月下の道標
光と闇が映し出す心象的夜の風景と日常的自然風景








CANON EOS5D Mark2
CANON EF16-35mm F2.8LⅡUSM


今年の涸沢の紅葉は10年に一度というぐらい
見事なものだったらしい
涸沢ははじめてなのでわからないが
登山者はみな口をそろえて言っていた


ここからさらに上へ登っていく登山者も多いのだが
「ここで満足」といって登っていかない人も多数いた


前日の涸沢は曇ったり晴れたり雨が降ったり
不安定であったが

真っ赤に色づいた涸沢はとても美しかった

息も絶え絶えに登っていたので
前日は写真を撮る余裕などなかったのだが
撮っておけばよかったと今になれば思う

一晩で劇的に変化する山の風景に驚いた

この写真を撮った朝は少し色がさめていたように思えた



それでも

こんな雲一つない秋晴れの涸沢カールの空は
またいつかこの場所に来たところで
見られるものではない


この写真を撮った時間は9時をまわっていた


本当はここから先
この山の上にある穂高岳山荘まで登って
もう一泊していこうと思っていた


でももう気持ちは満たされていた




「下山しよう」






見下ろした景色も快晴


登っていくときには見られなかった山の風景を
目に焼きつけていこう


「もういい

区切りがついた」



今年の涸沢行きで
泊まりの山行きは終わりにしようと思っていた


雨天決行の無茶な山行きだったのは
ケジメをつけるためだった





今年の夏は猛暑で
高齢の愛犬マリーには辛かったようで

体調を崩し何度も病院へ行った


今は涼しくなって体力も回復して
元気になったのだが


日ごと老いていくのが目で見てわかるようになってきた

来年も再来年も
一緒にいるのがあたりまえだったことが

考えたくもない現実に近づいてきている


退職して
時間ができた


やりたいことはたくさんある

山も写真も・・・


でも

あれもこれもというわけにはいかなくなってきた




今は
できるぎり一緒に



愛犬を見ていてあげたい



山ではなく
ファインダーではなく












天気予報はよいものではなかった



でもどこか信じていた


きっと晴れる



思いはかなう



ソールの剥がれたご婦人は許されなかったが

私は許された



満たされた心に涙がこぼれる




「ありがとう」



誰に 何に言っていたのか
何度も言っては
涙を拭う





またいつか
涸沢に来たら


この年の涸沢のことを思うことだろう









2010年10月9.10.11日
上高地~涸沢




























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