流動のイイ女

妻子もちと別れ⇒いじめで会社を退職⇒脱無職⇒上司と不倫関係⇒約3年の不倫にピリオド⇒復縁、妊娠⇒未婚の母に

思い出すだけで憂鬱だね

2010-03-04 | 新しい仕事
今まで記事にしたことはなかったけど、テツさんと大きな喧嘩をするとほぼこんな感じになります。
巻き舌でヤクザ口調。意味の分からない持論。
アタシを遠まわしに非難するけど、よくよく聞くと、あれ?それってアンタのことじゃん?って思うことばっか。
歯向かうと恐いし後々面倒だから黙って聞いてるけど、心の中では『その言葉、全部アンタに返してやるよ!』って思ってる。
こんな喧嘩を月に1度はしてた。
心が壊れていくのを感じた。
だけど・・・・


そうこうしているうちにアパートに着いた。
テツさんの姿はなかった。
『どこにいるの?』
「は?知らねーよ」テツさんの声は氷のように冷たい。
『着いたよ!どこ!?』
「俺がどこにいようが関係あるの?」この捻くれ者めが。
『会うんでしょ!会ってよ!』アタシってヤツは・・・
テツさんから応答がない。アタシは駐車場に車を入れ、様子を伺った。
少しすると奥からテツさんの車がやってきた。
怒りに満ちた目でアタシを睨んでる。
『そっちに・・・行くよ』
返事はなく電話は切れた。
アタシは車を降りて、運転席の隣に立った。
もう、別れよう。
アタシの心は決まった。
これ以上、こんな喧嘩を繰り返したくない。
別れ話もたくさんしたし、その分だけやり直してきた。
でも、もうダメだ。
こんなにボロボロになってまで、アタシは不倫を続ける理由がない。
だから、もう終わりにしよう。楽になろう。
テツさんがウィンドウを開けた。
『テツ君、車から降りてもらえるかな』
アタシはお願いした。
「なんで?理由がない」
『お願いだから降りて』
「そんな義務ない」
『お願い』
「しつけーな!!」
テツさんが車から降りたら、土下座するつもりだった。
そして『別れてください』とお願いするつもりだった。
でもテツさんは車から降りることはなかった。
「寒いんだけど!!!」
テツさんが睨む。
アタシは断念して、助手席に乗り込んだ。
「で?」テツさんがタバコに火を点ける。
煙いんだよ、クソが。これはアタシの本心だった。
『ごめんなさい』アタシは下を向いたまま言った。
「知らねーよ謝ったって遅いんだよ」テツさんが吐き捨てる。
『ごめんなさい』それでも謝った。屈辱的だった。
「やめろ聞きたくない」
『だって、謝るしか・・・ないから。アタシが悪かったから・・・』
本心では、たかだか少し遅れたくらいでガタガタ言いやがってって思ってた。
でも今ではテツさんに対する思いやりが欠けてたのかなとも思う。
「謝ったって遅いんだよ。この落とし前どうつけてくれるんだよ!」
オトシマエ?何それ美味しいの?
どうして落とし前なの?アタシに指でも詰めろとでも言うのか?
『・・・・』さすがに意味が分からないのでうわべでも言い返すことができない。
「なぁ!」
『・・・』
「もしもしぃ!!!??」
『・・・(ダメだ・・・この人・・・)・・・』
「も!し!も!し!聞こえますか!!???」テツさんが怒鳴る。
『聞こえてます・・・』アタシはか細く返事をした。
返事をしないのが一番気に食わないらしい。
おかしい。いつもならとっくに涙が出てもいいはずなのに。
ちっとも涙が出ない。悲しくない。
悲しいと言っても、こんな鬼のようなテツさんが逆に可哀想に見えて悲しくなるんだけど、今回は何も感じなくなってしまった。
いよいよアタシも終わりだなと思った。
「あのさ!!どうしてそう黙るの!?俺がそういうの嫌いなの、知ってるよね!?どんだけ時間経ったと思ってるの!?もう1時間も経ってるんだよ!」テツさんは車の時計をバンバン叩いた。
「俺は忙しいの!!!」


