こおろ、こおろ

まぜまぜしましょ

石原慎太郎氏のエッセイに不満アリ

2005年09月05日 17時47分52秒 | Weblog
産経新聞9月5日付、石原慎太郎氏のエッセイ「日本よ」を読んだ。
大筋では納得がいくものの、東條英機と大西中将、阿南陸相の最後を対比させた部分には不満がある。

引用開始
 
「A級戦犯の象徴的存在、かつ開戦時の首相東条英機は、戦犯として収容に来たMPに隠れて拳銃で自殺を図ったが果たさずに法廷にさらされた。彼を運び出したアメリカ兵は、彼が手にしていた拳銃が決して致命に至らぬ最小の22口径なのを見て失笑したそうな。」

引用終了

私は東條英機に対する石原氏の考え方は知らない。
彼の本意を読み取れていないのかもしれない。
でも、この書き方はひどすぎないだろうか。
貶めていると言っても言い過ぎではないと思う。

東條英機は遺書にも書いているように戦争責任は自分にあると考えていたからこそ、すぐに自殺することをしなかったのだと私は考えている。

東條英機は国内に対しては責任があるから、日本政府が逮捕状を持ってきたら潔く出るが、連合軍が持ってきたら自決すると決めていた。
その日が来た時の為に、いつも心臓のところに墨で○印をつけて。

その日、やってきたMPに窓から逮捕状の有無を聞いたら、日本政府の逮捕状ではなく、英文の逮捕状だった為、家中の鍵を締め、妻のカツ(多くはカツ子とされているが本来はカツだとのこと)を逃がし応接間で自殺を図るけれど、GHQは、決して死なせるなと米軍人からの大量輸血と万全最高の治療体制で、蘇生させたのだった。

なんで頭をぶち抜かなかったのか、という話があるけど、
官邸ではなく自宅であったため、家族に頭を撃った死体を見せたくなかった、ということらしい。

なんで心臓がぶち抜けなかった、という話があるけど、
左利きであったこと、つまり、とっさの事ゆえ、利き手を使ったであろうということと、旧式の拳銃であったため、反動が大きかったということ。

ではなぜ、そんな拳銃を使ったんだ?、という話があるけど、
可愛がっていた娘婿、古賀秀正・元陸軍少佐が自決した拳銃だったから。

応接室には自分の護身用拳銃、娘婿が自決に使った拳銃、短刀があり、どうしてその拳銃を使ったのか、東條英機はそれを一言も言わなかった。
処刑直前、古賀のピストルで自決したことを妻に伝えてくれとだけ言ったのだ。


「MPに隠れて」だの、アメリカ兵が「失笑したそうな。」というところで対比を終わらせるなどは、言葉を扱っている人なのだから、選んでその言葉を使い、いちばん効果的な書き方をしたのだろう。

ひとりの日本人としては、まことに悲しいかぎりである。