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まさおレポート

すごいぞ ラ・ロシュフコー箴言録 精神の欠点は、顔の欠点と同じく年をとるほどひどくなる

初稿2007-08-26 追記2024-04-12

妻の産科定期健診に付き添うときは必ず何かしら本を持っていく。本棚を見まわしてその日の気分で一冊を引っ張り出していく。最低一時間は待たされるので読書や考えをまとめるには最適の時間なのだ。一昨日はふとまだ読んだことのない「ラ・ロシュフコー箴言録」の岩波文庫版を持っていく気になった。

多くの人がこの書物を引用しているのは知っていたが原著を読むのは初めてだ。待合室でぱらぱらと読んでみるとさすが面白い事を言っている。「悪魔の辞典」といいこの箴言録といいヨーロッパにはこうした寸言人を刺す短文を編むのが伝統のようだ。日本には俳句・短歌の短文詩型の伝統があるが、西洋ではこれがこうした形になる。一方は情緒的で一方は論理的で若干皮肉で興味深い対比だ。

ほんのちょっと読んだだけだがさっそく面白い箴言に出会った。
「哲学は過去の不幸と未来の不幸をたやすく克服する。しかし現在の不幸は哲学を克服する」
たしかにたかが歯が痛いだけで何も考えられなくなります。ごもっとも。

ここに宗教の存在意義がある。

「われわれは皆、他人の不幸には十分耐えられるだけの強さを持っている」
これもある程度ごもっとも。しかし稀に、ごく稀に他人の不幸を自分の不幸以上に感じる人がいるのも事実である。生れながらの聖人というべきか。人類は釈迦、キリストを持った。

精神の欠点は、顔の欠点と同じく年をとるほどひどくなる。(p40)

思わず鏡を見てしまった。高齢者だから、先輩だからといって特別視することは意味がないのかもしれない。精神の欠点がまだ現れない若い世代の意見にも真剣に耳を傾ける姿勢が極めて大事だな。

「われわれの美徳は、ほとんどの場合、偽装した悪徳に過ぎない」

愛情や勇気といった美徳の下に潜む、自己愛・打算か。ちょっとついていけない。

恋はその作用の大部分から判断すると、友情よりも憎悪に似ている。(72)

これもよくわからない。なぜ憎悪に似ているのか。この人は恋を知らなかった人か。しかしこんな人もいるよね。

情熱はいずれもわれわれに過ちを犯させるが、恋は中でも最も滑稽な過ちを犯させる。(422)

これは一面わかるが滑稽な過ちこそが喜びをももたらす。

太陽も死もじっと見つめることはできない。(26)

仏教もキリスト教のメメント・モリも死をじっと見つめる。

物事をよく知るためには細部を知らねばならない。そして細部はほとんど無限だから、われわれの知識は常に皮相で不完全なのである。(106)

現代は素粒子にまで行き着いたが、その先にさらに紐の統一理論があるがさらにその先には。

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