Casa Galarina

映画についてのあれこれを書き殴り。映画を見れば見るほど、見ていない映画が多いことに愕然とする。

クライマーズ・ハイ

2008-10-08 | TVドラマ(日本)
★★★★☆ 2005年/NHK
「原作に忠実で面白い、ということに価値がある」


これから、映画版を見に行こうと言う方に水を差すわけではないのですが、NHKによるテレビ版は、原作のクオリティをそのまま保ったドラマと言えます。この作品のおかげでNHKのドラマって面白いじゃないかと思い直し、「ハゲタカ」にもハマりました。

私は横山秀夫の作品は、ほとんど読んでいるのですけど、警察物は今イチなんですよね。やたらと暗いし、署内の人間関係の駆け引きがメインで、警察業界をあまり知らない人間としては、興味をそそられるものがあまりなくて。でも、この「クライマーズ・ハイ」は、新聞記者の日常を知らない私のような人間でも、この未曾有の事件の中で、様々な思惑が行き来する緊迫感が最後まで持続して、読後の満足感がすごく高かった。読み終わって、はぁはぁと肩で息をするような感じでした。

で、このドラマ版は原作に忠実に作られています。ここがポイント。横山秀夫ってね、案外原作通りに映像化するとつまらないものになることが多い。その最たる物が「半落ち」です。これは、本当に失敗でした。横山作品は登場人物たちの心理合戦が醍醐味の一つで、「これ」という具体的な映像で説明できるものでもありません。今アイツは何を考えているのか。なぜアイツはこんなことをさせるのか。目の前の人物の裏側を想像させるような作りにしないと、横山作品の本当の面白さは伝わらない。そこで、大切なのは一体何だろう、と考えたのですが、まず第一に下手なエンタメ風にしないってことです。そして、演出の粘り強さだと思います。キレイに撮るとか、テンポ良く収めるということよりも、ねちねちと人物の懐に入り込むような粘り強い演出が焦燥感をあぶり出すんではないでしょうか。

ドラマは前後編で、150分。映画館で150分と言えば、なかなか長編で疲れますけど、これは一気に見てしまいます。今ならレンタルできますので、前後編セットで借りてぜひどうぞ。

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