象が転んだ

たかがブロク、されどブロク

ネコでも出来る?不動産の名義変更〜”手数料搾取”と化した弁護士

2021年12月22日 06時00分34秒 | バルザック&ゾラ

 家族が亡くれば、遺産相続や不動産の名義変更が必要となる。
 特に、土地の場合(宅地と異なり)売買の確率が高く、名義変更(登記変更)は必須となる。
 しかし、この相続にまつわる名義変更は、初めての人にとってはハードルが高い。
 故に、諸々の面倒な処理を司法書士などの専門の弁護士に頼む訳だが、これまた大変なお金(9万~13万ほど)が掛かる。

 そういう私も、この不動産の名義変更でいきなり玉砕した。
 法務局に行けば、大まかな手順を教えてくれるだろうと期待した私が大バカだった。確かに、そんな事を潔く教えれば、司法書士なんて人種は(酷な言い方だが)この世には必要なくなるだろう。
 地元の法務局の受付にはパートのオバサンしかいないから、相談にすら乗ってくれない。勿論、知り合いがいれば内線で専門家に繋いでくれる筈?だが・・・

 結局、分厚い書類を渡し、”これを読んで書いて下さい”と仏頂面の無機質な回答を得られただけである。
 頭に血が上った私は、知り合いに登記事務所の人がいるのをすっかり忘れていた。まさにバカは叩いても治らないのだ。


登記申請書と登記原因証明書

 さっそく自宅に戻り、分厚い説明書に一通り目を通すも、大半がアテにならない事が解る。  
 そこで、サイトで大まかな流れを調べ、市役所から送られてきた固定資産課税明細書を見ながら、「登記申請書」(これが一番重要)に不動産の表示情報を記入する。
 が、これは意外にも単純で、登記登録がなされてれば、所在地(地番)・地目(土地か宅地か)・地積(登記面積)・評価額を記入するだけだ。
 因みに宅地だと、所在地(家屋番号)・種類(居宅か小屋か)・構造(木造瓦葺きetc)との名目になる。

 しかし、前述の様に土地は登記されてるケースが多いが、宅地は未登記が多い。私の場合も宅地は未登記のままだった。
 登記といっても、単に面積を測量士に測ってもらい、登記証明(登記簿謄本)を作るだけなのだが、これまた手数料が8万ほど掛かる。
 我が家は(評価額が高い)土地だけが登記登録され、”未登記の宅地は売買時に登記すればいい”と測量士の知人が教えてくれたので、今回は土地だけの名義変更である。但し、宅地の未登記申請は(念の為に)市役所に申し出る必要がある。
 事実、評価額の8割以上は土地が占めるから、(評価額の低い)宅地は未登録のままでいいとの考えもあるのだろう。
 そして(忘れがちなのが)、登記申請書に記入した(土地の)登記面積が正確である事を証明する為の登記簿謄本(1通600円)が必要となる。私の場合は2件あるので1200円。
 因みに、サイトにはこの件はなかったので、初心者にはビックリである。とにかく”手続きを煩雑にし手数料を搾り取る”というバルザックのご指摘は、その通りだったのだ。

 因みに「登記申請書」には、登記記入票と登記簿謄本と固定資産課税明細書のコピーの3つが必要になる。
 (上述した様に)最初の関門である「登記申請書」はクリアできたが、今度は”相続人が私だけである事を証明”する為に、亡くなった家族(被相続人)の除籍証明と私(相続人)の戸籍証明が必要となる。これを「登記原因証明情報」と言うが、これが2つ目の関門である。
 初めての人は、除籍と戸籍の2つの謄本を揃えば済むと考えがちだが、事はそう単純じゃない。
 私の場合、母が被相続人となるから、出生して死ぬまでの証明書を全て揃える必要がある。これも多少は難関だが、市役所に相談すれば教えてくれる。
 まず母の出生地の役場で、出生と(結婚による)転出の2通の謄本を揃える必要ある。これだけで750×2=1500円なり(痛ぁー)。
 次に、転出先の役場で母の住民票除籍(200)と附票(300)に、戸籍全項証明(450)と私の住民票(300)と印鑑証明(200)が必要であった。
 これに関しては、各市町村で微妙に異なるが、私の場合「登記原因証明書」の手数料だけで2850円掛かった事になる。
 但し、この証明書類は(被相続人の)口座凍結の解除にも使うから、処理が終われば戻してもらう事を忘れずにである。それに最後にも述べるが、不動産の名義変更の前に口座解除をする方が賢明である。


登録免許税

 上述した登記申請書登記原因証明書の2セットを揃え、近くの法務局に提出する訳だが、更なる第3の関門が立ちはだかる。
 それは、土地の評価額に対する「登録免許税」の計算である。
 これは「登記申請書」に記入した全ての土地の評価額(千円単位)に0.4%を掛けた額だが。仮に1千万だと4万になる。この免許税分の収入印紙を購入し、専用の用紙に貼り付ける訳だが、この登録免許税(百円単位)の出費も頭が痛い。
 但し、評価額の記入だが、市から送られてくる明細書には、課税面積に対する評価額しか書かれてないので、”登記面積に対する評価額”に計算し直す必要がある。
 これは、明細書に書かれてある評価額を課税面積で割り、登記面積を掛けるだけなのだが、私の場合(審査中に呼び出しが掛り)5千円ほどの上乗せが発生した。
 因みに、相続ではなく贈与だと2%が掛かり、仮に1千万だと20万となるから注意が必要である。

