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ぼちぼち日記

シニアの暮らし方や思い、猫たちのことなどをマイペースで記録しています。

「寿命が尽きる2年前」  著者:久坂部羊

2025-04-13 18:40:42 | 
理性を強め、人間として成熟すれば、寿命が尽きる二年前には、もう自分を解放してもいいでしょう。不安や心配から自由になり、死におびえることもなく、長生きのための努力も辛抱も遠慮もいらない。ほんとうに自分がやりたかったことができるのが、寿命が尽きる二年前です。考えようによっては、人生の中でもっとも自由で自立した時間といえるかもしれません。
それがいつかわからないから困るんだと言う人には、こう応えましょう。
「それは今でしょ」
まちがっているかもしれませんが、そう考えても損はないはずです。二年以上あれば、それだけさらに自由な時間が過ごせますし、二年以下だったとしても、その期間を心配や不安で不自由に過ごすことを免れたのだし、ぴったり当たっていたら、それこそ理想の二年をすごしたことになります。
最悪なのは、死の直前まで長生きのための努力や我慢や節制を続けて、貴重な時間を無駄にすることです。さらには、最後の最後に医療に頼って、自ら無用の苦しみを背負い込むことです。

著者は小説家でもある現役の医師。
老後の不安に備えてひたすら今を犠牲にすることは、あまりにも空しい。
自分の寿命があと一年となると、色々まとまったことをするには少し時間が少なすぎるが、二年あれば結構色々出来るというのが著者の意見。
私も全くその通りだと思う。
あと二年を常に意識しよう。
そうすれば物事に優先順位もつけやすいし、我慢ばかりの人生と無縁で生きられるのではないかと思う。
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「優しい暴力の時代」著者:チョン・イヒョン 訳:斎藤真理子

2024-12-18 17:19:11 | 
私は、まだ会ったこともないころのおかあさんの選択に心からの支持を表明した。問題がはっきりと目に見えているとき、人は原因を取り除こうとする。でも、必ずしも全員がそうではない。ある人はひっそりと部屋に身をひそめてドアを閉め、鍵をかける。人生が常に、一瞬一瞬の闇を突破しつつ前進する苦難の旅路である必要はないじゃない。そういう考え方をするという点で、私は確かに彼女の娘だった。 ―ずうっと、夏 ―

8編の短編が収められている。
登場人物の誰もが、生きることに時として苦痛を感じながらも、心の均衡を保とうする繊細さと思慮深さをもって生きている印象を受ける。ドラマチックでない日々の暮らしと平凡な人々。どの作品にも胸にしみる言葉があふれていて、好きな作家のひとりだ。
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「シニアでくくるな」  著者:原田曜平

2024-08-25 17:49:22 | 
現時点でも有望であり、将来的にはよりマーケットが大きくなると予想される領域がある。それが「ノスタルジー消費(思い出消費)」だ。
シニア世代に共通して言えるのは、全く新しいものにチャレンジしたり、受け入れたりすることは、少しハードルが高いということだ。その代わりに、「見てみたい」、「やってみたい」と抵抗感なく飛びつきやすいのが、若かりし頃に一度経験して楽しんだ記憶があり、それがリメークや続編となって再登場してくる商品やサービスだ。「懐かしい」「あの頃、楽しんだ熱狂をもう一度味わいたい」と、ノスタルジーを感じて、それによって消費の歯車が回りだす。シニアヒットの源泉は、彼ら、彼女らの思い出の中に眠っており、それらをいかに目覚めさせるかが鍵となる。

想像していたものと逆で、マーケティング戦略の話だった。
本のページを開くと、例えばこんなタイトルが。
「狙うはデジタルリテラシーの高い高齢者」
シニア層もさまざまだが、今後はデジタルに強い高齢者が増えてくるのでそこを見逃さず、という指摘。
それにしても思い出消費か・・・。
一度経験したことを再度体験したいという思いはわからないでもないけれど、人生は一度きりだからもっと違うことにチャレンジ出来たらいいな。
そういう老人になりたいんだけれど、まだまだ道は険しい。
(´Д`)
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「サラバ」上下  著者:西加奈子

2024-07-15 12:49:48 | 
まるきり知らない世界に、嬉々として飛び込んでゆく朗らかさは、僕にはない。あるのは、まず恐怖だ。その世界に馴染めるのか、生きてゆけるのか。恐怖はしばらく、僕の体を停止させる。そしてその停止をやっと解き、背中を押してくれるのは、諦めである。自分にはこの世界しかない。ここで生きてゆくしかないのだから、という諦念は、生まれ落ちた瞬間の「もう生まれてしまった」という事実と、緩やかに、でも確実に繋がっているように思う。

複雑な家族関係の中で、常に他者の動きに一喜一憂し、受身で、流されるように生きてきた主人公が最後に掴んだもの。
信じるものを見つけて、ふらつかずに自分の足で立ち続けること。知らない世界に飛び込む勇気。誰のものでもない自分の人生を生きる喜びだったのだと思う。上下2巻。読み応えがあった。
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「蚊学入門」 編著:一盛和世

2024-07-08 13:32:15 | 
上唇と下喉頭の先端はナイフの先のように鋭くとがっています。特に、上唇の先端は注射針よりもはるかに鋭く、10度以下の角度です。皮膚に挿入された4本の管ですばやく血管を探して上唇から吸血します。下咽喉の真ん中には唾液管が通っており、吸血に先立ち唾液を注入します。・・・唾液は毎秒6回の速さで断続的に注入されます。もし、マラリア原虫などの病原体を保有している感染蚊から吸血された場合は、唾液と一緒に病原体も注入され、吸血された動物が感染することになります。・・・・蚊の唾液中には、複数の局所麻酔物質、消化液、血液凝固抑制剤などが含まれています。麻酔物質の効果は約3分以上かかることもありますが、知らない間に吸血されて、痒くなって初めて気がつくことはよくあります。また、血液凝固抑制剤で血液が固まる時間を遅らせ、0.03㎜の極細の上唇が詰まらないように、消化液を使って血液を消化吸収しながら効率よく吸血します。刺された後に痒くなるのは、これらの異物のタンパク質である唾液成分がアレルギー反応を起こすからです。

この吸血の場面。
蚊を甘く見すぎていた自分を反省したくなる。
麻酔って・・。まるでお医者さん。
江戸時代の人も蚊に悩まされていたことが浮世絵に描かれていたり、あの蚊帳の起源がエジプトにあったことや、歴史の有名人が結構な数、蚊を媒介にする感染症で苦しんでいたことなど、そのほか沢山の豆知識が紹介されていて、楽しい一冊だった。

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