
(写真)「赤十字」の各種バリエーション。なお、下段右は参考として掲げた日本国旗で、赤十字関係の標章ではありません。詳細はこちらを参照下さい。
5月8日は「世界赤十字の日」(ちなみに5月は「赤十字運動月間」)だそうですが、これを前に、日本赤十字社(名誉総裁:皇后陛下、社長:近衛忠輝氏)は2日、厚生労働省の記者クラブにおいて、「赤十字の誤用防止」に関する説明会を開催したそうです。
以前記事にもしたとおり、そもそも赤十字は、武力紛争の下で発生した死傷者を国際人道法に基づき救護する際に、一般の軍事活動と識別するために使用する標章であり、赤十字、赤新月(一部のイスラム諸国にて使用されているもの)及び赤結晶(赤菱形。日本赤十字社の呼称は「レッドクリスタル」。2007年に新に追加された国際標章)は、1949年のジュネーブ4条約に基づいて国際的に保護され、赤十字関係機関と軍隊しか使用できないこととなっています。実際にも、昭和二十二年法律第百五十九号(赤十字の標章及び名称等の使用の制限に関する法律)第1条は「白地に赤十字、赤新月若しくは赤のライオン及び太陽の標章若しくは赤十字、ジュネーブ十字、赤新月若しくは赤のライオン及び太陽の名称又はこれらに類似する記章若しくは名称は、みだりにこれを用いてはならない。」(「赤のライオン及び太陽」=赤獅子太陽とは、かつてイランの赤新月社が使用していた標章)とし、第4条は「第一条の規定に違反した者は、六月以下の懲役又は三十万円以下の罰金に処する。」と規定しています(ちなみにこの法律は、「昭和二十二年法律第百五十九号」というのが正式名称であり、「赤十字の標章及び名称等の使用の制限に関する法律」は正式の題名ではありません)。もっとも、同法第2条は、憲法第9条と防衛省・自衛隊の関係に配慮したのか、「日本赤十字社は、前条の規定にかかわらず、白地に赤十字の標章及び赤十字の名称を用いることができる。」としているのみで、本来は一番よく使うであろう自衛隊についての規定がありませんが・・・。
いずれにせよ、この赤十字、あまりにも有名になったため、赤十字社以外にも、地図や交通標識で「病院」「薬局」の意味に使用されることが多く、一般にはこれが特別に保護された、武力紛争用の標章であるとはほとんど知られていないのが実態。日本赤十字社の説明では、これ以外にも、薬箱や瓶に使用してはいけないのはもとより、類似のマークも禁止されているとか。日本赤十字社は、こうした誤用を発見する度に注意を申し入れているそうです。

(写真)新たに採用された「赤結晶」
ところで、昭和二十二年法律第百五十九号では、保護対象を「赤十字、ジュネーブ十字、赤新月若しくは赤のライオン及び太陽」としていますが、前述したとおり、昨年から新たに「赤結晶」が国際保護標章になっているにも関わらず、今のところこの昭和二十二年法律第百五十九号が改正される様子がありません。衆参「ねじれ国会」が続いて法律案が通りにくくなっているのかもしれませんが、早急な法改正が望まれます。