映画を見ながら株式投資

今の時代に起きていることを正しく認識し、自分なりの先見の明を持つ。

パイレーツ・オブ・カリビアン/最後の海賊

2017-07-07 08:56:11 | ★★★★★★★★☆☆

監督 ヨアヒム・ローニング、エスペン・サンドベリ
キャスト ジョニー・デップ、ハビエル・バルデム、ブレントン・スウェイツ、カヤ・スコデラーリオ、ジェフリー・ラッシュ、オーランド・ブルーム、キーラ・ナイトレイ
2017年 アメリカ
ジャンル:アクション、コメディ、シリーズ

【あらすじ】
ヘンリーは、過去に伝説の海賊ジャック・スパロウと旅をした父のウィル・ターナーの呪われた運命を、何とかしたいと考えていた。そこで海にまつわる伝説を調査したところ、呪いを解くには伝説の秘宝“ポセイドンの槍”が必要なことがわかる。その後、英国軍の水兵になったヘンリーが船に乗っていたところ、“海の死神”サラザールの襲撃に遭い……。

【感想】
個人的に後半につれ盛り上がってシリーズの中で一番面白かったです。契約してる映画チャンネルで放送するまで待てばいいやと思っていましたが、映画館で観ることができて良かったと断言したい。

ベースとなる海賊アドベンチャーに宝さがしのミステリー要素やロマンス要素などがバランスよく散りばめられていてエンタメ作品として見ごたえのある映画でした。鑑賞後に十分な満足感を味わえました。

過去作には「次回作に続く」みたいな中途半端な終わり方をしていたものも見受けられましたが、本作は綺麗に終わっているもの高評価したいです。エンドロールで続きを示唆する部分を入れたのは正解でした。終わったからと言ってすぐに席を立たずに見逃さないようにしたい。

個人的にファンタジーやSF的な部分について幽霊は許せるのですが、瓶の中の船が巨大化して本物の船になるというのは許容範囲を逸脱してしまったように思いました。これだけはもう少し上手くやってほしかった所です。リアルとファンタジーの境界線の部分にやや苦言を呈したくなる部分があったと思います。

本シリーズの一番の魅力はジョニー・デップのコミカルな演技であるのですが、同時にこのジャック・スパロウの癖のあるキャラクターは人によって好き嫌いを選びます。しかしここまでシリーズを鑑賞してきた人ならこの部分は受け入れられた人であるはずなので問題にはならないと思います。ジョニー・デップは良かった。衰えはないです。シリーズ長いですが、メイクの技術もあってか老けたようには見えなかったです。

これまでシリーズを観てきた人であれば文句なしにお薦めできます。

お薦め度:★★★★★★★★☆☆

パイレーツ・オブ・カリビアン/最後の海賊


バルカン超特急

2016-06-22 21:50:55 | ★★★★★★★★☆☆
監督 アルフレッド・ヒッチコック
キャスト マーガレット・ロックウッド、マイケル・レッドグレーヴ、ポール・ルーカス、メイ・ウィッティ、セシル・パーカー、アルフレッド・ヒッチコック
1938年 イギリス
ジャンル サスペンス、ミステリー

【あらすじ】
バルカン小国からロンドンへ向かう特急列車の中、アメリカの富豪の娘アイリスは、同室となった温和な老婦人ミス・フロイと仲良くなる。しかし、食堂車から戻り、深い眠りの後に目覚めると、ミス・フロイの姿は忽然と消えていた。ほかの乗客に聞いても、そんな婦人は最初から乗っていないと言われてしまう。アイリスは消えた婦人の行方を追うが…。

【感想】
立派な名作なのですが、「シベリア超特急」のせいで思わず、何度か笑ってしまった。間違いなく本作よりもシベ超の方が有名ですよね。不幸としか言いようがない・・・・。

列車内の密室を舞台に消えた老婦人を捜すヒロインと青年が、スパイ合戦に巻き込まれてゆく。

ヒッチコック定番の巻き込まれ型サスペンス。一緒に食事までした老婦人が電車で寝ている間に消えてしまっており、乗客に問い合わせても誰も存在すら知らないと言われてしまう奇妙な現象からぐっと引き込まれる。その後、パズルのピースを1つずつはめるように徐々に真相が明らかにされるまでの畳みかけるような展開も躍動感があり、手に汗握りながら鑑賞できました。緊張感一辺倒ではなく途中にユーモアを交えたシーンがいくつもあって挿入のタイミングも適切だったためいいアクセントになってました。いくつもの素材を上手く絡めて料理したなという印象を受けました。ミステリーのお手本。

ただ同時に明確な欠点もいくつか存在します。列車に乗る前日の描写が物語の重要度からすると長くモタモタしている。またいなくなった女性を誰も覚えていないというシチュエーションからして当然なのですが、トリックが強引である。ラストの銃撃戦がいきなり飛躍しすぎ等。これらは人によっては気になるかもしれません。自分はそれ以外の魅力で十分に作品を楽しむことができたので大きな問題には思わなかったですが・・・。

某映画サイト見ると結構、上記に関して文句を言ってる人が多いようですが、こういう昔の映画は細かいことは気にせずに素直に楽んだよういいと思います。許してあげましょう。当時の時代背景を考えたらこの事件は他人事とは思えない怖さがあるのではなかろうか。

