
”その6”に行く前にもう一度、ハリー•ソナボーンとレイ•クロックの偉業をおさらいする事は勿論ですが。少しクロックをこき下ろし過ぎたので、大幅に修正&追記します。タイトルも多少変更です、悪しからずです。
これはマクドナルドのフランチャイズシステムの核の部分で、レイクロック自伝の”成功はゴミ箱の中に”では殆ど語られてない事ですが、とても重要な部分です。
因みに、大半は『マクドナルド〜わが豊饒の人材』(ジョン・F・ラブ著)を参考にですが。クロック自伝よりこっちの方が、ずっと的確で、ずっと戦略的ですな。バイブルという点にても。ホント、この本は読めば読むほど味が出るというか。ビジネス本としても最高傑作ではないかと。
とにかく、ユダヤ系の頭の良さというのは、強気を挫く頭脳を持ってるというか。知の力で強者を支配する事で、自らを昇華させるというか。特に、ソナボーンの不動産ビジネスにおけるカラクリと理論には、ホント頭が下がりますね。
ソナボーンが地主の首根っこを抑え込み、強者である銀行や機関投資家を何とか説得し、クロックの倹約と捨て身の精神が、弱者であるフランチャイジーを救い、マクドナルドを地獄の底から救い出し、急成長に結びつけるのですが。
まるで絵に書いた様なドラマチックな展開の連続に、読んでて背筋が凍りますね。
日本人には考えられない知のパワー。知略と戦略と、凄まじい程の開拓精神が全てを凌駕する。土を弄くるだけの、チョンマゲ族のチャンバラごっこに、男のロマンを求める農耕民族とは、かくも異なるか。
先ず、このソナボーンこそが、20世紀のグローバルなフランチャイズモデルの創始者だったんですね。そして、必死でこのフランチャイズを”表”で支えたのがクロックであると。
でも、クロック自伝には、このソナボーンに関しては、殆ど何も語られてない。孫も柳井氏も、彼に関しては何も語ってない。ビジネスが忙し過ぎて、勉強する暇がないか。ただのアホか。
話を戻します。
このソナボーンは、”成功の鍵はハンバーガーでもアツアツのポテトでもなく、フランチャイズという不動産にある”と人の良いクロックを怒鳴りつけた。
しかし1957年、クロックはフランチャイズシステムを整備し、拡張させ、我がマクドナルドが、ファーストフード業界の王になるべき条件を全て整えたと錯覚した。
事実、彼のお陰で、フランチャイジーは非合法なロイヤリティや高い備品を押し付けられる事なく、ハンバーガー作りと経営に集中出来た。一方、社外では数多くの小規模なサプライヤーがリベートを取らず、薄利多売で儲けさせてくれるマクドナルドとの取引に入った。お陰で、フランチャイズはかなりの利益を上げるのですが。
しかし、クロックの計画には大きな穴があった。本社の利益が薄過ぎるのだ。ファーストフードに恋し過ぎた”内なるセールスマン”は、15セントの美味いハンバーガーをより多く売る事だけを考えてた。
この古風で倹約家の彼の一面は、オートマ化した外食産業の能率ばかりに気を取られ、マクドナルド兄弟の店を全国チェーンに仕立てよう。外食産業と食品加工業を一変させようと、そればかりを思い詰めた。
しかし、フードビジネスに”恋する男にカネの光は見えない”のだ。クロックは6億ドルを遺し、1984年に亡くなったが。一度も蓄財を口にした事はなかったという。
そんなクロックは当然、マクドナルド社の儲けにも関心がなかった。マクドナルド兄弟には寛大過ぎて、加盟店の成功には気を使い過ぎて、仕入先には正直過ぎた。
事実、当初のマクドナルド社の取り分は、売上の僅か1.9%のロイヤリティに過ぎず、その内1/4はマクドナルド兄弟に払った。この取り分では、クロックがつくった営業チームの経費はおろか、フランチャイジーに最小限のサービスを提供するにも足りなかった。
その上、クロックは、加盟店に納める膨大な食品や設備から、多額のマージンを取る様な事もしなかった。彼が所有するプリンスキャッスル社が納める1台150ドルのマルチミキサーのささやかな儲けだけであった。
彼は、フランチャイズをタネに儲ける手段を全て拒否したが、それに代わる金儲けの手段を編み出した訳でもなかった。
事実、50年代後半はクロックを除く、役員の全員がマクドナルドをネタに大儲けしてたという。フランチャイズ全体で年20万ドルの売上があったが。本社の取り分はサービス料の2800ドルのみ。クロックはバカ正直に、その中から千ドルを名義料として、兄弟に払ってたのだ。
1985年になると、売上の3%を取るが、バックアップやリサーチに要するコストは総売上の4%に達している。これでも赤字なのだ。
もしクロックのやり方を頑固に守り、このサービスを続けていれば、1985年の110億ドルの総売上に対し、4億3300万ドルの収益は不可能だった筈。
ソナボーンの新しい”金儲け方式”に切り換えていなければ、1億1000万ドルの欠損を出した筈。クロック流マックドナルド経営では、経理的には”倒産への道”だったと。
ソナボーンが怒鳴ったのも当然だったのだ。
今日では、マクドナルドを金のなる木に変えたのは、クロックでもマクドナルド兄弟でもなく、ハンバーガーでもフレンチフライやミルクシェイクでもなく。不動産投資とハリー・ソネボーンの”知られざる財テク技術”であったんです。”その1の1”はここまでです。
マクドナルドの純益の1/3は24%の直営店からですが。残りの2/3は、直営店以外の不動産の賃貸料から得てると言われてます。
これを見ただけでも、如何に不動産ビジネスのお陰でマクドナルドが支えられてるかが、理解できます。ソンナボーンの不動産戦略と交渉術とチームが上手く機能した結果ですか。見事としか言いようがありません。
勿論、クロックの執着と倹約と、フランチャイズに対する熱き思いにも頭が下がりますが。クロックの陽とソンナボーンの陰、熱情と冷静さ、営業と財務、フードビジネスと不動産、全てに二人は対称的だったんですかね。
今、やっと腰を据えて、『マクドナルド〜わが豊穣の人材』を読んでんですが。もう、凄過ぎますね、全てにおいて。これを映画化してほしかった。
この本の中に、マクドナルドの闇の中の成功哲学と苦悩の物語の全てが収められてます。改訂版が出ないのが不思議な位です。”成功はゴミ箱の中に”ではなく、この本の中にあるんですね。
paulさんには、何時も貴重なコメントを有難うです。こういったビジネス本もじっくりと読めば、色んなヒントが隠されてんですね。クロックやソナボーンだけでなく、マクドナルドを取り巻く全員の勝利なんですね。