鴨が行く ver.BLOG

鴨と師匠(ベルツノガエル似)と志ん鳥のヲタク全開趣味まみれな日々

最近読んだSF 2016/9/12

2016年09月12日 21時36分06秒 | ゲーム・コミック・SF
TwitterでSF関連ネタをやり取りさせていただいているフォロワーの「膕」さんからおススメいただいた短編集を読了。
いやー、面白かったです!膕さん、良い本をご紹介いただき、ありがとうございます!

タイムアウト/ディヴィッド・イーリイ、白須清美訳(河出文庫)

「SF」の一括りで紹介するには、ちょっと(良い意味で)難がある短編集。例えて言えばブラッドベリやシェクリィのような、ジャンル分け不能な「奇妙な話」の作家です。主に60年代から70年代に活躍した作家だそうで、あの時代の短編作家特有の軽妙で洒脱な筆運びが手練の風格を感じさせます。でも、作品は全く古びていないですね。

大森望氏がSFとして高く評価したと言う表題作「タイムアウト」、確かにこれは堂々たるSFです。奇想天外な舞台設定の中で、社会や歴史への批判や個人の信念の問題をユーモアたっぷりに描き出す手法は、正にSFという文学フォーマットが得意とするところ。「カウントダウン」も見事なSF、サスペンスフルな展開がたまりませんね。
こうしたSF的な作品も含めて、全作品に通底して流れるテーマは、普通の人間が我知らず抱える「狂気」。ありふれた日常、見慣れた風景を描写していきながら、ある時するりと物語が反転し、異次元の世界へと堕ちて行く、この怖さ。端正であっさりした筆致に騙されて、読者の方も意識しないままにあちらの世界に連行されてしまいます。読み終わった後も心のどこかにもやもやした何かが残る、後味の悪い作品ばかりです。でも、「おもしろいか」と問われると、間違いなくおもしろいです。半世紀近く前の作品とは思えないぐらい、針が振り切れまくったものもありますが(笑)SF者にもミステリ好きにも幻想文学好きにも、是非読んで欲しいですね。
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