お薦め度:★★★★★★★★☆☆

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キャンディマン

2016-03-15 20:32:46 | ★★★★★★★★☆☆

監督 バーナード・ローズ
キャスト ヴァージニア・マドセン、トニー・トッド、ザンダー・バークレイ、ケイシー・レモンズ、テッド・デミ、キャロリン・ロウリー、バーナード・ローズ
1992年 アメリカ
ジャンル:ホラー、サスペンス

【あらすじ】
黒人居住区の都市伝説を研究中の大学院生ヘレンは、鏡の前でその名を5回唱えると現れるという殺人鬼“キャンディマン”の言い伝えを知る。鏡にその名を唱えてみるヘレン。やがて彼が奴隷の息子で、白人の地主の娘と恋に落ち妊娠させたため、惨殺されたことが判明する。後日、不良グループに襲われたヘレンは、彼らがキャンディマンの名を語って暴れているのではないかと推測。そんな彼女の前に本物のキャンディマンが姿を現す…。

【感想】
きったない映画だけどマニアックでカルト的な人気があるのも納得の内容。世界観がいい。

鏡に向かって5回「キャンディマン」と発すると殺人鬼が現れるという都市伝説を描く。こういう都市伝説って全世界にあるんですね。

とにかく汚く、残忍な映像が飛びこんできます。嫌悪感を抱かせるギミックが沢山用意されており、どれも秀逸でした。中でも黒人に襲われたシーンでのトイレの汚いこと。食欲が失せるような光景でした。ここまで徹底的にやってくれると嫌悪感ですら許せてしまいます。

更にもうひとつの魅力としてヴァージニア・マドセンの次第に追い詰められてく迫力ある演技が素晴らしかった。文字通り体を張っています。言っちゃ悪いがこんな映画でなければアカデミー賞取れてたんじゃないかと思うほどでした。おかげでサイコサスペンスに仕上がっているのでただのホラー映画とは違います。
一方でタイトルにもなってるキャンディマンの方はかなりB級感が出ており微妙でした。もう少し不気味さを出して欲しかった所。しかし、結果としてこの微妙さが、前述のシリアスな演技と組み合わさって独特の味を作り出していたように感じました。

もちろん不快さを押し出した映画なんでかなり人を選びます。絶対に受け付けないという人も一定数いるでしょう。鑑賞するにあたっては気を付けた方がいいです。言い忘れたが地味にBGMもよかった。

続編・リメイク出ているらしいけど、嫌な予感しかしない。ここで辞めておくのが正解っぽい。

お薦め度:★★★★★★★★☆☆

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ワイルドバンチ

2016-03-11 21:14:22 | ★★★★★★★★☆☆

監督 サム・ペキンパー
キャスト ウィリアム・ホールデン、アーネスト・ボーグナイン、ロバート・ライアン、エドモンド・オブライエン、ウォーレン・オーツ、ベン・ジョンソン、ハイメイ・サンチェス、L・Q・ジョーンズ、アルバート・デッカー、ストローザー・マーティン、エミリオ・フェルナンデス、ボー・ホプキンス
1969年 アメリカ
ジャンル:ウエスタン

【あらすじ】
第一次大戦直前のテキサス。パイクをリーダーとする5人の強盗団は鉄道駅舎を襲撃するが、賞金稼ぎたちに待ち伏せされ、銃撃戦となってしまう。からくも脱出したパイクたちだったが、かつての仲間ソーントンを頭とする仮出獄者たちの一味に追われる羽目に。強盗に失敗したパイクたちは、マパッチ将軍の依頼で米軍輸送列車を急襲し、銃器や弾薬を強奪するが…。

【感想】
銃撃戦でスローモーション多用する映画は本作が由来であるとはじめて知る。それだけで存在価値は高い。

ヒーロー性皆無の汚らしい盗賊たちを主人公にしてもきちんと映画として成立させてしまうサム・ペキンパー監督の力量を思い知りました。最初の鉄道の襲撃シーンでは絶対にこいつらに感情移入などできないと思っていたら最後は応援していました。

第一印象としてとにかく登場人物達が汚いですね。しばらく風呂入らずに撮影したんじゃないかと疑うほどに。みんな人間臭くて個性的でした。やはり名作と呼ばれる映画は主役から脇役までしっかりとキャラが立っていると実感します。

銃撃戦についてはスローモーションの多用も当然ですが、その場に女子供が沢山いるのがいるのが目を引きます。ラスト女に撃たれてしまうのも含め、背景にベトナム戦争があったのではないかとの説があるそうです。それにしても普通の西部劇とは一味違いますね。個人的には西部劇のお約束のようなものを完全に無視した作りだと感じました。激しい銃撃戦の末の虚しい結末も無駄のない完璧な流れでした。

サム・ペキンパー渾身の一作。これは観ないと損をする。

お薦め度:★★★★★★★★☆☆

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バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)

2016-03-01 21:15:05 | ★★★★★★★★☆☆

監督 アレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ
キャスト マイケル・キートン、ザック・ガリフィナーキス、エドワード・ノートン、アンドレア・ライズブロー、エイミー・ライアン、エマ・ストーン、ナオミ・ワッツ、リンゼイ・ダンカン、クラーク・ミドルトン
2014年 アメリカ、カナダ
ジャンル:ドラマ、コメディ

