象が転んだ

たかがブロク、されどブロク

赤いビキニの女〜真夜中の訪問者”その131”

2023年07月09日 03時40分17秒 | 真夜中の訪問者

 最近は、てっきりテレビを見なくなった。
 子供の頃は(昭和生まれの世代は皆が誰そうであろうが)典型のテレビっ子だった私だが、ネットに感化されてきたせいか、受信機そのものが時代遅れの無能な産物に思える。
 昭和の娯楽を否定するつもりもないが、プロ野球選手にしろ、アイドルにしろ、メディアにしろ、あまりにも幼稚で初歩的なスキャンダルのせいか、今では無用の娯楽に思えてきた。

 ストリーミング配信で言えば、時代遅れとも言えなくもないアマプラは、決して傑作でも秀作でも良作なく、見応えもあってない様なレベルだが、人生の下り坂で老いていく私にはこれ位で丁度いい。
 つまり、”B級映画と老兵は死なずただ消えゆくのみ”なのである。
 コリン・ファレル主演の「ロブスター」(2016)も奇妙で愉快な展開だったが、全てを台無しにしたエンディングを除けば、そこそこ楽しめた作品だった。
 黒いパンストを履いたメイドが独身男性のオナニーを”援助”するシーンには監督の強いこだわりを感じた。事実、監督はこのメイド役の女性と、しかも撮影中に結婚している。


赤いビキニの女

 お陰で少し欲情した私は、エロいB級モノを見たくなった。
 そこで目に入ったのが「ステイ〜愛と裏切りの週末旅行」(2021)という如何にも??と思われそうなタイトルと、それに赤いビキニ女の表紙(写真)に惹かれた。
 胸の形からして明らかにシリコンだが、目を閉じてるからか、とてもチャーミングに思えた。
 が予告編を見る限り、B級にも及ばないポルノ崩れのレベルな事は容易に察しできたが、どうもこの娼婦まがいのブ○女に興味が湧くのである。
 少し調べると、監督も主演も脚本も制作も全て同一人物(スコット・ハム)である。表紙のビキニ女はミシェル・マーチンという女優さんで、監督の愛人?らしい事も容易に察しが付く。
 この業界では、主役や監督の愛人が茶番役を演じる事が多々あるが、これも例外じゃない。事実、この女もオープニングではセクシーさを強調するも、前半であっさりと殺されてしまう。
 作った様な下手な演技で、シリコン胸の上に、顔はズームアップするとグロテスクで見れたもんじゃない。30代半ばにしては老化と劣化が激しいが、ハリボテのメイクと緊張感のない出っ張った下腹、更に締まりの悪いブヨブヨの肢体は、逆に可愛くも滑稽に思えた。

 この不思議と奇怪な魅力ある女だが、見かけ程にタチの悪い女でもない。少なくとも私にはそう見えた。
 IMDbでは、”・・・an award-winning actress known for Howl,The Stay ,and The Last Rampage・・・”とある様に、慢性的に蔓延る落ちぶれた娼婦モデルではなく、脇役を固める典型の女優なのかもしれない。
 肝心の作品だが、思った以上に粗末品だった事に安堵を感じた。レビューには”3倍速で見ても・・”とあったが、サイコスリラーにしては何の見せ場もなく、監督が(愛人の為に)仕方なくカメラを回しただけのようにも思えた。
 ただ、オープニングの女のビキニのシーンだけは意外なほど印象に残った。カメラアングルも絶妙だったし、でもただそれだけであったのだが・・・


夢の中で

 ただ、不思議と嫌な思いはなかった。
 勿論、満足や充実には程遠いが、少なくとも「タイタニック」や「アバター」を見た時の様な、肩透かし感はなかった。駄作というレベルではいい勝負だが、オープニングだけで見れば「ステイ」の方が勝ってる様にも思える。
 そうこう思いながら、眠りに付いた。

 夢の中で私は、ある食事会に招かれていた。
 私は1人じゃなかった。横には、赤いビキニを黒いロングドレスで覆った女が座っている。
 どこかで見たような女だった。
 そう、「ステイ」の女である。映画の様にブ○ではなかったが、可愛くもなかった。
 だが(映画同様に)、赤いブラで覆われた胸は明らかにシリコンで歪なまでに膨れていた。
 (顔と胸を含めた)上半身に興味が失せると、私の左手はドレスの隙間を縫うように、女の出っ張った下腹の奥に潜り込んでいる。
 高価そうな黒いナイロン製のハーフバックが女の恥部をしっかりと覆っていたが、その上からでもしっかりと女の欲情を感じ取る事はできた。
 だがそれ以上、先に進む事はなかった。
 女はどうかは知らないが、私はそれだけで満足であったのだ。
 「ステイ」のオープニングでは、女が背を向け、黒いハーブバックをさり気なく披露するシーンがある。大してエロくも魅惑もないが、不思議と印象に残っていた。

 肉体派であろうが演技派であろうが、老い朽ちていく女優の行く末は残酷なものである。勿論、彼女も例外じゃない。
 「ステイ」には、滞在するの他に”(このままの状態で)留まる”という意味があるが、彼女は今のままの朽ちた肉体派女優のまま留まるつもりなのだろうか?
 だが、女が思う以上に劣化と老化は加速し、朽ちた肉体は急速に腐敗する。
 私の夢に登場した女は、まだ20代前半の頃の彼女だったと思う。一緒にいて悪い気は全くしなかった。しかし、欲情をそそる程の女でもなかった。
 そんな彼女も今は40近くになる。
 映画の中の彼女は、何とか女優であり続けれる最後の姿のようにも思えた。そして、夢の中の彼女は女優を夢見る自分の才能を疑わない女であった筈だ。

 私はそのままの状態でずっといたかった。
 しかし、夢はすぐに覚めた。
 そう「ステイ」とは、私の心の中を映し出していたのかもしれない。勿論、彼女も永遠に若いままで居続けたかったのだろうが、老いと劣化の徴候は既に見え隠れしていた。

 シリコン胸とケバく雑な化粧とダブついた下腹部。これが女優を夢見た女の行く末だと思うと、やはり複雑な気持ちになる。



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