象が転んだ

たかがブロク、されどブロク

負の要因と発想の転換〜ロベルトデュラン編、その1(2020/4/26更新)

2018年05月01日 15時14分03秒 | ボクシング

 昨年の11月末に立てた”ハンズオブストーン”ですが。結構なアクセスがあり、改めてロベルト•デュランの人気の凄さを思い知らされます。勿論、私めはデュランの大ファンで、彼こそがパウンドforパウンドのNo.1だと確信してます。
 デュランの代名詞と言えば石の拳。ミュージシャンでデュラン•デュランというのがいたが、音楽ファンには悪いが、デュランと言えばロベルトなのだ。


異次元の石の拳伝説

 このパナマ生まれの悪ガキは、純粋な素手の殴り合いならタイソン少年より強かったろう。
 デュランの強さはその拳の破壊力にあるが、その起源はその血筋にあるという。デュランの叔父もココナッツを素手で叩き割る怪拳を持っていたとか。
 「石の拳一代記」によると、この”怪拳”親族の中で最もパンチ力が強かったのが、祖母のミレジャ。彼女は警官と揉めて市役所に連れて行かれた際、市長をワンパンチでノックアウトした伝説を持つ。小遣い欲しさに馬を一撃で倒したと言われるデュラン少年の豪腕は、実は祖母譲りだったのだ。

 「ハーンズオブストーン」を見て感動し、その勢いで”デュランvsバークレー”を見た。昨今のボクシングが幼く小さく愚かに見えた。強さの次元が、殴り合いの定義が、殺戮の匂いが、ファンの熱狂の度合いが全く違う。
 勿論、"スラムの王"のみがベルトを巻けた時代だったから、当然ではあろうけど。
 デュランに憧れ、デュランの拳に酔ったロートルの拳闘フェチは今でも期待する。80年代の黄金のミドル世代の復活を藁にもすがる気持ちで期待する。騙されると分かってても。
 そして、決まった様に裏切られる。でも、興行的には半端に儲かるからタチが悪い。今やアイドルがチャンプになり、フライ級がSウェルターに勝つ時代。それでも、殴り合いには、ボクシングには変わりはない。

 ゲンナジーだって黄金のミドルの時代だったら、ボクサーになってたろうか。パッキャオは大場の狂気に勝てたろうか。井上ですら大場には勝てそうにもない。
 勿論、単純に今と昔を比較する事は出来ないのは百も承知だが。
 でも村田には悪いが、ライト級時代のデュランと戦わせたら、何ラウンド持ち堪えたろうか。彼が黄金のミドルの世代だったら、ワルになる事もボクサーになる事もなかったろうに。
 ”神の防御”メイウエザーJrだって、親父のシニアよりも確実に弱い。


ライト級史上最強のデュラン

 話を元に戻します。
 デュランの第一期黄金時代はライト級ですが。 デュランは怪物的な破壊力と野性的な強打を駆使し、次々と巨木をなぎ倒すように、ブルドーザーが森林を破壊する様に、拳一つでライト級をすべて粉砕した。まさに、ライト級史上最強。
 沼田義明ガッツ石松も全く相手にならなかった。リングに立ってるだけで精一杯だった。フェザー級のアルゲリョも、スーパーライトのセルバンテスも、デュランとの対戦が実現しなかったのは、単にデュランが怖かっただけだと思う。
 因みに、デュランサイドはセルバンテスのカウンターを警戒して避けたと言われてるが。それは明らかにおかしい。

 私だって彼らの立場なら、デュランの”石の拳”の犠牲にはなりたくない。
 誰だって拳では殴られても、石では殴られたくない筈だ。事実、彼らはスーパーライトの狂人”プライヤーとは戦ってる。
 しかし、その殺戮の拳より危険なのは、デュランの情動だ。”対戦者はデュランと戦うのではない、奴の底知れないエモーション(情動)と戦うのだ”とは有名な言葉だ。
 デュランのこの殺戮の情動こそが石の拳を青白く放電させる。相手は、この殺戮の拳と渇きと飢えに支えられた異次元の情動と向かい合う羽目になる。歴戦の強者が対戦を避けるのも当然だろう。


パナマの英雄と唯一の挫折”ノーマス”

 そのデュランも、ライト級までは無敵だったが。黄金のミドル級となると主戦場は完全にアメリカへと移り、神から授った拳とスラムの破壊力と異次元の情動では通用しなくなった。レナード戦は後に、彼のボクシングのキャリアにとっては、とてもいい教訓になる。
 二階級上のレナードを下し、パナマの英雄に君臨したデュランも、5ヶ月後の再戦では、”ノーマス”(もうやめた)と捨て台詞を吐き、試合を捨てた。デュランの時代は、ボクシング人生は終わったかに思えた。