【あらすじ】
今も世界中で愛されるスーパーヒーロー、バードマン。だが映画シリーズ終了から20年、バードマン役でスターになったリーガンはその後、仕事も私生活にも恵まれず失意の日々を送っていた。彼はレイモンド・カーヴァーの「愛について語るときに我々の語ること」を自ら脚色し、演出・主演も兼ねてブロードウェイの舞台で再起することを目論む。だが起用した実力派俳優マイクばかりが注目され、リーガンは精神的に追い込まれてゆく。

【感想】
出来はいいけど、面白くないという感想が多いみたいですけど、一度騙されたと思って観てくれればと思います。まあ確かに面白くはないでしょう。実際に7割は面白くないと感じるのではないかと思います。

なので玄人の向けの映画であることは否定しないが、完成された映画で自分には面白さが理解できました。見事にツボに入りました。やはりイニャリトゥ監督は実力者である。「バベル 」はクソ映画だったが見直しました。

往年のスーパーヒーロー役で映画スターだった男の過去の栄光からくる葛藤が全面的に描かれています。本来これをストレートに表現すると重苦しくなってしまうのでブラックコメディ風に仕上げている。役者の落ちぶれ具合を描いた作品はいくつもあります。「その男ヴァン・ダム」であるとか「レスラー」も類似作品でしょう。その中でも本作は非常に鋭く切り込んでいるという印象を受けました。

過去の栄光を引きずっていることを表現する手段として主人公が超能力を使っているシーンが何度も登場する。(もちろん実際には超能力など使えない。)自分が演じたキャラ「バードマン」が話しかけてくるのである。この超能力を使うシーンは控えめなのでいいアクセントになっていたと思います。

最初の30分くらいは登場人物間でやたらと攻撃的な会話が繰り広げられます。私はこの会話が楽しかったですね。私生活だと絶対にしないような乱暴な会話なので言ってみたいと思ってしまいました。確かにこの30分に及ぶ会話は大した内容ではなく、後半になって効いてくるものなのでここで退屈だと思ってしまう人が多いのかもしれません。必要なものであることは間違いないでしょう。

またドラムの音が印象的で主人公の心理状態を上手に表現していました。ラストの実際に演奏している場面につなげるシーンはあまり重要度は高くなくてもセンスの良さを感じました。

無知がもたらす予期せぬ奇跡 (The Unexpected Virtue of Ignorance)というのは、ネットを使わない時代遅れの主人公が動画サイトから人気が拡散していくことからはじまり、ラストでも意図しないところから全米中の注目を浴びる存在になります。批判的だった評論家も手のひら返しをしてしまう。葛藤や劣等感だらけででも、その世界に残って活動し続けていれば、もしかしたら運よく成功してしまうこともあるかもしれないというメッセージでしょうか。

ラストで過去の栄光への葛藤から解放され「バードマン」逃げ出してしまった主人公がビルから飛び降りたらどうなってしまうのか?そこで話は終わるので余韻としてもスッキリはしませんが、娘もビルに座って飛び降りようとするシーンがあるあたり上手だなと感じます。

役者ではエドワード・ノートンがキレていました。やっぱりこういう作品が合いますね。ここ数年手を抜いているんじゃないかと思っていました。

主人公の内面を鋭く、えぐるように表現することにこだわった作品ということで高く評価したい。

お薦め度:★★★★★★★★☆☆

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恐怖の報酬

2016-02-10 21:34:30 | ★★★★★★★★☆☆

監督 アンリ=ジョルジュ・クルーゾー
キャスト イヴ・モンタン、シャルル・ヴァネル、ヴェラ・クルーゾー、ペーター・ヴァン・アイク、フォルコ・ルリ、ヨー・デスト
1953年 フランス
ジャンル:アクション、サスペンス

【あらすじ】
メキシコにほど近い中米の町、ラス・ピエドラス。マリオは食い詰め者や札付きたちの集まるこの町で、連日の暑さに喘ぎながら、うだつの上がらない日々を過ごしていた。そんなある日、町から500キロ離れた山上の油田で大火災が発生、犠牲者が続出する。石油会社は一刻も早く鎮火させるため、ニトログリセリンの使用を決断。そこでニトロを運搬する勇者を賞金付きで募集し、マリオがメンバーの1人に選出される。

【感想】
ランダムに選択したモノクロ映画で決して見てはいけないものを見てしまった。

マリオとルイージというどこかで聞いたことのある人物が出てきたのだが、「ただの偶然なのだろうか?」と当然、思うわけである。しかも片方は髭を生やして小太りで帽子かぶったおっさんとか・・・。

wikiを見たところ、この映画から引用しているのではないかという説があるそうですが、定かではないとのこと。はっきり言って引用どころか完全なパクリですよ。任天堂さん。失望しました。

この話題はここまでにして内容に入る。カンヌ映画祭グランプリという肩書の映画が個人的に面白かったことがほとんどないのですが、本作は数少ない例外で手に汗握りました。

一切の予備知識なしに鑑賞したのですが、最初の40分近くまで何がテーマの映画なのかさっぱり理解できませんでした。前ふりが長すぎ。ただここを超えてしまえばそこからは一気に面白くなりました。

