tarashi

テツさん、あなたの携帯はどうしてそう一日中鳴っているの？
アニー、ヨウコ、サツキ。女の子をとっかえひっかえ？
メシ友だと言っていた。女の子と食事をするのは楽しいと。
アタシは複雑になる。ヤキモチなんかじゃないんだからね。
ただ、相手の子も嫉妬してるみたいだアタシに。
特にアニー。誰といるの？女でしょなんて聞かないで。そんなんじゃないの。

ヨウコと食事をする約束をしたテツさん。楽しそうにネットでレストランを検索している。
『アタシ○○が好きなんですよー』一緒になって探すけど
「マイさんの好みは聞いてません」
悲しかった。
食事に行くならアタシは事務所を後にしなければならない。
もっとお話したかったけど、予定があるなら仕方ない。
一人先に帰る。

サツキがテツさんの元カノだと知ったのは、しばらく経ってからのことだった。
３人の名前は名前ではなく、特徴で呼んでいたのだが、ある日テツさんがポロっとサツキの名前を出してしまい、アタシにいじられるハメに。
それからというもの、テツさんは何かにつけてサツキサツキと話題に出すようになった。

サツキは本当に可愛い子で
サツキは他の子と違って気遣いができて
女の子たちは可愛いけど、サツキの方が可愛いです

そんなにサツキって言わないで。
ジェニーはどうしたの？付き合ってるんじゃないの？
別れたのにどうしてサツキと頻繁に連絡取ってるの？
どうしてそんなに嬉しそうな顔をするの？
前まではジェニーに嫉妬していたアタシだったけど、サツキの登場でジェニーに対しては劣等感を感じることはなくなっていた。
「いやぁ、本当に可愛いな、サツキは」
メールを見ながらテツさんがデレデレする。
『そんなに可愛いんですか？』
「あのね、本当にね、俺の彼女は可愛い子ばかりですよ」
それなら写メでも見せてくださいというアタシに半ば強引に押し切られる感じで、テツさんはサツキの写メを見せてくれた。
すごく・・・美人だった。
大塚愛を１００倍可愛くしたような容姿。
アタシより１つ上らしい。
まっすぐに見つめているカメラ目線。
その瞳はテツさんを映していたのだろう。
この女性が、テツさんと手をつなぎ、キスをし、身体を重ねていた。
テツさんの過去のノロケ話を聞くだけで胸が裂ける思いだった。
元カノということ、不倫だったこと、今でも連絡を取り合い食事に行っているという事実で、アタシは今でも関係があると思っていた。

「サツキに今彼氏はいませんが、女の子に男は紹介できてもサツキにだけは紹介できません。嫉妬してしまうんで」
誰にも取られたくない、という思いがよく伝わった。
テツさんはサツキは特別に可愛がっている。アタシは完全に蚊帳の外。
仕事の話をしていてもサツキ、仕事をしていてもサツキ。全てがサツキ。
自称女タラシは間違っていないようだ。

サツキに変な冗談を言っては怒られ、電話を切られ、本気で落ち込むテツさん。
これはもう恋をしている男そのものだった。
こんな日々が長く続いた。