ぼちぼち日記

シニアの暮らし方や思い、猫たちのことなどをマイペースで記録しています。

「シニアでくくるな」  著者:原田曜平

2024-08-25 17:49:22 | 
現時点でも有望であり、将来的にはよりマーケットが大きくなると予想される領域がある。それが「ノスタルジー消費(思い出消費)」だ。
シニア世代に共通して言えるのは、全く新しいものにチャレンジしたり、受け入れたりすることは、少しハードルが高いということだ。その代わりに、「見てみたい」、「やってみたい」と抵抗感なく飛びつきやすいのが、若かりし頃に一度経験して楽しんだ記憶があり、それがリメークや続編となって再登場してくる商品やサービスだ。「懐かしい」「あの頃、楽しんだ熱狂をもう一度味わいたい」と、ノスタルジーを感じて、それによって消費の歯車が回りだす。シニアヒットの源泉は、彼ら、彼女らの思い出の中に眠っており、それらをいかに目覚めさせるかが鍵となる。

想像していたものと逆で、マーケティング戦略の話だった。
本のページを開くと、例えばこんなタイトルが。
「狙うはデジタルリテラシーの高い高齢者」
シニア層もさまざまだが、今後はデジタルに強い高齢者が増えてくるのでそこを見逃さず、という指摘。
それにしても思い出消費か・・・。
一度経験したことを再度体験したいという思いはわからないでもないけれど、人生は一度きりだからもっと違うことにチャレンジ出来たらいいな。
そういう老人になりたいんだけれど、まだまだ道は険しい。
(´Д`)
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「サラバ」上下  著者:西加奈子

2024-07-15 12:49:48 | 
まるきり知らない世界に、嬉々として飛び込んでゆく朗らかさは、僕にはない。あるのは、まず恐怖だ。その世界に馴染めるのか、生きてゆけるのか。恐怖はしばらく、僕の体を停止させる。そしてその停止をやっと解き、背中を押してくれるのは、諦めである。自分にはこの世界しかない。ここで生きてゆくしかないのだから、という諦念は、生まれ落ちた瞬間の「もう生まれてしまった」という事実と、緩やかに、でも確実に繋がっているように思う。

複雑な家族関係の中で、常に他者の動きに一喜一憂し、受身で、流されるように生きてきた主人公が最後に掴んだもの。
信じるものを見つけて、ふらつかずに自分の足で立ち続けること。知らない世界に飛び込む勇気。誰のものでもない自分の人生を生きる喜びだったのだと思う。上下2巻。読み応えがあった。
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「蚊学入門」 編著:一盛和世

2024-07-08 13:32:15 | 
上唇と下喉頭の先端はナイフの先のように鋭くとがっています。特に、上唇の先端は注射針よりもはるかに鋭く、10度以下の角度です。皮膚に挿入された4本の管ですばやく血管を探して上唇から吸血します。下咽喉の真ん中には唾液管が通っており、吸血に先立ち唾液を注入します。・・・唾液は毎秒6回の速さで断続的に注入されます。もし、マラリア原虫などの病原体を保有している感染蚊から吸血された場合は、唾液と一緒に病原体も注入され、吸血された動物が感染することになります。・・・・蚊の唾液中には、複数の局所麻酔物質、消化液、血液凝固抑制剤などが含まれています。麻酔物質の効果は約3分以上かかることもありますが、知らない間に吸血されて、痒くなって初めて気がつくことはよくあります。また、血液凝固抑制剤で血液が固まる時間を遅らせ、0.03㎜の極細の上唇が詰まらないように、消化液を使って血液を消化吸収しながら効率よく吸血します。刺された後に痒くなるのは、これらの異物のタンパク質である唾液成分がアレルギー反応を起こすからです。

この吸血の場面。
蚊を甘く見すぎていた自分を反省したくなる。
麻酔って・・。まるでお医者さん。
江戸時代の人も蚊に悩まされていたことが浮世絵に描かれていたり、あの蚊帳の起源がエジプトにあったことや、歴史の有名人が結構な数、蚊を媒介にする感染症で苦しんでいたことなど、そのほか沢山の豆知識が紹介されていて、楽しい一冊だった。

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「お金本」  左右者

2024-07-08 13:05:19 | 
如何に多く財を費やしても、唐辛子を甘くすることはできないけれども、無限の砂糖をもってその辛みを消すことは出来る。また平生、苦り切ってやかましく言っている人でも、金のためにはすぐ甘くなるのは世間普通のことで、政治界などによく見る例である。
・・・・・・・金はそれ自身に善悪を判別するの力はない。善人がこれを持てば、善くなる。悪人がこれを持てば、悪くなる。つまり、所有者の人格如何によって、善ともなり悪ともなる。  渋沢栄一

私が巨万の富を蓄へたとか、立派な家を建てたとか、土地家屋を売買して金を儲けて居るとか、種々な噂があるやうだが、皆嘘だ。
巨万の富を蓄へたなら、第一こんな穢い家に入って居はしない。土地家屋などはどんな手続きで買ふものか、それさへ知らない。此家だって自分の家では無い。借家である。月々家賃を払って居るのである。世間の噂と云ふものは無責任なものだと思ふ。 夏目漱石




上記の二人をはじめ、小説家や評論家、詩人など、実にたくさんの人が登場する。それを幅広く拾い集め、何の解説もせずに紹介しているので、著者はないい。左右社。面白い。
それにしても。
偉大な作家先生。お金を前にするとみんな一気に光を失い、ただのひとだな。
ちょっとガッカリのような、親近感がわいたような・・・・。


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「役に立たない日々」  著者:佐野洋子

2024-06-24 11:21:23 | 
私の見栄ってこういう表れ方をするのか。フーン。しかし見栄というものは世間がないと生まれないものである。あれ程私の一生、自分は世間になるまいと腹を固くふんばって来たのに、自分の中に世間が埋蔵されていたのだ。困ったことだ。私の肝は世間に負けた。路地を私はうつむいて歩いていた。
私は、老人になってせめて姿勢だけは良く歩こうといつも思っていたら、ある日道でばったり知り合いに会った。
「あなた何いばってふんぞり返っているの」と知り合いは云った。世間はむずかしい。

もう亡くなってしまったけれど、佐野洋子さんが好きだ。
生き方があまり上手でなく、嘘がつけない人という印象がある。
この人のエッセイを読んでいると、時々自分と重なって切ない気持ちになる。

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