波士敦謾録

岩倉使節団ヨリ百三十余年ヲ経テ

野放図電話盗聴を暴露した James Risen 記者による新刊書 State of War

2006-01-01 18:31:45 | 雑感

 昨日の記入で触れた現米政権による野放図の電話盗聴を暴露したのは二週間前の12月15日(木曜日)付のNY Timesの以下の記事だった(同記事は特別扱いのためか,一週間の無料閲覧期間を経過しているにもかかわらず,1月2日現在でも閲覧可能.『訂正』当初引用していた同記者達による12月18日付の記事は当該元記事の続報):
 
 Bush Secretly Lifted Some Limits on Spying in U.S. After 9/11,
 Officials Say by James Risen and Eric Lichtblau.
 http://www.nytimes.com/2005/12/15/politics/15cnd-program.html

なぜ今頃になって同紙が昨年米政権に妥協して塩漬けにした筈の記事を慌てて印刷したのか,様々な観測が流れているが,今日網路上得た情報によると,当記事の著者の一人であるRisen記者が元旦振替休日明けの3日に以下の単行書を出版するため,NY Times紙としては止むを得ず,お蔵入り状態の同記事を出したというものだ:
 
 State of War : The Secret History of the C.I.A. and the Bush Administration by James Risen. Free Press

因みに,今日のNYTの記事では野放図な電話盗聴について一昨年の2004年に前司法省幹部が反対していたことが明らかにされている.
 米国南部や中西部等の保守系の連中には,1960年代の旧奴隷州における非白人差別の解消において連邦政府が果たした役割について未だに反感を抱いていて,連邦政府は個人の自由を侵害している悪の巣窟という感じで日々文句を垂れている者が多い.今回のような「国家安全保障」を大義名分した野放図な電話盗聴を彼らはどのように見ているのだろうか.一貫性の欠けた御都合保守の典型的な,「国家安全保障」の中身をろくに確認せず,共和党政権のやることは何でも可というで黙認するのだろうか.民主党政権ならば,間違いなく喚き声を上げて,連邦政府=悪の権化の等式で攻撃し,大統領の弾劾を叫んでいるに違いない.
 現米政権を現在取り仕切っている連中の多くは,違法情報収集等で辞任においこまれた故Nixon元大統領を引き継いだFord政権の中枢にいた連中でもある.Nixon辞任後制定された各種の改革は結局30年も持たず,改革以前の当事者によって反故にされ30年前に回帰したようだ.実定法に優先するとされる「国家安全保障」という大義名分が醸し出す「魔力」に改めて恐れ入らざるを得ない.

 [1月2日に一部訂正および加筆]
© 2006 Ichinoi Yoshinori. All rights reserved. [Last Update:1/2/2006/ EST]