一攫千金を夢見る4人の男たちがドラックでニトログリセリンを目的地まで運ぶという無謀な任務に挑む。これだけのシンプルな話だがわかりやすく非常に面白い。4人の役者の演技に力強さがあって作品を盛り上げていました。中でもオイルまみれになった道路をトラックで走り抜ける場面は迫力満点。モノクロ映像の中にオイルで真っ黒にまった男たちの映像はモノクロ映画でしか出せない凄みがありました。

じわじわと削られていくような感覚でいい意味での疲労感が溜まっていく。鑑賞後には満足感に満ちてました。怖い映像を連続で垂れ流すだけの映画ではできないものがあります。緻密に計算された高い完成度でした。

任天堂は抹殺したい存在でしょうけど、文句なしの名作です。前半のスロー過ぎる展開だけがもったいない。

お薦め度:★★★★★★★★☆☆

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007/スペクター

2015-12-05 17:26:27 | ★★★★★★★★☆☆

監督 サム・メンデス
キャスト ダニエル・クレイグ、モニカ・ベルッチ、レア・セドゥー、アンドリュー・スコット、クリストフ・ヴァルツ、イェスパー・クリステンセン、レイフ・ファインズ、ベン・ウィショー、
ナオミ・ハリス、ロリー・キニア、ジュディ・デンチ
2015年 アメリカ、イギリス
ジャンル:アクション、シリーズ

【あらすじ】
少年時代を過ごした ”スカイフォール” で焼け残った写真を受け取ったボンド 。その写真に隠された謎に迫るべく、M の制止を振り切り単独でメキシコ、ローマへと赴く。そこでボンドは殺害された悪名高い犯罪者の元妻であるルチア・スキアラ と出逢い、悪の組織スペクターの存在をつきとめる。

【感想】
行ってきた。イオンシネマとイオンモール混み過ぎ。もう休日には行かないと不満を漏らしつつも、立場的には満足している。

私は007シリーズについては旧23作+番外的な位置づけにある「ネバーセイ・ネバーアゲイン」を一通り鑑賞している程度のにわかに過ぎませんが、この程度のにわかでも「スペクター」というサブタイトルだけで魅かれるものがありました。

本作の立ち位置は長年続く007の世界がループしていることを示すものである。

前作にてMが死んで新しくなり、Qやマネーペニーの誕生で終わったのでなんとなく予想はしていましたが、本作では007シリーズの代表キャラであるスペクターの正体・謎が明かされます。ボンドとの関係とか、片目を失った理由や車いすになった経緯までしっかり描かれており、猫まで登場するので旧作ファンにはとても嬉しい作りでした。前作の金粉女使ったオマージュなんて霞むレベルでしょう。ガンバレルからはじまるおなじみの形式を踏んだのもダニエルになってから今回が初めてである。その点で過去3作で大きく変えた部分をもとに戻して平常運転になった作品であった。

ダニエル・クレイグのボンドの世界というのはいくら文明が進化していても、007の歴史の中では時系列に初期に起こった出来事として描かれているようです。

またボンドの人物像についてもかなり変わったと感じます。ダニエル・クレイグのボンドに毎回文句をつけてきた自分からしても満足でした。女好きのプレイボーイで銃を撃つ前にジョークを言うような余裕。ここにきて自分の中にあった「ボンド像」とようやく一致しました。今までの全く余裕のない切羽詰まったようなダニエル・クレイグのボンドから一変したように感じました。なんで最初からこれができなかったのだろうかと言いたくなるくらい。おかげで世界中を飛び回ることの楽しさもしっかり味わえました。列車での戦いは「ロシアより愛をこめて」を思い出してしまう。ラストシーンも「女王陛下の007」を意識したものになっていました。だからこそ作品を知っている人ならあのラストで寂しさを感じるのである。よく作られてると感心しました。

アクションもスタートから大迫力で銃撃戦からノンストップでヘリでの戦いにつながっていくシーンからかなり飛ばしていました。

欠点としては今までのカジノ・ロワイヤル、慰めの報酬、スカイフォールあたりのハードな内容が好きな人には物足りないと感じるかもしれません。自分に取っては小さなことですが・・・。もっと些細なことではヒロインの前歯の隙間が気になった。

以上、ダニエル・クレイグになってやっと本当の意味での「007」を観れたという気分にさせられた充実した作品でした。

お薦め度:★★★★★★★★☆☆


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鑑定士と顔のない依頼人

2015-08-21 21:02:17 | ★★★★★★★★☆☆
監督 ジュゼッペ・トルナトーレ
キャスト ジェフリー・ラッシュ、ジム・スタージェス、シルヴィア・フークス、ドナルド・サザーランド、フィリップ・ジャクソン
2013年 イタリア
ジャンル:ドラマ、ミステリー

【あらすじ】
天才的鑑定眼を持つ一流鑑定士にして、競売人のヴァージル。人間嫌いである彼の楽しみは、自宅の隠し部屋の壁一面に飾られた女性の肖像画鑑賞だった。そんな彼の元に、クレアと名乗る若い女性から電話が入る。それは「1年前に亡くなった両親が遺した家具や絵画を鑑定してほしい」という、ごくありふれた依頼。だが、ヴァージルが指定された邸宅を訪れても、彼女は決して姿を見せようとせず、奇妙な鑑定が始まる…。

