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鴨と師匠(ベルツノガエル似)と志ん鳥のヲタク全開趣味まみれな日々

最近読んだSF 2024/6/16

2024年06月16日 17時24分24秒 | ゲーム・コミック・SF
なんだかもぅ、鴨が紹介するまでもなかろうと思うのですが、読了したのでレビューします!

三体/劉慈欣、大森望・光吉さくら・ワン チャイ・立原透耶訳(ハヤカワ文庫SF)

あらすじは、鴨が概要を紹介するまでもないと思いますので、省略。
鴨はこちらの原作を読む前に、テンセント版ドラマを30話まで鑑賞済みです。SF者としてこの作品の世界的な反響の大きさと大体の内容は事前に理解しており、ある程度の基礎知識を持った状態でテンセント版ドラマを鑑賞し、その上で原作を読んだ感想であること、まずはご了承ください。

思った以上に、ゴリゴリ正統派のハードSFでした。
しかし、それ以上に印象に残ったのは、一人の女性の絶望。狂気と紙一重の、絶望。

テンセント版ドラマでの描写も十分「ハードSF」と呼べる水準ではあります。が、科学的な裏付けをドラマ中では詳細に説明しないので(正直、かなりストーリー展開が冗長でしたので、あえて説明をカットしてイメージで伝える戦略を取ったのだろうとは思います)、SFの重要な要素である「科学的にうまく嘘をつく」その嘘のつき方の上手さがドラマだけではよく理解できず、原作を読んで「なるほど、こういうことだったのか・・・!」と膝を打つこと多々。”智子”の開発過程は、ドラマ版では割愛されていますが、これ映像化したら最高にエキサイティングだろうな〜と思ってしまう、SFとして「絵になる」描写が原作には満載です。

と、SFとしてのレベルの高さはもちろんのこと、やはりこの作品の特徴として挙げるべきは、中国の近現代史と容赦なく密接に絡み合わせた、登場人物の内面描写。
冒頭の文化大革命の激しい描写は、これよく中国で出版できたな、と思うレベル(中国出版バージョンは、順番が変えられているとのこと)。この冒頭シーンと、中盤の印象的なシーン・・・社会復帰した葉文潔が、父を撲殺した元紅衛兵の3人を呼び出して謝罪を求めるが、3人は謝罪する余裕もないぐらい貧困に喘ぐ「ただの人」だという事実に直面するシーン。どちらもドラマ版では描かれていません(というか、「描けなかった」というのが本当のところでしょう)が、このシーンを読んで、鴨は初めて、葉文潔の真の思い、人類社会に対する底なしの絶望と破壊による昇華への思いを理解できたような気がしました。
自分が始めた活動が、どんどん当初の思いとは異なる方向に暴走していく現実を目の当たりにしても、葉文潔が止めようとしなかったその無力感も、何となくわかるような気がします。

さて、そんな心に染みる第1作ではあるのですが、これは長大な物語の第一部に過ぎず、すべてのきっかけを作った葉文潔は、実質的にこの作品で姿を消します。
第二部以降は、さらに直球王道どストライクの侵略ハードSFになることは、火を見るよりも明らか。SFを初めて読んだ子供の頃に戻って、ワクワクと読み進めたいと思います!

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