井沢満ブログ

後進に伝えたい技術論もないわけではなく、「井沢満の脚本講座」をたまに、後はのんびりよしなしごとを綴って行きます。

「自分の息子に同じこと言える?」

2015年11月22日 | 日本語について

ある女性キャスターが放った言葉が、胸に小骨のように突き立っていた。

報道からそのキャスターの言葉を拾うと、

あんたは僕の子じゃないんだよって言われる息子の気持ちになると切なすぎません?」

「厳密な法解釈と家族の形って違うじゃないですか。そんなに厳密に法的に『あなたと私は家族じゃない!』って言わなきゃいけないんですかね?」

 「いったんは長男と新しい奥様もうまくいってたわけですよね。過去に結婚していたことも、子供がいたことも事実なわけじゃないですか。実子がどうかは別としても。それをいまさら決着つけなくちゃいけないんですかね?」

「生みの親より育ての親って言葉もあるくらい」

拾い上げてみると、それなりに理屈は通っていないわけでもない。私は与しないが、そういう考え方もある。特に西欧では、実子の他に多国籍の子供たちを養子にしているハリウッドスターもいるぐらいだ。

しかし・・・・ここは日本ではないか。「血縁」という縁で結ばれた家族というのが基本にあり、微弱ながら血を辿れば1滴分の血は天皇につながっている・・・・という国家も「家」としてみなす感性が日本にはある。そのことの是非は置いておくとして、日本人の感性の基本にある。(血縁にはない家族の否定論ではないので、念のため。その肯定的ドラマを大昔にNHKに書いたことがある)

女性キャスターの言葉に決定的に欠けている「母性」のごときものなのだけど。言葉に添う人としての情のなさ。

母性というと女に母性を押し付けるな、とかいうフェミニズムの言い方は勘弁して欲しいのだけど、父性と母性は歴然と異なるし、猿ですら母性を持っているから本能的に乳を与えるし、外敵から守るではないか。育児そのものは男猿の役目ではない。基本的な生物としての営みを言っているので、男の育児参加を批判しているわけではない・・・・と現代は何と色々言い訳をしないといけないのだろう。ほんと、めんどくさ。

しかし「あなたの子が出来た」と言われ、潔く責任をとって結婚したら離婚。男手で育て上げたら他の子だった。なんで騙されたほうが叩かれるんだ?

それはさておくとして、コメント欄に頂いた内容に、ああ私が感じた違和感はそれだったか、と目から鱗だったのだが「自分の息子に同じことがいえますか」ということなのだ、結局。

他人に対してならいくらでも一般論で、きれいごとが言える。本人の身になってみろ、という言い方は出来るが、自分なら黙っている、という人も選択肢としては皆無ではないだろう。

だが自分の息子がそういう目にあった時の母親は、許せるか?

「生みの親より育ての親って言葉もあるくらい」は、親のほうが少なくとも他人の子だと知っていること前提のことわざであろうに。そしてそれを知った子が感謝とともにいう言葉であろうに。

今回の一件とは事情が基本的に異なる。

私は、話題の渦中の彼とたまに会って遊んでもらっていたのだが、そういう時には彼の実家のお母さんが、彼の家に来ていたようで、しかしある時、お母さんに子供がひどい言葉を投げつけたとか、したとかで、お母さんが泣いていたことがある。
お母さんから泣きながら電話が来て、彼がそれに対してなだめ、それから
子供に電話して、こんこんと言い聞かせているのを、私はそばで聞くともなく聞いていたことがある。「おばあちゃんに、あんなこと言っちゃいけないよ。おばあちゃん泣いてたよ。おばあちゃんも、○○を一生懸命育ててくれてるんだよ・・・・」

その時は、やっぱり男手一つで育てるのは大変なんだなあ、よくやってるなあという程度の感想で、息子さんが心に問題を抱えていることを知らなかった。彼が再婚する前、文字通り男手一つで育てていた時期のことである。

ある時は子供が海外で発病して、大変だったようで私はそういう時の
父親の心理状態を物書きとして知っておきたかったので、細目に渡り
・メールで質問したら「まんさん、きっついなあ」と返事が来て、答えては
くれなかった。よっぽど大変だったのだなあ、とその時もそれだけの
感想であった。

彼もむろん私も子供が実子だと思い込んでいる時である。

彼のお母さんの話に戻る。面倒を見ている最中、違和感はなかったのだろうか? 何かが違う、と。言葉にするほどでもない違和感。
心に、ひずみを抱えているので扱いが大変だということの他に、センサーのごときものは作動しなかっただろうか?