【感想】
この映画は年食ってから資産を失うと何も残らないという恐怖を素晴らしい映像で教えてくれた。これだけで強烈なメッセージ性だった。これに加え年寄りになんの目的もなく若い女が近づいてくることなどあり得ないという現実も・・・・・。

鑑定士が壁の向こう側から姿を見せようとしない謎の女性からの鑑定依頼をきっかけに、思いがけない運命に導かれるさまが綴られる。

前半は人前に姿を見せようとしない女のミステリアスな部分が強調されていて上質なミステリーといった雰囲気でした。それが後半になると一転する。特にラストは前半の雰囲気からしたら考えられないようなオチでした。悪く言ってしまえば品がない。ハリウッドのどんでん返しに近い。それでもイタリア映画だけあってギリギリ鼻につくことはない範囲に収まっていたと思います。これくらいの方が楽しめる。

(以下、盛大なネタバレあり)

ジェフリー・ラッシュ演じる主人公がそれまで極秘であった自分の宝物である絵画コレクションを一度でも他人に隙を見せてしまったことの代償の大きさが強く伝わってきました。やはり他人を簡単に信用してはいけないというのは投資家の自分には非常に理解できるものでした。

本作の監督は私の最も好きな映画の一つである「ニュー・シネマ・パラダイス」が代表作のジュゼッペ・トルナトーレ。いつも刺激のある映画を作ってくれるのでこれからも楽しみにしている。

お薦め度:★★★★★★★★☆☆

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アメリカン・スナイパー

2015-02-28 14:53:24 | ★★★★★★★★☆☆
監督 クリント・イーストウッド
キャスト ブラッドリー・クーパー、シエナ・ミラー、カイル・ガルナー、マーネット・パターソン、レナード・ロバーツ、コリー・ハードリクト、ブライアン・ハリセイ、ジョナサン・グロフ、
ロバート・クロットワーシー
2014年 アメリカ
ジャンル:アクション、ドラマ

【あらすじ】
テキサス州。クリス・カイルは、1998年に米大使館爆破事件をテレビで観て愛国心から海軍に志願する。シールズに配属され、私生活ではタヤと結婚して幸せな日々を送るが、2001年の同時多発テロ事件を契機にイラクへと派遣される。イラクで大きな戦果を挙げたカイルは仲間達から「レジェンド」と呼ばれるようになり、1000m級の射撃を行う元五輪選手のムスタファ(サミー・シーク)と遭遇し、何度も死闘を繰り広げる。任地での経験はカイルの心を蝕み、帰国する度に家族との溝は深まっていく。

【感想】
イーストウッドにはまだまだ頑張って映画を作ってもらいたい。映画館で喜んで金払える監督の一人。

本作も実に後期のイーストウッドらしい過剰な演出がなく、ストーリーも説明不足や蛇足な部分もないきれいな作りにまとまっていました。おかげで作品にすんなり入り込めた。

スナイパーになる以前から戦場での活躍、引退後までの間、主人公の置かれている心理状態がそれぞれの場面において手に取るように伝わってくるのがこの作品の凄さだと思う。しかもそれをさりげない演出でやってしまうあたり質の高い映画でした。音楽のないエンドロールについても狙っているとかではなく違和感のない自然な流れでした。

強い愛国心を持った主人公は苦しい訓練にも耐え抜き、戦場でスナイパーとしてレジェンドと呼ばれるほどの活躍をするようになる。一時的にアメリカに帰国した時も気持ちは戦場で奥さんや子供にかまう余裕もない。同じく戦場で精神的に参ってしまった弟とは対照的でした。アメリカ国内では戦争については国民の関心も大して高くなく、自分の居場所ではないと感じていたはず。

また主人公に能力があったからこそ自分が周りから必要とされる中心的な位置となり、結果として戦場が人生の中心となってしまい泥沼から抜け出せなくなったのだろう。主人公が戦う目的も最初はアメリカへの愛国心だったのが最後は仲間になっていたのも考えさせられました。

スナイパーとしての戦場の対決シーンを一番の見せ場にするのではなく、とにかく主人公の内面を徹底的に描いた作品だったと思う。政治的な主張はほとんど感じませんでした。

無理やり順位づけするのであれば作風的に「グラン・トリノ」あたりの方が好みではあるけど、本作も十分に素晴らしいものでした。映画館で観れてよかった。

お薦め度:★★★★★★★★☆☆

死霊館

2014-12-19 23:02:03 | ★★★★★★★★☆☆

監督 ジェームズ・ワン
キャスト ヴェラ・ファーミガ、パトリック・ウィルソン、リリ・テイラー、ロン・リヴィングストン、ジョーイ・キング、マッケンジー・フォイ
2013年 アメリカ
ジャンル:ホラー

【あらすじ】
数多くの怪奇現象を解決してきた著名な心霊学者エドとロレインのウォーレン夫妻が、邪悪すぎるため40年もの間、極秘にしてきた事件があった。1971年、米ローズアイランド州。両親と5人の娘が人里離れた古い家に引っ越してくる。だが間もなく、その家で次々と奇妙な出来事が起こり始め、遂に娘たちにも危害が及ぶ。一家から助けを求められたウォーレン夫妻が周辺の土地を調べると、そこには耳を疑う血と闇の歴史があった…。

