監督 ギレルモ・デル・トロ
キャスト サリー・ホーキンス、マイケル・シャノン、リチャード・ジェンキンス、オクタヴィア・スペンサー、ダグ・ジョーンズ、マイケル・スタールバーグ、ローレン・リー・スミス、ニック・サーシー
2017年 アメリカ
ジャンル:ドラマ、ファンタジー
【あらすじ】
1962年、冷戦下のアメリカ。政府の極秘研究所で清掃員として働く女性イライザは、研究所内に密かに運び込まれた不思議な生き物を目撃する。イライザはアマゾンで神のように崇拝されていたという“彼”にすっかり心を奪われ、こっそり会いに行くように。幼少期のトラウマで声が出せないイライザだったが、“彼”とのコミュニケーションに言葉は不要で、2人は少しずつ心を通わせていく。そんな矢先、イライザは“彼”が実験の犠牲になることを知る。
【感想】
アカデミー賞獲ってしまったせいで普段この類の映画観ない人が大挙して押し寄せて「俺の趣味には合わない」とか言ってるのが目に見える。そういう意味ではそっとして欲しかったかもしれない。このタイプの作品がアカデミー賞受賞するのは珍しいですね。逆に製作本数が少ないミュージカルあたりは大甘で中身なくても簡単にノミネートしてしまうのに。ついに時代が変わったのか?あるいは他にろくな作品がなかったのか?
「美女と野獣」が苦手だと口にしているデル・トロにファンタジーラブストーリー作らせたらこうなるという面ではとても納得できる作品でした。でも本当は美女と野獣好きなんじゃないの?とも言いたくなったり。
人魚姫の物語をベースにエロやグロを押し込んで怪奇に仕上がってるけど、基本的にはしっかり筋の通った映画なので満足できました。ヒロインがおばさんで相手はグロテスクな半魚人。だからこそ美男美女が演じる場合と比べて純愛映画として訴えるものはあったと思います。特に人間の残酷さや美しさの部分が生々しく伝わってくる。最初は興行とか考えずにやりたい放題だなと呆れてましたが、最後の方にはさすがに可愛く見えるとは言い難いですが、それなりに感情移入してました。
その他、登場人物は悪役を含め、全員上から抑圧されながらも必死に生きているのが特徴的で人間臭さを感じさせてくれた。そのため悪役でもどこか憎めない。あの場面で毛が生えてきて大喜びしてるとか、普通の映画じゃあり得ないけど、リアルだとそうなのかもと笑ってしまった。人種差別やLGBTなどテーマも作中に描かれていたが、それほど主張は強くなく本シナリオに集中できる程度でした。ファンタジーの中にリアルを多数入れることで引き締まっていた。
同監督だけにラストが心配でヒヤヒヤさせたれましたが、一応は納得のいく結末にしてくれたので安心しました。これで人魚になったんだなと。野獣が元の王子の姿に戻ったのが不服だった監督からして水はどんな形にも姿を変えられるが姿は違えどやっていけるという意味なのだろう。
デル・トロ 監督は私が最低点をつけた思わず馬鹿野郎と叫びたくなったスプライスという映画の製作に関わっているのですが、人間と化け物がやりまくる生理的嫌悪が限界に達したこの作品が後になって役に立ったんですね。最低作品が最高の作品に化けたと思うと感慨深い。
お薦め度:★★★★★★★★★☆
シェイプ・オブ・ウォーター