしかにおっしゃるとおりである。
いささか抽象的ではあるが、国のグランドデザインとしてはこれでよいのではないか。
景気に少し薄日が差しそうな気配であるが、この先はどうなるのであろうか。

脳を活かす! 必勝の時間攻略法 吉田たかよし 講談社現代新書 003

2005年01月12日 12時15分26秒 | 生き方・ハウツー・スキルアップ
何がすごいって筆者のプロフがすごい。灘高校、東大卒。同大学院で生命工学を勉強し、国家公務員一種経済職試験に合格。NHKアナウンサーとして活躍後医師免許取得。衆議院議員公設第一秘書を経て現在は東大大学院に在学中。
・・・。なにもんやねん。
僕はいつも本をまず、タイトル、そして著者とそのプロフをみるのが習慣になっている。これはこの強烈なプロフィールに目が留まった。まあこれを売り物にしてるんだけどね。
しかし内容がくだらん。
広範な知識と経験を用いて、主に大脳生理学の分野からいかに効率よく勉強するかということを書いている。その理論の説得性を増すために東大やNHKのアナの経験などを散りばめている。著者は読者に媚びて自らを凡人と称しているがとんでもない。れっきとした特殊能力の持ち主だ。凡人がこの通りやっても(書かれていることは凡百のそのへんの時間管理法の本と一緒)NHKアナにも医者にもなれんだろう。
まあ世の中には奇特な人がいるもんだと思いました。

疑う力の習慣術 和田秀樹 PHP新書

2005年01月12日 11時47分10秒 | 生き方・ハウツー・スキルアップ
電車の行き帰りの間に読んだ本。すぐ読める本であるが結構読む価値はある。常識を疑うと新しい物事が見えてくるというよくある内容であるが和田のマジメな語り口で読むとなかなか説得力がある。先日法事で祖父母の家に行ってきた。そこで坊主の法話があった。死ぬことは不思議ではない、むしろ生きているほうが不思議なのであるというようなことを言われていた。つまり死が常態であり生こそが非常態なのである。だからこそ「生かされている」ことに感謝しましょうという意味である。これにはなるほどなあと納得した。
今年は常識を疑って新しいことにチャレンジする元年にしたい。
といっても疑うべき「常識」をしっかり身に着けておかないと全く無意味であることはいうまでも無い。

対論 脳と生命 養老孟司+森岡正博 ちくま学芸文庫

2005年01月12日 11時37分59秒 | 生物・遺伝子
以前ジャストシステムから出ていた本の文庫版である。ジャストシステムは結構良い本を出していたのだがもう出版はやってないのかな?やってないんだろうな。出版不況だし。そういえば福武文庫も無くなった。これまた装丁もかっこいいし、中身も良い本が多かっただけに残念。島田雅彦とか福武で読んだもんだ。
さて本書は生命論でおなじみの森岡正博ともはや一番売れてる文化人であろう、養老さんの対談である。内容はとりたてて目新しいものはなかったが森岡と養老の対談そのものが興味深かった。