【感想】
完全に舐めてかかっておりました。土下座もの。言い訳させてもらえば「死霊館」なんてタイトルが悪い。

「どうせいつものチープなB級ホラーだろ」→「思っていたよりは見れるな」→「もしかしたら面白いんじゃないか?」→「間違いなくこれは素晴らしい出来」 という具合に移り変わっていった。ホラー映画としては異例の興収3億ドル突破の大ヒット作と聞いて納得。

米国の有名心霊学者エド&ロレイン・ウォーレン夫妻が1971年に体験した事件を映画化したオカルト・ホラー。

エクソシストものとしては特に目新しさはないものの、まさに王道を行くような作りで久々に本格的なホラー映画を見せてもらいました。歳を重ねるとホラーものには耐性ができるにもかかわらずこれは演出や音響が素晴らしく素直に怖かった。見せ方も工夫されており、霊が誰に取りつくのか?途中、主人公なのかと思わせておいて、やはり子供かと思ったら違っていて、しかもその人物にしっかりとフラグは立っていたので面白かったです。また「霊」を表現するのに安易にCGを使わなかったのも高評価。

監督のジェームズ・ワンと言えば「ソウ」シリーズで一躍有名になった人ですが、同シリーズは監督したのは初代だけで残りは制作総指揮となっています。どうしてもスプラッター手法ばかりが注目されてしまう中でそれを封印して演出や音楽だけで恐怖を作り出していました。能力はかなり高い人物なのだと再認識させてもらいました。

騙されたと思って多くの人に鑑賞してほしいホラー映画です。

お薦め度:★★★★★★★★☆☆

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見えない恐怖

2014-10-26 22:18:53 | ★★★★★★★★☆☆
監督 リチャード・フライシャー
キャスト ミア・ファロー、ロビン・ベイリー、ドロシー・アリソン、ダイアン・グレイソン、ノーマン・アシュレイ
1971年 イギリス
ジャンル:ホラー、サスペンス

【あらすじ】
イギリス、バークシャー州。目の不自由な女性サラは、恋人とのひと時を過ごし叔父一家のもとに帰宅するが、何故か一家は不在で、彼女は先に寝入ってしまう。しかし、翌日も彼女が外出から帰ってくると、人の気配がない。恐怖に駆られた彼女が家中を歩き回ると、あちこちで死体が手に触れ、留守中に一家全員が惨殺されていたことが判明。パニックに陥ったサラは、間もなく何者かが家に侵入してくる気配を感じ取るが…。

【感想】
ミア・ファローと言えば初主演の「ローズマリーの赤ちゃん」の印象が強すぎて以降はそれなりの知名度の作品に出るも、どれも今一つの一発屋の印象でしたが、本作は迫真の演技はそんな印象をひっくり返すほどの見事なもので掘り出し物に出くわした気分にさせてもらいました。

目の不自由な女性が一家惨殺事件に巻き込まれてゆく。目が見えなくて何が起こっているか把握できない女の周りに死体が転がっている光景は恐怖を感じました。

主人公が重度の盲目設定であるため犯人と戦っても勝てる見込みはないということで彼女がパニックに陥る様子をメインに描いているが、ミア・ファローの演技の素晴らしさによってこの部分が非常に引き立っていたように感じました。本作は全く金をかけたような映画ではないのは直ぐにわかりますが、主人公が素晴らしい演技をするだけで十分に内容に引き付けられるというのを実感できます。特に坂を転げ落ち泥だらけになるシーンは圧巻でした。とにかくミア・ファローの一人舞台で最後まで見せてくれる。「華麗なるギャツビー」の糞女役には本当にイライラさせられましたがこれも高い演技力によるものなのだと気がつきました。

内容的には盲目の若い女が主人公で事件に巻き込まれるということで「暗くなるまで待って」を連想する人が多いのではないかと思われます。本作の方が残忍で鬼気迫るものに仕上がっているので比較してみるもの面白いでしょう。

ただ主人公の恋人の存在がやや鬱陶しい。人物描写不足の面もあって最後までいい人なのか疑ってしまいました。

全く期待していなかった作品だったので見事な掘り出し物となりました。

お薦め度:★★★★★★★★☆☆

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狼男アメリカン

2014-08-04 20:12:08 | ★★★★★★★★☆☆
監督 ジョン・ランディス
キャスト デヴィッド・ノートン、グリフィン・ダン、ヴィク・アームストロング
1981年 イギリス、アメリカ
ジャンル:ホラー、サスペンス

【あらすじ】
欧州旅行を楽しんでいる米国人青年デビッドとジャック。最初に訪れたイギリスの田舎町をさまようふたりは、パブで地元の人々から「月夜には気をつけろ」という謎の警告を受ける。やがて荒れ野に迷い込んだ彼らに、不気味な遠吠えを発する獣が襲いかかる―。ロンドンの病院で目覚めたデビッドは、ジャックの死を知らされ悲嘆に暮れる。手厚い介護で順調に回復に向かう彼だったが、ある日彼の前に死んだはずのジャックが現れる…。

【感想】
本作の狼への変身シーンを見て最近のホラー映画だとここまでのこだわりや熱意を感じさせてくれる作品はないと思った。CGが普及した今でも素直に凄いと感心できます。

