流動のイイ女

妻子もちと別れ⇒いじめで会社を退職⇒脱無職⇒上司と不倫関係⇒約3年の不倫にピリオド⇒復縁、妊娠⇒未婚の母に

東日本地震⑥~命の水~

2011-04-13 | 東日本地震
遠回りをして、水を汲んだ。

そこで順番待ちを巡ってちょっとしたトラブルになったけれど、無事に汲めた。

道中は未だ雪が残っていたから、自分だけでは絶対にどうにもならなかった。

テツさん、本当にありがとう。

帰りに、またテツさんの実家に寄った。

築5年の綺麗な家だった。

あちらこちらにテツさんのお母さんがほどこしたインテリアがあって、良くも悪くも居心地が悪かった。

テツさんは頼んでもないのに部屋全てを案内してくれた。

4LDKはあったと思うその家は、夫婦2人が住むには広いと思う。

部屋の一つ一つに写真があって、ほとんどが遠方に住んでいる孫の写真だった。

中には、テツさんの写真もあった。

「妹の結婚式のときのだよ」

テツさんは言った。

テツさんはスーツ姿で微笑んでいる。

今よりも若いテツさんはかっこよかった。

今もかっこいいけどね。

写真には女の人が写っているのもあって、誰が誰だかわからない。

「妹だよ」

と言ってくれるものの、内心奥さんなんじゃないかと思ってしまった。

リビングに戻り、落ち着かないアタシのためにテツさんはおにぎりを作ってくれた。

「まいのために特別ね」

なんて言いながら筋子を2つ入れてくれた。

二人でおにぎりを食べながらも、居心地の悪さを感じた。

とても綺麗にされている部屋。

大きなテーブル、ソファ。

ここにテツさんの奥さんはきてたんだろうな。

あの玄関を開けて、あのトイレを使って。

お義母さん、誕生日おめでとうございます、なんて言って手作りケーキを持ってきたりして。

あぁ、心が潰れそうだった。

どうしてアタシはこんな所にいるんだろう。

ひどく、場違いな感じがした。

『ねぇ、テツさん』

ぎこちなく声をかける。

『アタシがここに座ってるの、どう思う?』

まさかテツさんの実家に入れるとは思っていなかった。

「そうだな・・・」

テツさんはアタシの目を見ながらつぶやいた。

「なんだかとっても不思議な感じ」

そうだよね。アタシもそう。

ただ、ただ本当に

居心地が悪い。

不倫相手であるアタシがテツさんではなくそのご両親の家にあがるだなんて、犯罪をおかしてる気分だった。

結局、少しテレビを見てテツさんの家を後にした。

帰り際、テツさんが汲んだ自分用のタンクを一つ譲ってくれた。

「俺は一人だし、これで十分だから」

テツさんには感謝してもしきれない。

どうしてそこまでしてくれるんだろう。

でも、ありがとう。本当にありがとう。

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