井沢満ブログ

後進に伝えたい技術論もないわけではなく、「井沢満の脚本講座」をたまに、後はのんびりよしなしごとを綴って行きます。

方向音痴のラビリンス

2013年04月27日 | ドラマ
私のような方向音痴にとっては、何十年住み慣れた東京も時としてラビリンス(迷路)です。

イタリアで井沢満原作のお話がミュージカルになるのですが、その契約書に判子を
押すべく喫茶店に行ったついでに、うなぎをマネージャーのHさん(出演部分と、海外がからむことが多いコミック原作の版権管理のみお預けしています)にご馳走しようと、神田駅近くの老舗に行ったら、何ということ、うなぎの名店として有名だったその店が、今風のカフェに変貌しているではありませんか。

Hさんにお詫びして、1人で散歩がてら遅い昼食を食べる店を探しつつ歩いていたら、秋葉原にたどり着き、そうだ、「母。わが子へ」のロケの時、たまたま入った店のステーキがまあまあ美味しかったな、あそこはどこだっけ・・・と思い出そうとするのですが、方向音痴の頭のマップは、道路がつながっていず、あちこちで切れているのです。
方向音痴ではない方と歩いていた時、その方が言うには「歩きながら、航空写真のように道筋が俯瞰で見えているのですよ。だから一度歩けば私は道を忘れません」だそうで、別人種です。

さて秋葉原のステーキ屋を思い出さぬまま、一度タクシーで通りかかり、この店だったら大丈夫かもと思った店がそう言えば秋葉原駅近くにあった・・・・。あそこだったら、大通り一直線でさすがに私でも解るだろう、とてくてく歩いているうちに、ふぐ料理屋の前に出て、あ、春ふぐもオツなものだし、とステーキからふぐに頭が切り替わり、しかし店はまだ準備中です。
5時半開店とあるので、待とうかと一瞬思うものの、まだ時計は4時。朝から食べていないので空腹です。

というわけで、やはりタクシーで見かけたステーキ屋に行こうと、歩けど歩けど、その店は影も形もありません。タクシーの窓から見えただけの店を探して歩くなんて、身の程知らずのことをしたのかしらん、ととぼとぼ迷い歩いていたら・・・あれ、何か見たような景色。
なんと、ロケのあった場所ではありませんか。つまりはそのステーキ屋のある一角にたどり着いていたのです。
むろん、入りました。そこは和牛を使うしまあまあ美味しいのです。

満足して食べ終えて、歩いていると、あここは八千草さんが次男を探しあぐねて、屈みこんだところ・・・・とか、セリフとともに思い出されます。
没入して書けた時は、書き終えても登場人物が実在してその街でまだ動いているような、住んでいるような感覚があります。