ちなみに本作に感動したマイケル・ジャクソンが監督とメイク担当者に「スリラー」のPVを依頼したのは非常に有名なエピソードです。

狼男に変身することになった一人の若者を描く。ホラーとギャグのバランスが非常に絶妙でシンプルなストーリーを引き立てていました。愛着の持てる作品に仕上がっています。かなり残忍なシーンがあるにもかかわらず、嫌悪感は一切ないのはこのためだと思う。

個人的にはポルノ映画の上映中に人が襲われるシーンは本作ならではの良い意味での品のなさが十分に発揮された場面だったと感じました。主人公の男がやたら全裸になったりと本当に品はないです。全体的に下品だからこそたまにある真面目なシーンが引き立っていました。このタイミングでエンドロールに入るのかという唐突なラストも印象に残ります。

タイトルにもなっているアメリカンであることの意義が全く感じられず、別にロンドンからの旅行者でも全くかまわないのですが、このあたりはアメリカでの商売を目的にして無理やり設定したものだとしたら少し残念。

ストーリーはシンプルでも作り手のこだわりを感じさせてくれる作品は非常に面白い。最近の作品は見ている側に予想されないためにストーリーを複雑にすることばかりを考えているように思います。

お薦め度:★★★★★★★★☆☆

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ジェネオン・ユニバーサル

スター・トレック6/未知の世界

2014-08-02 22:31:11 | ★★★★★★★★☆☆
監督 ニコラス・メイヤー
キャスト ウィリアム・シャトナー、レナード・ニモイ、デフォレスト・ケリー、ジョージ・タケイ、デヴィッド・ワーナー、クリストファー・プラマー、カートウッド・スミス 、イマン、キム・キャトラル、クリスチャン・スレーター、マイケル・ドーン、マシアス・ヒューズ、ジェームズ・ドゥーアン
1991年 アメリカ
ジャンル:SF、シリーズ

【あらすじ】
月の大爆発により、危機を迎えたクリンゴン帝国が連邦に和平交渉を申し込み、助けを求めてきた。カーク艦長らエンタープライズ号の面々は、講和条約を結んで、クリンゴン特使の護衛に向かうが、何者かにより特使が殺害され、再び戦争の危機が勃発する。これがクリンゴンの策略だと見破ったカーク艦長は、平和のためにエンタープライズ号と共にクリンゴンと対決することを決める。

【感想】
1966年開始のTV版からスタートしたオリジナルシリーズのラスト。フィナーレを飾るにふさわしい出来でした。キャストの面々もかなり老け込んでしまっているのでここで一旦締めるのは仕方ないでしょう。

長年対立してきた惑星連邦とクリンゴンの和平交渉を巡ってカークが陰謀に巻き込まれる。クリンゴンに息子を殺されたカークのクリンゴンへの葛藤や不信感のせいでピンチを招いてしまう。

連邦側もクリンゴン側にも好戦的な人間と和平を望む者がそれぞれいて深い溝になっており、なかなか前に進めない。これらは現実社会の問題を連想させます。この流れに戦艦同士による戦いやカーク達の強制労働シーンなどを織り交ぜて内容も盛りだくさんでした。スター・トレックシリーズの面白さがぎっしり詰まっている作品だったと思います。

特に本作ではカークの見せ場が多く、今までの中で一番活躍していました。カーク役のウィリアム・シャトナーはカークが主役であるにもかかわらずスポックの方が人気が高かったことに対して葛藤があったと告白したそうですが、やっぱり主人公はカークであると認識させてくれる終わり方ですっきりしました。あまりシリアスさは感じさせず、どんなに厳しい状況においてもスマートに振る舞おうとするカークの人物像は当時では斬新だったのでしょう。もちろんスポックをはじめとするその他の搭乗員も非常に魅力的です。

残念だったのは艦内に一人裏切り者がいるという状況の中で犯人がバレバレだった点です。バレバレというか消去法で一人しかいないので推測する楽しみはありませんでした。本作になっていきなり登場したようなキャラは他に比べると感情移入しにくいのが苦しい所。クリンゴン側の黒幕についても伏線でばらし過ぎだったように思います。

この作品、ブログなどで検索してみたのですが、日本のサイトで取り上げている人がほとんどいないのは意外でした。スター・トレックほどの人気シリーズだからもっと多くの人が鑑賞しているものだと思っておりました。旧作は私はとても好きですが、あまり日本人向けではないコンテンツだったようです。

お薦め度:★★★★★★★★☆☆

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パラマウント ホーム エンタテインメント ジャパン

赤い靴

2014-07-05 20:52:28 | ★★★★★★★★☆☆

監督 マイケル・パウエル、エメリック・プレスバーガー
キャスト モイラ・シアラー、アントン・ウォルブルック、マリウス・ゴーリング、アルバート・バッサーマン、ロバート・ヘルプマン
1948年 イギリス
ジャンル:ドラマ

【あらすじ】
ロンドンのバレエ団に、美しい新人ダンサーのビクトリアが入団。彼女は、バレエ団の持ち主でプロデューサーでもあるレルモントフに見出され、新作バレエ「赤い靴」に出演することになる。初演は大成功をおさめ、ビクトリアの名はたちまち世界中に広まる。そんな中、彼女が若い作曲家と恋に落ちたことを知ったレルモントフは、恋を取るか、芸術を取るのかと厳しく迫る。