『今回は・・・アタシが時間をま、守らなかったから・・・遅くなってしまったから・・・何も返す言葉がありません・・・。悪いのは全てアタシなんで・・・テツさんがもう会いたくないって言うなら会いませんし、終わりにするって言うのなら終わりにします』
「あぁ終わりだね俺達」テツさんが即答した。
そしておもむろに携帯を取り出し、アタシに押し付けた。
テツさんとアタシ専用の、アタシ名義の携帯だった。
よし!と内心思った。
『それはそれでかまいません・・・。全てアタシが悪いから・・・。でも、本当に申し訳ないと思ってることは分かってほしい・・・』
必死にアタシは心から謝罪をしてる演技をする。
本当は一刻も早くこの時間をやり過ごしたかった。
そのためならテツさんと別れるのも厭わなかった。
いや、むしろいつも心のどこかでは望んでいたことだった。
「いまさら遅いんだよ。もう帰れよ!」
『・・・』
「降りて」
『・・・』
「降りて!」
『・・・』
「黙ってるなら降りて!!!」
『ごめんなさい・・・』
「もういいよ!気持ちワリーんだよ!顔も見たくねーよ!!!」
ここら辺でやっと涙が出てきた。
下を向いたままなので涙がホロホロ零れ落ちる。
ただ、感情がついていかない。何も感じなかった。
アタシはただ防衛本能で涙を流してるに過ぎない。
「何で泣いてるの?」
『知らないよ』
「お願いだから泣かないで。泣く意味が分からないから」
まるで俺には涙なんて無意味だと言いたげだ。毎度だけど。
『泣きたくて泣いてるわけじゃないよ!涙腺が弱いの知ってるでしょ!』
アタシはかなり涙もろい。悲しみより怒りで涙がこみ上げるタイプだ。
「まい・・・」
『・・・』
「まい・・・」
『はい・・・』アタシはテツさんの薬指に納まっている、アタシと同じデザインのリングを呆然と眺めていた。
それを外してくれたらいいのに。
いつも怒りに任せて後先考えない行動をするテツさんだから、今の状態ならこの原っぱの駐車場に向かってリングを投げ捨ててもいいはず。
それを期待してた。
この人と同じリングを同じ指にはめてるなんて吐き気がした。
テツさんは後部座席からバッグを引っ張り出し、中をごそごそしてる。
次に押し付けられたのは、パイルのハンカチだった。
テツさんがいつも使ってるハンカチ。
うっすらとグリーンの配色がなされてるそれは、奥さんの趣味なのかなと見るたびに思ってたハンカチ。
テツさんはハンカチでアタシの涙をぬぐい、続けて鼻に押し付けた。
アタシは鼻水がダラダラと垂れていた。
ハンカチを受け取り、鼻を擦って、ハンカチをぼうっと見た。
そこには金魚のプリントがあった。
テツさんらしからぬデザインだった。やっぱり奥さんのチョイスなのかな。
「お願いだから泣かないで」テツさんは言った。
ここから少し空気が和らいできた気がする。
アタシはなぜか焦った。
「まい・・・俺はね、本当にまいに会いたかったから、時間に間に合うように急いできたんだよ。まい、人を思いやる気持ちを持って・・・」
え、なにそれなにこの空気。
仲直りのパターンの予感がする。
アタシはなるべくテツさんを見ないように、ハンカチで涙や鼻を拭ってた。
『ごめんなさい・・・』
ウソだろ・・・信じられない・・・。
今度こそ逃げられると思ったのに。
「まい、もう時間経っちゃったけど、行くなら準備しておいで・・・」
テツさんが優しい声をかけてくる。
え、行くって・・・どこに?
まさか・・・ホテル!?
冗談じゃない!身の危険を感じるほどだったのに、この人はまだアタシとホテルに行く気なのか。そしてアタシを抱く気なのか。
信じられなかった。でも逆らえなかった。
『じゃぁ・・・許してくれるの?』
「そうだよ・・・」テツさんの目は、哀れみ?
『どうして・・・?』本当にどうして?だ。
終わりにしたいのに。
「まいのことが好きだからだよ・・・」
や め て く れ 。
「だから、準備しておいで?」
『うん・・・』しおらしく自分の車に戻った。
手にはテツさんに押し付けられた携帯がある。
それをコンクリートに叩きつければ全てが終わる。
でも、できなかった。
荷物なんてもともとなかったから、すぐに戻った。
「いいの?」テツさんは言った。
『本当は・・・もう一つだけある』
「じゃ、持ってきなよ」
『アパートなの』
いいから、とテツさんが促したので、アパートに入った。
1秒でもテツさんを待たせるのが恐かったから、ブーツを脱がずに土足であがった。
ホテルに入ったらフリータイムが終わる11時までアパートには戻れない。
まずは大急ぎでカーテンを閉め、猫を抱きしめキスをした。
そして猫に早めの夕食をあげて、冷蔵庫からガトーショコラの入った箱を取り出した。
そしてまた大急ぎで車に戻った。
テツさんの視線が箱に行くのが分かる。
『テツさんのためにケーキ焼いたの・・・一緒に食べようと思って・・・』
テツさんの口元が一瞬、笑むのを見逃がさなかった。

『でも・・・いらない!』そしてアタシは窓からケーキを投げ捨てた。

なんてできるはずもなく、ケーキを膝に乗せたまま、車はゆっくりと発進した。
ウソだろ・・・ウソだと言ってくれよ・・・。
アパートは背中に消えてゆく。
なんか自分が現実から取り残されていくような気がした。
「お弁当は本当に捨てちゃったから、途中で買っていこうね」
もういつものテツさんに戻ったテツさんが恐ろしかった。

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