井沢満ブログ

後進に伝えたい技術論もないわけではなく、「井沢満の脚本講座」をたまに、後はのんびりよしなしごとを綴って行きます。

The Izu Dancer

2017年07月19日 | 日記

コメント欄に、

「昔、高校の国語の先生が、森鴎外の舞姫の授業の時、「英語やったらダンシングガールって表現しかないけど、舞姫ってきれいな表現やろ?」って言われたのを思い出します。

と、頂いて確かに「舞姫」がダンサーじゃあ色気もアヤもないよなあ。

では「伊豆の踊子」はどう訳されているかと調べてみたら、予期したとおり
The Izu Dancer。身も蓋もありません。

三島の「金閣寺」は、The Temple of the Golden Pavilion。

「金閣寺」という漢字ですでに、輝く仏閣が構築されていると思いませんか?
「金」が左右対称なのも、視覚的効果に寄与しています。

英訳本を読んだ欧米人がそれでも、さぞ原語である日本語が美しいのだろうと感嘆していたのだから、どれだけ三島文学の言葉が美を孕(はら)んでいるか解りますね。

幼少期から歌舞伎を見て育っているので、三島さんの言葉は音感にも優れていて、昨今この音感が秀でた作家を田辺聖子さんを最後に知りません。

音声で表現されるドラマのセリフからも、聴覚の敏感な作家がいなくなりつつあります。セリフも一つのリズムであり、メロディなのですが。

言葉が難しいとされる三島文学を私は高校2年で読みこなしていて、それは
ささやかな誇りですが、けれど英語訳の金閣寺は5ページ目で挫折したのが
19歳の頃。癇癪を起こして雨の路上へ叩きつけたことを思い出しました。
酔っ払っていたこともあり。(あ、未成年、バレた)

コメント欄に岡田茉莉子さんと吉田喜重さんの話も出ていましたが
私が生まれて初めて現実に目にした銀幕のスターが岡田茉莉子さんで、
私は小学生? 中学生だったか・・・・目をはじかれるような美しさで、
くらくらしたことを、いまでも覚えています。

後年、夫君である吉田喜重さんが私の書いたドラマを芸術祭の
審査員として熱く推してくださって、受賞に至りました。 

 

誤変換他、後ほど推敲いたします。

 



3 コメント

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漢字 (チッチョ)
2017-07-19 21:11:09
日本語は単語がとても多いと、外国の方に言われます。
他の国なら一つの名前で表すものも細かく分けたり、一々名前をつけるのも一因かと思います。こだわりが大きいというか、細かいというか。
漢字の力も大きいですよね。「金閣寺」たった三文字で表現出来るのですから。

友人が「英語で読むと(日本語で読むより)時間がかかるのは自分の英語力のせいだと思っていたけど、アメリカ人も同じくらい時間がかかると知って漢字のお陰なんだとわかった」と話したことを思い出しました。
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先生、ありがとうございます。 (総太郎)
2017-07-19 17:51:00
先生、ありがとうございます。

いや~、本当に心が暖まります(^^)

先生の作品にエールを贈られていた吉田監督、先生のお着物に品位を感じておられた市川森一先生ら、一流の素晴らしいクリエーター同士、共感される物があるんでしょうね!

吉田監督の松竹ヌーベルバーグ時代の作品では鈴木やすしさん主演「日本脱出」
津川雅彦さん主演「ろくでなし」等、
もっと評価されて欲しいです。

三國連太郎さんとのゴールデンコンビ「戒厳令」「人間の約束」(御子息・佐藤浩市さんも共演)も忘れられない名作。

因みに館ひろしさんが、以前、インタビューで「戒厳令」が好きだと仰っていたので、吉田監督への御尊敬はもちろん、北一輝氏や歴史的な物にも関心がおありなのかも知れませんね・・。

岡田茉莉子さんは、佐田啓二さんとダブル主演された中村登監督の「集金旅行」(昭和32年・松竹)では楽しいコメディもこなされ、
とにかく、一貫して演技もお仕事も幅が広い素晴らしさ!

遥か昔から、脇役も率先して引き受けられ、テレビドラマや舞台も積極的で、現在も「土曜ワイド劇場」始め、二時間ドラマ等で若い俳優さん達を引き立てられ!

芸術性や知識人から好まれるような企画、
自身が主役でなければ気に入らないと言わんばかりの一部のスターや某学芸会女優さんと違い、
政治やイデオロギー関係なく、
中島先生の任侠映画や予算や条件の厳しい作品にも快く御出演!
(男優では鶴田先生や丹波先生もそんなスタンスでした)

先生と御夫妻が何か素晴らしいお仕事でコラボレートなさる機会があれば嬉しいですね(^_^)

伊豆の踊り子の「イズ・ダンサー」は、
確かビートたけしさんやB&Bさんの漫才のネタで、
「英語で言ったらマネケやで~!」旨、
昔、披露されていましたね・・(笑)

奥行きの深い日本語の誇るべき部分でしょうか。

嬉しくなり、追記失礼致しました。
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日本人で本当によかった (毎日和菓子)
2017-07-19 17:35:31
そう思えることの理由のひとつでもある日本語。
その言葉一つで伝えたいイメージが見えてくるのですよね。情景や感情でも。
歌の歌詞やドラマや映画の台詞でそういった言葉が出てくると、もうそこで引き込まれ忘れません。
読書、特に昔のものを読むことは今の日本人には必須なのかもしれません。
やはり今のグローバル化という聞こえの良い言葉に流され、日本人であることの意義や日本語を後回しにするような風潮には疑問を感じます。
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