なきたい

くそ。くそ。くそ。
何が何でも相談してだ。
何が力になるだ。
結局アタシより仕事と立場を取ったじゃないか。
６年間頑張ってきたのにこの仕打ちたかよ。

大事になる前にとお局に相談したのがマズかった。
最初に相談した時は「困るし、あたしだって自分が可愛い。こんなことになるなら最初から社長にバーンと退職願を出せばよかったのに」なんて言われた。
ようし、やってやろうじゃねぇか。
今のアタシにはこうするしか前に進む方法がないんだ。

この間もお局とアタシの間にはいつもと変わらぬ日常が流れている。
冗談を言い合ったり、普通に仕事を教えてもらったり。
そりゃそうだ。アタシも彼女も社会人。
表に出すわけにはいかないからね。
アタシはお局の冗談に笑いをあわせながらも、見るときはいつも睨んでいたよ。
このやろう。

社長はとてもイイ人だ。
社長は正直みんなに嫌われてるけど、アタシは好きだ。
社長がみんなに厳しいのは「社長」という立場があるからこそで、嫌われてなんぼなんだよ。
自分は嫌われてもいいから会社を守る。こんなすばらしい人間がいるのにどうしてみんな分からないのだろう。
アタシは社長に気に入られてる。これは入社してから今までずっと変わらない。自覚もしている。
社長はアタシのことを娘のように思っているみたいだ。
社長はいつもアタシがくると冗談を言って笑わせようとする。
そんな笑顔を見せられるととても社長には打ち明けられそうになかった。
でも言わなければ。
アタシが台所で荒いものをしていた時、タイミングよく社長がきた。
『あの、社長。お話が・・・・』
「なんだ？デートの誘いか？なんちゃって」
なんて言うもんだから胸が痛んだ。けど
『あの、真面目なお話なんです』それだけ言うと
「そうかそうか。あっはっはー」と行ってしまった。
せっかくのチャンスだったのに。
アタシの意気地なし。度胸なし。根性なし。
本当に、辞められないのかもしれない。