 事実その後、ベニテスのスーパーウェルターに挑戦するも、精彩を欠き判定負け。格下のカークランドにも無様な失態を演じた。もう彼の時代は終わったと誰もが思った。デンプシーじゃないが、”ライトは黄金のミドルでは戦えない”と。
 失意のどん底にあったデュランは、レナード戦を思い出した。接近戦での戦いに磨きをかけた。スラムでのガチの殴り合いを思い出した。それまで、レナードの華麗なテクニックに甘美な亡霊に悩まされ続けていた。
 つまり、負の要因が情動を呼び覚まし、スラムのテクニックに磨きをかけたのだ。

 世界戦の前哨戦となった、メキシコの英雄ピピノ・クエバス戦。
 当時では、これだけのビッグマッチがノンタイトルなのだ。何と贅沢な事か。美味しい所を前にして、今日はここまでです。



8 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
馬殺し伝説 (tokotokoto)
2018-05-03 04:24:00
おはようございます。
大場といい、デュランといい、あの頃のボクシングは凄まじかったですね。子供の頃は正座して見てましたもん。世界タイトル戦の一週間前からソワソワしだし、当日の朝は食事が喉を通らなかった程で。

試合前のあのゴングの音を聞く度に、戦慄が走るというか鳥肌が立つというか。葬式でも鐘が鳴るんですがそれに近い様な気分になった。

クエバスもよく覚えてますね。来日した時の映画俳優みたいな端正な顔立ちと冷酷無残なファイトスタイルに日本中が興奮した事でしょう。

それに当時はボクシングに日本列島が揺れてたように感じます。聖域というのがあって、選ばれた民しかリングに立てない様な独特の雰囲気があった様な。
勿論、今の様に誰でも頑張れば運が良ければ、ベルトを巻ける時代も平和的で悪くはないのですが。

ところで、5/5にゲンナジーとカネロが再戦しますが、転んださんはどう予想しますか。私は今回もゲンナジーが無難に判定勝ちと見ますが。
Re:馬殺し伝説 (lemonwater2017)
2018-05-03 14:19:35
こんにちわです。

 ピピノクエバスは、私も大ファンです。好き度から云えば、デュランよりも上かな。日本で見た時の強烈な印象は未だ脳裏に焼き付いてます。ワインレッドのガウンがね、ファイトも凄かったんですが。以前、パスワードにもしてたほどです。

 しかし、そのクエバスもデュランもハーンズにはフルボッコにされます。そのハーンズを2度とも打ちのめしたバークレーを、デュランは倒したんですから。ホントあの頃のボクシングは贅沢すぎましたね。日本列島だけでなく、世界中が揺れ動いてた。殺戮という感覚を等身大に味わえた私達は幸せ者だったんですね。今の人が可愛そうです。

 さて、ゴロフキンvsカネロですが。中止となりましたね。私も今さっき知りました、もうビックリです。カネロのドーピング違反との事ですが、やはり何度やってもカネロはゴロフキンには勝てないという証明にもなりましたね。

 でも、こういうのを見るとボクシングも終わりかなって気にもなりますね。ホント今のボクシングファンは可愛そうです。
カネロドーピング違反 (tokotokoto)
2018-05-04 05:05:05
お早うございます。
早とちりしてスミマセン。カネロのドーピングが発覚して、中止になったんですね。
昨今のボクシングはこういう事平気でやりますね。
気付かなかった私もアホですが、一か月も前の事なのに、話題にすらならない。私も今のボクシングは殆ど見ないし、興味もないので、こういった馬鹿を見るんでしょうか。

でも、ゴロフキンとカネロには多少は興味を覚えてたつもりですが、何と言っていいのやら。ボクシングも私も落ちる所まで落ちたかな。
ファンも可哀そうですが、ゴロフキンも可哀そうですね。

村田の防衛戦にしても、後で知りましたもの。アマ同士の殴り合いみたいで、こうなったらゴロフキンと村田を見たいです。
Re:カネロドーピング違反 (lemonwater2017)
2018-05-04 06:56:51
そんな、謝る事ないですよ。
私も知らなかったんですから。お互い様です。でもGWの楽しみが一つ減りました。全く残念です。

 正直、カネロにも多少は期待してたんですが。やはり、ゲンナジーの壁は思った以上に厚かったんですね。努力して勝てる相手じゃないと。

 カネロは元々ウエルター級ですから、2階級の体重差は埋まりませんね。レナードもハーンズもミドルでは力不足だった程ですから。

 体重のハンデを考慮するとドーピングくらい目を瞑って、とも思いますが。ノンタイトルでもやってほしかった。ファンとは勝手ですね。
ゴロフキンvsカネロ Ⅱ (tokotokoto)
2018-10-20 04:23:44
ゴロフキンとカネロの再戦は面白かった。

