レクサス

次男がレクサスを買った。
総額７００万近いらしい。

ローンの保証人になってくれと言われて断った。
ただの派遣社員では払える額ではない。

しかし、次男は買った。
不思議なローンだ。
５年ローンが終わっても車は自分のものにはならない？

５年たって、その車の価値を査定してまたローンを組むのだという。
僕達世代には理解できない・・・。

若者の車離れが加速しているし、運転免許を持たない若者も増えているらしい。
それを見込んだ新しいローンだろうか？

でも、考えたら、次男がもしも僕の後継者として獣医になっていたら・・・。
とてもレクサスなんて買えない・・・。

次男は高卒で今では実家に戻っている。
家賃も光熱費や通信費もタダだ。
独身貴族とはよく言ったものだ。

世の中、いまや、獣医と歯医者は食えない時代になった。
僕は３年前に３００万の外科機器と２５０万のレントゲン機器を買った。
これを買わなければ、とっくにレクサスは買えたが・・・。

これがなければ仕事が出来ないし、３年たった今でも元は取れていない・・・。
トホホだが、現実だ。

別にレクサスが欲しいわけではないが・・・。

今は、夫婦合わせても年収は４００万に届かない。
なんという現実か。

獣医になるには進学高校から難しい獣医の大学へ入らなければならない。
塾通いに始まり、家庭教師だの、私立では寄付金も必要だ。
入学金やら授業料やら生活費で６年間で２０００万近い出費だ。
これが出来なくて我が子供達は皆高卒で就職した。
とても元が取れる仕事ではない。

結局、仕事とはカネでなはく、いかに満足し充実した生活を送れるかだろう。
僕は牧場の獣医に憧れて北海道の獣医の大学に入学した。
国立だったので親は反対しなかったが、生活費は月々３万円の下宿代と生活費だ。
授業料は月々５０００円だった。

収入では外資系の社員になった兄や小学校の教師になった姉には遥かに及ばない・・・。

それでも後悔はしていない。
なんとか食べていけるから・・・。

レクサスもベンツもいらない。

僕は最初は牛の獣医として就職した。その後、転々としたが、今の犬猫の獣医に落ち着いた。
獣医の免許があるからなんとか生きていける。
しかし、つくづく思うのは、獣医というのはなんと潰しの効かない職業だろう。

以前の職場でも農学部出身の者達が出世するのに獣医はダメだった。

何年か前に「子供にならせたい職業」のベストテンに入っていた。
今では、「子供にならせたくない職業」のベストテンに入るだろう。
とにかく、儲からない・・・。

還暦になってやっと新車が買えたのだが、それも３００万以下の車だ。

世の中、一億円あっても満足しない人生もある・・・。

これでいいのだ。