年末になり、少し寂しい気持ちになっているのではないかと思い、
車を走らせ母のいる有料ホームへ。
ベッドの中に沢山の服でくるまれたおしゃべり人形。
「寒いだろうと思って。」と、母。
物忘れの進行を少しでも予防したくて買ったものだったけれど、かえって母を混乱させていたことがわかった。
母は人形と頭の片隅では認識しながらも、生きた子どものようにも錯覚する。
人形だと言うと、ああそうよね、と理解するのに。
結局この人形は私が持ち帰ることになった。
母は私を妹と勘違いする。
訂正すると、ああそうだったと笑うのに、しばらくするとまた混乱する。
母の記憶のなかの我が子の思い出は希薄なのかもしれない。
久しぶりに外につれ出して車いすを押しながら買い物をすると、とても嬉しそうにする。
明日になれば、母の記憶は消えてしまう。
今日のできごとも殆ど忘れることだろう。
それでも、楽しいと感じた記憶の断片は残ってくれるはず。
妹でも娘でも、もはやどちらでも構わないから、母の残された時間が少しでも幸せなものでありますように。
心からそう願う。