【感想】
1948年だと今でも生きている方はほとんどいないでしょうね。(やはりメインキャストは誰も存命してないもよう)

アンデルセン童話「赤い靴」をモチーフに一人のバレリーナの姿を描く。ダイナミックで迫力あるダンスシーンにバレエに取りつかれた人間たちの鋭い描写、赤い靴に代表されるバレエシーンの色彩美が特徴。これに救いようのない後味の悪いラストというオチがつきます。

ヒロインの本職が女優ではなくダンサーであることは知らなくても余裕でわかります。それくらいキレのある動きでした。色々なミュージカルを観てきましたが、このダンスは役者ではできないでしょう。

鮮やかな色彩による映像も非常に美しく、わざわざ1948年の映画をHDリマスターで復活させるだけの価値はありました。ちなみにネガを入手し、修復したのはあのマーティン・スコセッシだそうです。それだけ多くの人に影響を与えた作品でこの時代にこれだけのクオリティのものが既に作られていたことに驚かされます。

ストーリーについては前半部分に相当する無名のダンサーと作曲家が抜擢されて「赤い靴」を成功させるまでと後半の名声を手にしてからに大きく分かれます。前半の方がドラマティックで楽しめました。多くの人が同様の感想であるはずです。後半は割と単調な展開なのだがラストで全てを吹き飛ばしてくれます。ネタバレになるので詳細は控えますが、ヒロインにダンスを取るのか、家庭を取るのかの選択を迫る場面はある人物に対して嫌悪感を持ちました。1948年という年代を考えると戦後でこのような後味最悪の結末は受け入れられないように思いますが、当時はどういう反響があったのか気になるところではあります。

昔の映画で今では古臭いけど後に多くの人に影響を与えたから持ち上げているのではなく、今でも普通に楽しめる所が素晴らしい。

2011年に映画館で公開されていたのか。観たかったですね。

お薦め度:★★★★★★★★☆☆

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紀伊國屋書店

パシフィック・リム

2014-06-21 21:04:44 | ★★★★★★★★☆☆

監督 ギレルモ・デル・トロ
キャスト チャーリー・ハナム、イドリス・エルバ、菊地凛子、芦田愛菜、マックス・マーティーニ、ロン・パールマン、クリフトン・コリンズ・Jr、ロバート・メイレット、バーン・ゴーマン、ブラッド・ウィリアム・ヘンケ
2013年 アメリカ
ジャンル:アクション、SF

【あらすじ】
ある日突然、太平洋の海底から怪獣が出現し人類に襲い掛かってきた。世界各国は巨大ロボット“イェーガー”を開発して対抗するが、次第に劣勢を強いられてゆく。やがて、イェーガーの運用が中止されると、ペントコスト司令官は香港で最後の戦いを決意。かつて怪獣との戦いで兄を失った元パイロットのローリー・ベケットも戦線に復帰、日本人の森マコと共に旧式イェーガー“ジプシー・デンジャー”に乗り込み、決戦に臨む。

【感想】
なんでこれを映画館で観てないんでしょうね。本作は映画館で観ておかないといけなかったと反省。もう少し話題に敏感にならないといけない。

監督は日本の特撮映画やアニメに多大な影響を受けており、人類の存亡を賭けて巨大ロボットが怪獣と激闘を繰り広げる。

日本の作品をそのままハリウッド映画化のケースだと、オリジナルの印象もあってかあらかじめ冷めた目で見てしまいがちです。本作は日本の多くの作品に影響を受けたオリジナルにしたのが成功だったと思います。相当なマニアでもない限り、影響を受けている作品を並べるのは難しいはずです。個人的に自分の年齢だとロボットアニメを見るのはもうきついのでこういう形で映画化してもらえるのは非常にありがたい所でもありました。

とにかく戦闘シーンの迫力が凄い。前々からCG映画は重量感が足りないと思っていましたが、本作はその欠点を完全に克服していたように感じました。ついにここまで来たかというレベル。戦闘シーンが多い映画は普段だと終盤になると飽きてくるのですが、本作にはそれがありませんでした。もっと観ていたいとさえ思いました。

多くの人が指摘するように作風自体は「トランスフォーマー」に近いと思います。ただ「トランスフォーマー」は中身スカスカで戦闘シーンの垂れ流しだったので対し、本作はパイロットの苦悩をしっかり描いていました。そのため人間の部分とロボットとのバランスがよく、メリハリがついていたと思います。私に言わせれば「トランスフォーマー」とは別物。

ロボットアニメを意識しているのなら、パイロットが必殺技の名前を叫んで華麗な技を繰り出すのがあってもよかったのかもしれません。またラスボスであるカテゴリー5についてはもっと絶望感があればよかった。「エイリアン2」で最後にクイーンに遭遇した時の絶望感・衝撃に比べれば明らかに弱かったです。この部分さえしっかりしていれば+1点したのに。

菊地凛子は海外だと「バベル」の一発屋で終わると思っていましたが、まさかもう一本当てるとは。すぐ消えるとか思ってたのを謝りたい。

お薦め度:★★★★★★★★☆☆

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