彼が私と会うのに、お母さんには来てもらえない日だということで子連れでやって来たことがある。その子が「こんど、お母さんがけっこんするんだよ」と私に言い、私はとっさに返事できなかった。彼は穏やかに無言だった。

そして、駅に向かって手を繋いで帰る「父子」の後ろ姿を私はしばらく
見送っていたことがある。
父親と幼い息子が手を繋いで夜の家路を辿る光景はいいもんだなあ、と。

まだ少年めいていたアイドル時代からの付き合いなので、そういう感慨もあったのだと思う。
あの樹生がお父さんかぁ、と。記憶の中に高い背と小さな背と、父と息子の背中が影絵になって今もある。

・・・・ご自分がもし、彼の母親だとして、以下の言葉を言えるかどうか、くだんの女性キャスターに改めて問うてみたいのだ。

 

あんたは僕の子じゃないんだよって言われる息子の気持ちになると切なすぎません?

 

「厳密な法解釈と家族の形って違うじゃないですか。そんなに厳密に法的に『あなたと私は家族じゃない!』って言わなきゃいけないんですかね?」

 「いったんは長男と新しい奥様もうまくいってたわけですよね。過去に結婚していたことも、子供がいたことも事実なわけじゃないですか。実子がどうかは別としても。それをいまさら決着つけなくちゃいけないんですかね?」

 

「生みの親より育ての親って言葉もあるくらい」

‥‥‥‥‥‥・どうもしっくり来なくて、彼女の経歴を調べてみたら案の定、子供は産んだことがなくしたがって、育てたこともなく、他人の子供を預かって慈しんだこともなく‥‥・

子育てってきれいごとでは無論行かず、ある有名な女性から聞いたことだが「書いている最中に泣かれると、この、ぶっ殺してやろうかと思うこともあるよ」と。これは極端だろうが、子育てがいかに手間暇根気と忍耐がいるか、知らない女性に言って欲しくないのだ。

それに、言わせていただけば一度離婚していて、2度目は不倫じゃないですか。ひょっとしたら、一度目のそれも略奪婚だとか、そうでないとか。
それがいけないというほど、私は道徳家ではないけれど、あなたに上から目線で家族を語って欲しくない、とは思う。

夫や父を奪われた妻や、子供の気持ちがわかりますか、と訊き返したい。

自分の息子が騙されて、他の男の子を苦労して育てさせられて、仕事も
セーブせねばならず、そして自分は息子の子でもない子を長年育てる手伝い。
そしてその子はある意味健常児ではなく、あれこれ言われ、され傷ついた挙句、他人の子でした。
で、あなたは「生みの親より育ての親」と言っていられるのか。

いささか、むかっ腹が立ったので、これは当事者である彼の弁護であるというよりも、今回はかなり鬱憤ばらしの駄文である。私が渦中の彼と個人的に付き合いが仮になくても、同じことを言う。

 


19 コメント

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初めてコメントいたします (ごんぎつね)
2015-11-22 14:05:30
はじめまして、こんにちは。いつも読ませていただいております。
井沢先生は、お優しい方ですね。大沢さんは井沢先生のようなご友人がいらっしゃって、お幸せだなと思いました。

特殊なフェミニストは別として、主婦層は安藤優子や喜多島舞のようなな女性を許さないと思います。生理的に受け付けないのです。女の敵と認知されます(笑)
子供達の友人の中にも、離婚し親権争いの末、父親が引き取った方が何人かおりました。全員、一年もたたないうちに、親権は別として母親と暮らしています。働き盛りの父親に、子育ては難しいのでしょうね。
大沢さんはご立派です。
私も親ですが、些細なことであっても子供達の不始末があれば、自分の至らなさを責め悩むことばかり。誰かを責める前に、まず自分を省みます。大沢さんは、子供への不信から検査をするに至った訳ではなく、まず自分自身をよく知りたかったのかな、と思いました。

それにしても大沢さん、ドラマの中では男前な悪役が多いので、ギャップにビックリいたしました。それだけ演技がうまいのですね。
光GENJIの中でも一番のイケメンでしたが、今後ますますご活躍されることと楽しみに応援したいと思います。