 これら審査は1週間ほど掛かるので、それまで必要書類の原本はお預かりとなる。故に、処理が終わったら法務局へ行き、戻してもらう。
 私の場合、口座凍結解除の前に不動産の名義変更をやったから、全くの大バカを見た。
 つまり、家族が死んで一番最初に気を使うべきは、お通夜でも葬式でもなく、故人(被相続人)の口座凍結であったのだ。
 但し、凍結解除に必要な(被相続人)除籍証明書が出来るまで1週間ほど掛かるので、予め銀行に予約を入れ、段取りをスムーズにしとく必要がある。
 または亡くなる時期を見計らい、預金を少しずつ移行し空にしとけば、口座凍結されても慌てる事はないが、銀行に怪しまれる可能性もあるから、凍結前に葬儀や入院費や諸経費の必要資金を下ろしとく必要がある。


最後に〜肝心な事は誰も教えてはくれない

 こういうのは事前に知っとくべき重要な事だが、意外に誰も教えてはくれない。
 悲しい現実だが、最高に美味しい事と一番に肝心な事は誰も教えてはくれない。母方の親族もイチャモンばかり付けやがって、こうした肝心な事は一切口にしない。

 結局、予備知識もなく何も知らないで、これをやろうとすると確実に玉砕する。しかし、慌てないでゆっくりやれば(ネコでも出来る?)レベルである事がご理解頂けたであろう。
 但し、これは相続が単独のケースである。
 相続人が複数の場合は、遺言状(公正証書または裁判所の検印を受けた遺言書)がなければ、各々の「遺産分割協議書」が必要になり、各相続人の欲が絡むから、そう単純じゃない。
 しかし公証人に頼み、公正証書を前もって作成すれば大した費用も掛からず、簡単にできるとか。
 都会ではこういった情報は沢山流れてるから、怪しい弁護士にボッタクられる事はないだろうが、ド田舎では弁護士は神様である。

 バルザックが揶揄する様に、”手数料ぼったくりマシン”と化した弁護士には、エロパブ以上に要注意である。
 全てに通じるが、パニックで慌てる事ほど愚かな事はない。
 ”機を見るに敏”という諺があるが、”よーくよーく機を見て、そして冷静に(敏に)動く”という事を教えられた様な気がする。

 因みに「幻滅」(1837~1843)は、主人公リュシアンが弁護士に多額の手数料を背負わされ、最後には自殺する(「浮かれ女盛衰記」)という奇悲劇を描いた長編だが、江戸時代後期の中世ヨーロッパでは既に、権力の奴隷に成り下がった法律や弁護士、それに腐敗したジャーナリズムやメディアを伺い知る事ができる。



8 コメント

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Unknown (そらママ)
2021-12-22 14:36:07
こんにちは、
うんん~難しいですね、もう私には不動産の
名義変更はすることはないでしょうが~
果たして私の僅かばかりの不動産の名義変更を、
私の死後、息子が自分で出来るかというと多分面倒で出来ないでしょうね。
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そらママさん (象が転んだ)
2021-12-22 16:02:23
いえいえ落ち着いてやれば簡単ですよ。
近い将来、ネットでやれる日も来ると思います。
ただ、言われる通り面倒なんですよね。
日本人は何に付け面倒なのが好きな様で、そのへんてこな民族性には頭をかしげますが。
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法とジャーナリズムの腐敗 (腹打て)
2021-12-22 21:45:58
この二つは「幻滅」で書かれてる大きなテーマだけど、これを日本の江戸時代後期に見抜いてたバルザックの先見性は凄いよ。
転んだ君が言う洞察とか考察なんだろうけど、小説家でなく数学者でもいいとこ行ってたんじゃないのかな。

でも日本人って面倒な事が大好きだし、面倒な事にするのも大好きなんだよな。全く平和ボンボンな原始的な民だよな。
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腹打てサン (象が転んだ)
2021-12-23 04:06:12
そうなんですよね。
21世紀の今は法とジャーナリズムの腐敗は当り前になってるんですが、200年近く前に既に始まってたんですよね。
本質を見抜くという点では、バルザックの洞察や考察も当時の天才数学者のレベルにあったと思います。

言われる通り、面倒な事が大好き日本人ですよね。「真犯人フラグ」も(予想通り)面倒な愚作に成り下がって・・・
でも、それが日本人の本質であり、限界なんですよね。
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登記変更 (paulkuroneko)
2021-12-23 08:57:19
リュシアンのモデルは多分ですが、アーベルかガロアでしょうね。パリへ打って出て一山当てようと思ってたのは共通してますから。
一方で善と正義を地で行くダルデスはガウスでしょうか。
多彩な登場人物とアクの強すぎる個性群。
バルザックはこの「幻滅」を書きたくて、法律屋を捨てて小説家になったと思えるほどに力入ってます。

登記変更って、ネット上でやればスムーズに何の手数料も掛からなくて済むようにも思えますが、これも法の腐敗なんでしょうか。
バルザックがこれを見たら嘆いてるでしょうね。
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paulさん (象が転んだ)
2021-12-23 14:57:27
ダルデスはガウスですか。
流石paulサン、よく見抜いてらっしゃる。
ほんと、何の為にネットがあるんだろうかと思っちゃいますよね。
でも法がここまで腐るとは、バルザックも口をあんぐりしてるでしょうに。
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法では人を弁護できない (#114)
2022-02-25 03:11:00
人が法を作り
権力がその法を
都合のいいように作り変える
そんな法律が庶民の為になる筈がない
弱者は法ではなく良心を求めている
法では人を弁護できない
人を弁護できるのは人だけである
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#114さん (象が転んだ)
2022-02-25 07:45:45
日本は法治国家といえど
コメントで言われてる事の繰り返しなんですよね。
今や法治国家というよりも放置国家。

既に法は権力の奴隷であり、そんな法律を覚える弁護士は、受験の為に約にも立たない算数の公式を覚えるのと同じ様なもんでしょうか。
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