Casa Galarina

映画についてのあれこれを書き殴り。映画を見れば見るほど、見ていない映画が多いことに愕然とする。

模倣犯

2011-06-25 | 日本映画(ま行)
★★★☆ 2002年/日本 監督/森田芳光

「無茶苦茶したれ」
 

当たり外れが激しいゆえに、常にチェックして見守ってしまう森田作品。

原作を読んで映画館で見て、スカパーで再観賞。ずいぶん評判の悪い作品なんですけど、私はそれほどでもないんですね。大ベストセラー小説のシリアルキラー役を大して演技経験もないSMAPの中居正宏が演じると決まった時点で森田監督は大胆な切り替えと切り捨てを行っていると思います。もし、この犯人役に堤真一がキャスティングされていたらどうでしょう。堺雅人だったら?きっと、作品の作り方根本から違うでしょう。中居正宏主演と決まったところで、彼の演技不足に目が行かないよう、作品自体のテイストを通俗的、大衆的にして、うまく逃げていると思います。

しかも中居正宏の登場は始まってから30分後。出演時間が短いのは、彼の力量を推し量ってのことだと思いますし、沖縄の空の下をドライブして現れるその姿はスターの登場にふさわしいものです。

個人的には、非常に重層的である宮部作品は映像向きではないと感じます。「理由」もかなりイマイチでしたから。2時間の尺では無理ですよね。本作もかなり厚めの3部作。ストーリーとしては犯人と豆腐屋店主の交流に絞らざるを得ない。相手役が山崎努でずいぶん助かってます。

夫を殺された木村佳乃に編集長が「書けるネタができたじゃない」と言い、「編集長、それは言い過ぎ」とツッコむシーンや、悪評高い女性たちの拉致シーン、中居正宏のラストシーンなどなど。これらのシーンは敢えて不謹慎を狙っているんだと思う。もちろん、その不謹慎を許せるか許せないかが本作の鑑賞の分かれどころなんでしょう。私には森田監督のやけくそにも見えなくもないけど。

2チャンネルなどを想像させるキーボードの打ち込み文字が随所に現れるのですが、この無責任な書き込みの不快感は非常によく出ています。森田監督は深津絵里主演の「ハル」という作品で、打ち込み文字をスクリーンに映す手法を映画で初めて取り入れたはず。「誰もわかってくれない」でも出てきましたけど、あちらよりも露悪的ですよね。先の狙った不謹慎も含め、大衆に敢えてバカ野郎と挑発しているようで、なぜかこの作品は嫌いになれないんです。主演を中居なんかにするなよ、バカ野郎。この原作が2時間に収まるわけないだろう、バカ野郎。そんな森田監督を許したくなるのです。

一発出れば逆転という場面で前阪神タイガース監督岡田彰布がピッチャー久保田にささやいた「無茶苦茶したれ」の後、久保田が剛速球で中日打線を抑えた。あんな開き直りみたいに見える作品です。


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