まさおレポート

バリ島綺談 ブラックマジック・不思議な話 2

「バリ島物語」の不思議

「バリ島物語」は1904年から1906年のバリを、架空の医師(シュピースがモデル)の遺稿を元にしたヴィッキイ・バウムの小説だ。そのプロローグにレヤックの記述がある。

「バリの村むらには必ず妖術使いがいる。それは女で、しかもたいがいは老婆だが、ときには若いこともある。彼女は世代から世代へと受け継がれたある秘密の呪文によって暗闇の力と交信するのである。・・・レヤックというものに化身する力があって、よるになるとさまよい歩き、・・・火の玉となって出て歩く。・・・バリ人はほとんど誰でもレヤックを見たことがある。・・・島内の外の白人でも、・・・幽霊を見た経験を持っているものがあるのだ。」

シュピースはバリに長く住んで、この地で没した医師のモデルになった人物だが、彼自身もこのレヤックを見たと思われる記述がある。

「バリにおいては自然的病因はないのである。病人は妖術使いに妖術をかけられたのか、悪霊に悩まされたのか、祖先の非行に対して罰せられているのか、そのいずれかにちがいないのである。」

籠屋のオヤジの話

スミニャックのビラに滞在していたころ、近所のカリマンタン製籠を商う親父は3年前にレヤックを2回見たという。夜中の一時にショップから家に帰る途中に巨大な黒い犬が現れたという。毛穴が総毛だったそうだ。すぐにブラックマジックだと感じたという。別の場所では巨大な蛇のレヤックを見たという。バリ人の遺伝子に潜むなにものかの作用かあるいは集団催眠に近いものを子供の時から植えつけられるのか。

ビラの門番のワヤンの話

スミニャックのビラの門番、ワヤンにもレヤックって知っているかと聞いてみた。ワヤンは出身地のシンガラジャで一度見たと云う。空中を、歩くようにしていたという。彼によればバリ人なら10人に一人くらいの割合で、この妖怪をみたことがあるそうだ。ワヤンはさらに彼の上歯がすべて欠けている理由を話し出した。彼はまだ52歳なのだが、上歯が抜け落ちているために実年齢よりも老けて60歳以上にみえる。

 ワヤンは歯が抜けた理由をブラックマジックだという。でました、ブラックマジック!「何故ブラックマジックだとわかるの?」「???」「ジェラシーだ。小さな家を建てたときに、それを嫉妬された」またもや、嫉妬。この嫉妬が理由でブラックマジックをかけられたという話をきくのは2回目だ。

このレヤックの話は、かつて何年も前にウブドの青年からも聞いたことがある。その青年は何度もみたことがあると、ごく普通に少しめずらしいキノコの存在を見つけたことのようにしゃべっていた。老女がレヤックになるケースが多いらしい。


日本人の書いた旅行記
日本人の書いた旅行記にも、夜にバイクで走行中、見たことがあると書いていた。日本では聞いたことがない妖怪が、このバリの地だけで見られるのは何故か。不思議な気がする。

シシの話

この話をベビーシッターにすると、彼女もまたクリスチャンで、多少冷静に観察していると思わせる話をしてくれた。「バリ人は迷信深いので、なんでも災厄が起こるとブラックマジックのせいにする」そうだ。

嫉妬されるほどの家でなくても、見栄でそう思いたがることもあるのではないかと笑っていた。なるほど、見栄でマジックをかけられたと思う心情がありそうだ。もてていると勘違いしている男がなにかの事情で病気になったときに、「だれか他の男が俺の事を嫉妬して、マジックをかけた」と思いたがる気持ちは確かにありそうで面白い。

しかしそのシシもやはり似たような妖怪を見たという。彼女は特殊な能力を持っていて、体に触れることによって治療が出来るらしい。あるバリ人を治療中にレヤックが出現したそうだ。

シシの送り迎えをするドライバーが我が家にこれなくなった。理由を聞いてみると、身体の不調があり、出身地のシンガラジャに帰ってバリアン(バリの呪医)に見てもらうのだという出来事もあった。

バグースの話
知人のバグースからも似たような話を聞いた。そのブラックマジックはバグース自身には及ばず、一軒飛び越えた家に間違って襲いかかり、その家が災難に遭ったという笑うに笑えない話だった。

なぜマジックをかけられたのかと問うと、またもや家を新築したからだとの答えが返ってきた。

これはバリ人特有の能力なのかあるいはバリ島民の集団催眠のようなものか。ケチャックダンスの際に神がかりになることもバリ人特有の能力として同じような説明がつくのかもしれない。

ビラのオーナー夫人の話

スミニャックに滞在した折のある日のこと、我が部屋に誰かが合鍵で侵入した事件があり、机の上にはその合鍵があわてて逃げたために置かれたままであった。このオーナー夫人に鍵の管理やおそらくビラのスタッフのしわざに違いない無断侵入について苦情を言ったところ、バリでは通常考えられない不思議なことが起きると話してくれた。例えば3年も前に失くしたバッグが突然ソファの上に置かれていたりするといった話を真顔でしてくれた。そのときはこのビラのオーナー夫人の言い逃れと思いますます怒りを募らせたが後に冷静になって考えてみると彼女は本気でこの種の話を信じていたに違いない。ちなみに彼女はジャワから来た人でバリ人ではなく、その上クリスチャンだ。

その後なくしたものが時間を経て出てくるという話を聞くようになった。これも一つのパタン化された不思議話なのだろう。盗った人が後で反省をするかバレそうになってもとに戻したというのが合理的な解釈ではあるが。

60代後半の日本人の話

バリで知り合った60代後半の日本人が不思議な話をしてくれた。あるときバリのある場所でジャワ島出身の奥さんが車を降りた後でバリの神々についてなにか軽口をたたいたところ、車のバックガラスが突然大きな音を立てて割れたという。バックガラスが突然大きな音を立てて割れるなど聞いたことのない事象で、その日本人も作り話をするような人柄ではない。土地の神が怒ったのだとその日本人は真顔で述べ、私にも土地の神々への敬意を払うように忠告してくれた。その日本人は不思議な現象を奥さんがジャワ島出身者のモスリムでバリの神々を讃えていないのが原因と解釈していた。

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