Casa Galarina

映画についてのあれこれを書き殴り。映画を見れば見るほど、見ていない映画が多いことに愕然とする。

華麗なる一族

2007-09-18 | 日本映画(か行)
★★★★ 1974年/日本 監督/山本薩夫

「どいつもこいつもタヌキだぜ」


211分という長尺の映画。そこにうずめくのは人間の欲望と権力。しかし、この映画の主役は万俵大介じゃない。この映画の真の主役は「金融再編という時代の波」そのもの。それはラストの結末を見ればわかる。ドラマはどんな結末になるんだろう。

さて、本作に出てくる登場人物は、万俵鉄平と三雲頭取を除き、どいつもこいつもタヌキ親父ばっかり!まさに化かし合い合戦。こういうオヤジどもが当時の日本の金融や政治を握っていたんだなーと納得してしまうリアリティがある。こいつらまともに戦って勝てる相手じゃないぞ。

佐分利信、西村晃、小沢栄太郎、田宮二郎、金田竜之介などなど、どのメンツも悪人ぞろい。日本人の顔って、昔に比べるとずいぶんこざっぱりしてきたなあ、とつくづく思う。みんな腹に一物もった顔ばっかりなんだもん。で、万俵大介を演じる佐分利信なんだけど、この人そんなに巧い役者じゃないですよ。でも、何が大介としてぴったり来るかって言うと、まさに「何考えてるかわかんないタヌキ」そのものであるところ。

タヌキ、タヌキってしつこくて申し訳ないが、「人格の二面性」とか「つかみどころのなさ」って今の政治家もそう。こういうタヌキづらした俳優って、昨今なかなか探せなくなったな、と思うわけ。西田敏行にしたって、「ハマちゃん」のイメージがあるわけだし。田宮二郎と仲村トオルなんて一目瞭然。

さて、長い映画の割には、大介と鉄平という父と子の相克に関しては深みがないというのが正直な感想。第一鉄平が自分の出生の秘密について父親に問い糾すシーンも非常に唐突なのだ。これは、金融再編問題自体が非常に複雑でこちらを追うことに多くの時間を割いているためと思われる。そういう意味でもこの映画の主役が「時代そのもの」であることがわかる。

さすがに妻と愛人を堂々と同じ屋敷に住まわせるタヌキは減っただろうが、権力欲しさに化かし合ってるタヌキはいまだに多い。永田町の料亭でもこんなこと未だにやっとるんだろうな。まことに人間の業とは深いもんです。目先の欲にかられたオヤジどもだけれども、日本の高度経済成長を支えたことも確か。しかし、この変わらぬ体質が多大なツケを今の日本にもたらしていることも確か。この時代を今振り返ってみて、日本はどんなレールの上を走ってきたのか、と言うことを知るのも悪くない。

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