mardidupin

記憶の欠片あるいは幻影の中の真実。

《七夕の夜にみつる灯の色》

2014-07-06 05:31:45 | 〈無色と白色の間の部屋〉


咲く星に熱き祈りの夢の華
白くひらけば伝わりて夜
流れ堕ちれば実かわりて恋



《恋慕夜曲》

いはれなき少年の時の悲哀のごとく
黄昏は街をつゝめり

路傍のプラタナスは葉をたれて
とほくはるかなる子守唄をきく

悔恨と倦怠との闇のうちより
そこはかとなくさきいづる花のかず/\

七夕の夜にみつる灯の色
宵宮の日にみつる灯の色
揚幕のかげよりみつる灯の色
地獄極楽の観世物小屋の灯の色
仁丹の広告燈
銀座の雨の夜の舗石にこぼれし灯の色

かぎりなくほのかなる夢の華


涙ぐみし睫毛のひまに
光りてはきえゆきけむ
わすれたる不可思議の夢
やさしくも甦がへる
東京の夜こそかなし

街をながるゝ堀割の水は
三味線の音色と
いまはわすれられたる昔の唄とをのせ
よきひとの濡髪の香のごとく
ほのかにやさしく忍びよるなれ

少年の日の門辺をすぎし巡礼の娘は
鉦たゝきはる/゛\と
ゆきやゆきけむ

「黒髪」の唄のふしわれに教へし
眉青き人のたづきやいかならむ
あはれ性の懐郷病
やるせなくさしぐむ

若くおろかに
あとなき夢をおひてさまよひし
東京の夜こそかなし




詩と絵:竹久夢ニ

最新の画像もっと見る

コメントを投稿