井沢先生のご活躍、ブログの更新、これからも楽しみにしております。
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同感です (アラフォーママ)
2015-11-22 14:11:41
あの女性キャスターの程度が よくわかりました。なんにも わかってない方なんですね。呆れてしまいました。
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そのとおり (一言一句同意)
2015-11-22 14:58:16
本当にそう思います。
偏向報の上、視聴者を「切なすぎません?」と、誘導尋問で、本来の問題の責任を
大沢さんに押し付ける。
違うでしょ?
問題、そこじゃないでしょ?と思います。
何故、大沢さんが責められるのでしょうね?
負わなくていい赤の他人を必死で育ててきたのに…と思うと、本当に腹立たしいです。
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同意です。 (ちぃ)
2015-11-22 19:40:00
とても興味深い内容でした。私は子育てをしたことはありませんが、それでもそのアナウンサーに対して、

『不倫略奪のお相手にもお子さんがいらっしゃいましたよね?そのお子さんの心情を考えると切なすぎません?』

と思いました。倫理観が著しくずれている方だと感じました。
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良質のドラマ鑑賞こそ教育 (HIRO)
2015-11-22 21:33:43

毎日楽しみに読ませて頂いています。

3人兄弟の一人がどうも変ということで、2人がもう一人を調べたら、病院での取り違えだったとう事故が、数年前話題になりました。

昔の松竹の中村登の波の中で、主人公の佐分利信が育てている子が自分の子なのか苦悩する映画がありました。

知っていて他人の子を育てることと、最初は知らずに他人の子を育てることは全然違うと思います。

産みの親より育ての親とは、両者血縁がないことを知っている場合です。
真っ当な親の子だった場合、子は育ての親に遠慮をするもので、だからうまく行きます。

子が親に甘えられるのは、産んだ親に対する許される業のようなものと思います。
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Unknown (Unknown)
2015-11-22 23:46:56
その通りですよ
文中の大沢さんの子育てぶり初めて拝見させていただきました
立派な父親でしたね
仕事も大変な中よくここまで育てたものです
子育てってそんなきれいごとではないですよね
でも大沢さんは精一杯がんばった
それを前提から覆され裏切られた大沢さんの気持ちを考えると・・・今大沢さんに奥さんとお子さんがついていてほんとによかったと思います
でないと早まったこともしかねない
そんな絶望だと思います
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はじめましめ (yoshi)
2015-11-23 01:09:11
日頃からマスコミの偏向報道の異常さにうんざりしていましたが、今回の大沢さんの件でいよいよマスコミの異常さを痛感させられました。
事実をねじ曲げ、論点をすり替えてまで被害者である大沢さんを叩く報道を見て「日本のマスコミはもう後戻りできないくらい狂っているのか」と恐怖を覚えました。

グッディの安藤氏や高橋氏に至っては本当に見苦しいくらいに歪んだ意見で唖然としました。安藤氏なんて、自身が不倫略奪婚を2回も犯しているような倫理観が欠如した人物にも関わらず堂々と大沢さんを叩いていて、尚更唖然としました。「子供のいる家庭から父親を一度ならず二度も奪っておいて、どの口が『子供が切なすぎません?』なんて言っているの?!」と心底驚きました。

今回の件でインターネットを見ていて、井沢先生のブログに初めて流れ着きました。至極真っ当なご意見の数々を拝読し、救われた思いでした。井沢先生のように客観的に冷静に物事を判断し、権力に左右されず真っ当な意見を言える方に司会やコメンテーターを勤めていただきたいのに…と強く思います。

長文乱筆で失礼しました。
これからも井沢先生のブログ更新を楽しみにしています。
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寒くなりましたね (井沢満)
2015-11-23 02:03:20
ひとつぐらいは嫌がらせが来るかなあと
思っていたのですが、皆さんまっとうで
安心しました。

何でしょうねえ。報道の異常さ‥‥‥‥・?

元々日本の家族制度のいいところを
破壊しようとする一団が日本に生息しているのは
事実なのですが・・・・・・。
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Unknown (風鈴)
2015-11-23 09:48:08
件の息子さんは情緒面でも困難な状況にあったようで、
そういう子供さんの親は学校に呼び出されることも多く大沢さんも先生と話し合いをされたり、親同士の飲み会にも参加されたりして周囲にも好感をもたれていたようです。
これは芸能界の方ではなく、その方面の一般人の方のブログから得た情報なんですが。。

大沢さんのお母様も大変なご苦労をされたのですね。でも、立派な息子さんを育てられたのだと思います。
これからは心安らかに過ごしていただきたいものですね。

安藤さん以外にも非難コメントを出した芸能人は多く、何らかの隠然たる圧力があるのでしょう。
でも世論の風は違う方向だと見えます。
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Unknown (鈴蘭)
2015-11-23 09:49:38
大沢さんのことを悪し様に言う視聴者はいないと思います。そもそもそういう番組は見ません。
先生、大沢さんに、
頑張ってください、
とお伝えください。
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