カネロのドーピングで再戦は100%ムリっぽと思ってたんですが。一ヶ月前に行われてたんです。全く気付きまでんでした。ああ生で見たかったな。

仕方なくYouTubeで検索したら、メキシコ版でしたがフルラウンド見れました。予想に反して結構な打ち合いになりました。カネロは引かなかった。ゴロフキンは少しヘタってましたかね。

ボクシング経験者の転んだサンは、勿論生で見たんでしょうか。素人めの私はゴロフキンの僅差の勝ちと思ったんですが。どんな感想をお持ちでしょうか?

凄い試合だったと思います。レナードとデュラン以来か、少し大げさですけど。
ボクシングの王道 (lemonwater2017)
2018-10-20 05:00:47
tokoさん久しぶりです。

 私もすっかり忘れてね。ドーピングには頭きましたから。5/5の再戦の筈が9/16と僅か3ヶ月後だから、コミッショナーも結構焦ったと。

 でもこの3ヶ月のブランクがカネロにプラスした。私もYouTubeで見たんですが(笑)。思った以上にカネロが頑張ったし、絶対に引かなかった。ゴロフキンが詰めきれなかったのもあるけど、ウエルターのカネロがミドルで対等に戦う為には、丸1年掛かった訳です。でもドーピングはないけどね。

 結果はカネロの判定勝ち。賛否両論あるが、妥当な結果だと。ミドル対ウェルターという視点で見るからカネロに多少は重きを置くんですが。でもお陰でカネロは、ドーピングの負のイメージを払拭できました。

 フィジカルの充実もそうですが、戦術も良かった。キレのいいジャブと左右のストレートを武器に、ゴロフキンを寄せ付けなかった。左ロングも有効だったし、細かいパンチも肝心な所で有効打に。それ以上に積極果敢なスタイルが、終始印象を良くした。

 逆にゴロフキンは、距離を詰めての左右のフックがメインで、単調になりすぎた。終盤の様な左右のロングを繰り出してたら、カネロは終わってたかも。”ジャブジャブワンツー”というボクシングの基本を無視したらダメだね。

 特に2Rの打ち合いを制した時点で、カネロの勝ちを確信した。それにボクシングの質もカネロの方が全然上だった。ダメージはあったかもだが、ゴロフキンも流石に疲れてた。チャンスで下がる場面も見られ、それだけカネロの正確なパンチが効いてたんですね。 
村田敗れた (tokotokoto)
2018-10-22 01:02:45
村田完敗でしたね。

でも、試合当日にYouTubeでみれるとはDAZNも殆ど儲かんないでしょうが。

1ラウンドで勝負ありって感じでした。ブラントはヘッドムーブが巧みで、パワー不足を補ってました。フットワークも村田とは別もんでした。

唯一パワーだけは村田が上だったんですが。細かいパンチもらい過ぎたかな。ウエルター級とミドル程の違いがあった様に見えましたが。終始、ブラントの攻守に圧されてた。

テクニックがないとされてたブラントですが。アマの経験が豊富なだけに基本的なテクは村田を大きく凌いでましたが。

でもこのクラス相手にボコボコにされては、村田の復帰も微妙ですが。転んだサンはこの試合どう見ましたか。
Re:村田敗れた (lemonwater2017)
2018-10-22 01:47:35
tokoさん、速報有難うです。

 勿論、YouTubeで見ましたよ、CFが少しウザかったんですが(笑)。DAZNに加入しようかと思った程注目してたんですが、結果は完敗でした。

 ボクシングの質の差がモロ出ましたね。村田は今まで何やってきたのかと思える程、何も出来なかったです。単調な右だけで時間が過ぎただけでした。

 tokoさん言う様に、ブラントもミドルにしちゃ全くのパワー不足で、ウエルターでもやっとで。2人まとめてもデュランには歯が立たんと。

 テクニックもなくはないレヴェルですが、村田に比べれば雲泥の差ですね。

 このレヴェルに完敗とは、日頃からある程度強い奴とやっとかんと、大舞台で恥をかく。TV解説者も初回の時点で笑ってましたもんね、こりゃアカンわって感じでしょうか。

 ま、解説するまでもない試合でしたが。

 でも、村田はよく頑張った。才能も資質もないのに、金メダルと世界タイトルを獲得したんですから。今まで夢を見させてくれて有難うと心から言いたいです。

コメントを投稿