MY LIFE,MY SPIRIT by Masato

今までの人生で感じたこと、自分の考え方を率直に語ります

開塾前の不安

2006-09-26 14:56:51 | Weblog
H社では開塾を希望する人は1週間のチューター養成研修を受ける。それに合格して正式にパソコン塾のチューターになり、開塾できる要件を満たす。その研修費用も格安だったので、人気が高くて順番待ちの状況だった。
当時はPCに詳しい人がまだ少なく、研修を受ける人の中には初心者同然の人もいた。中にはチューターになるつもりなどないのに、安い講習費用で学ぶのが目的の人もいた。また本来ならPCの教え方を研修するのがチューター養成研修の内容であるべきだが、実際はソフトの使い方を教えているような研修だった。

チューター養成研修の終了試験では、インストラクションのデモンストレーションをする。その終了試験を見学させてもらったところ、あまりのレベルの低さに愕然とした。当時僕はインストラクションの経験はなかったが、素人の僕が見ても合格点が付けられるのは2割もいない。ぼそぼそと小さな声で話す人、支離滅裂で何を言っているのかわからない人、8割はどう見ても講師としてのスキルに満たない人ばかりだった。これを見て本当にこの人達がチューターとしてやっていけるのか不安になった。

当時は今と違いPCのできる人は少なかったから、PCスキルが足りないのは仕方ない。しかしプロである以上、PCスキルがあるのは当たり前で、生徒のレベルに合わせてわかりやすく説明できなければならない。そうでなければすぐに生徒は辞めてしまうはずだ。
更に教えるスキルだけでなく、生徒募集から事務まですべて自分の責任でやらなければならない。独立してやっていくには、リスクを承知でやり抜く覚悟も必要だ。僕にはどう考えても彼らにその能力があるとは思えなかった。

開塾準備の人達との契約交渉もハードだった。当初派遣スタッフをチューターにする構想だったが、実際ふたを開けてみると自営業やフリーの人達が多かった。他のビジネスをやって失敗したような人や、パソコンオタクのような人も多くいた。
それまで相手をしてきた派遣スタッフは組織の中で働くから協調性が求められる。だがこうした人達は自己主張が強く、常識が通じず、かなり扱いにくかった。契約内容の説明の席では、自分の塾のエリアが狭いからもっと広げろとか、通信費が高いから下げろとか、細かいことをちくちくと文句を言ってきた。どう考えても理屈に合わないことを主張してくる人も多く、自己中心的な性格で、この人達が生徒から好かれるとは考えられなかった。

開塾予定の物件の現地調査にも行った。6畳間程度の自宅の一室を使う人、ワンルームマンションを借りる人、オフィスの一部を教室に転用する人、場所も便の良い駅前、住宅地、団地内、いろんなパターンがあった。本来、本部は立地条件や市場を詳しく調査した上で、この物件が適当かどうかアドバイスすべきだが、そんなデータは全くなかった。

通常フランチャイズビジネスは自ら構築したビジネスを、他にそのノウハウを提供してロイヤリティーを得るビジネスモデルだが、H社はノウハウもないのに、最初からフライチャイズからスタートしたことが混乱を招いていた。

しかし当初2000年に1万塾という目標を達成するため、開塾の基準は呆れるほど甘かった。会社は誰でも試験に合格させ、ろくに物件も調査せずに開塾させていた。とりあえず人間なら誰でも開塾させるという雰囲気だった。
僕はこのままではまずい、後で大変なことになる予感がした。会議の席でこの件を社長に訴えたが、質の問題は社長も認識していた。しかしやはり売上を上げるため、開塾数を上げることが最優先だった。

会社設立から5ヵ月後、1996年4月にめでたく20前後の塾が開設になり、社内では簡単な祝賀パーティーが開かれた。しかし僕はあまり喜べなかった。
こんないいかげんなやり方で本当にいいのだろうか。この調子では契約の2年を待たず、閉鎖になる塾が相次ぐのではないかと悪い予感がした。




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2 コメント

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そうなんですか (Unknown)
2006-09-27 17:10:02
HCNで開塾して6年になります

企業時のことは何も分からないため

興味深く読みました、

最近スリープロに売却され、混迷しているようですよ
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大変でした (須藤 正人)
2006-09-28 14:22:25
まさか現在のパソナコンじゅくの方が読まれているとは驚きです。



起業時は本当に大変でしたが、あれから10年経ちますから体制もずいぶん変わったのでしょうね。



HCNがスリープロに売却されたのは新聞で読みました。

親会社が変われば当然混迷するでしょうね。



これからも頑張ってください。

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