｢FLU 運命の36時間｣〜殺処分すべきはコロナではなく､腐った政治家どもだ

　この映画を見て､この時期に高級料亭で会食し､現を抜かす官僚クラスの政治家は､焼却処分すればいいと強く思った。
　まさに､”自粛要請のパラドクス”はこういう時に強く顕れる。

　｢FLU 運命の36時間｣のクライマックスでは､ウィルス感染者を軍隊が焼き殺すシーンが印象的だった。しかし､殺処分すべきは感染者ではなく､自分の事しか考えない政治家や議員たちだ。救われるべき命を救おうともしない内閣府は即刻焼却処分にすべきだ(当然ですが､実際に殺処分したら犯罪ですよ^^;)。
　しかし現状は､会食し遊びまくる官僚には身内もメディアもSNSも何も咎めない。一方､大衆が少しでも遠出しようものなら､あらゆる方向から強く叩かれる。
　本来なら､会食した政治家らは厳しく処罰され､自粛を外れた国民には厳重注意で済ますべきだろう。しかし現実は全く逆である。
　日本列島から無能な政治家や議員たちが消えてくれたら､コロナが彼らを全て駆逐してくれたら､どれ程の理想的な社会が出来ようか。そう思うのは私だけだろうか。

　こういう作品を見る度に､韓国映画の底力を感じてしまう。コロナがもたらすリアルな脅威の全てが｢FLU 運命の36時間｣(2013)の中に凝縮していた。
　ハッキリ言って､この作品に登場するキャストは､韓国のTVドラマにありがちな”ワザとらしい風”の美男美女ではない。何処にでもいる様なごく普通の庶民に思えた。
　後半から重要なポジションを占める子役のパク･ミナも､とりわけ可愛いという存在でもない。むしろ､ブサイクな子役に映るかもしれない。
　しかし､一人一人の演技は実にリアルだ。パニックに陥った崩壊寸前の医療現場は､リアルを超えてるようにも見えた。

一台のコンテナから悲劇は始まった

　郊外の街･盆唐に到着した､ベトナムからの密入国者たちを運ぶコンテナの中でその悲劇は起きた。コンテナ内で鳥インフルエンザH5N1の変種ウイルスが蔓延し､一人を除いて全員が死亡していたのだ。
　たった一人の生存者が市内へと逃亡してから24時間しない内に､爆発的な勢いで拡散する超変異型ウイルス。住民が次々と命を落とす事態に､韓国政府は国家災難事態を発令し､盆唐の完全封鎖を敢行。住民たちは感染の恐怖に暴徒と化す・・・

　ここまで書けば､この映画の骨組みは理解できようが､ここでは伏せるが､後半こそが凄まじい。
　盆唐が武漢を指し､鳥インフルエンザH5N1がSARSコロナを指すのは明らかだ。
　しかも､感染を重ねる毎に､発症から死亡までのスピードも速まり､医療チームや政府の対応も後手後手に回る所も､実にリアルである。
　治療法が判明しない中､この世界規模の殺人ウイルス感染を食い止める為､ソウルから僅か15kmしか離れていない人口47万人の盆唐をどうやって封鎖するのか？
　対策会議で医療関係者と政府が真っ向から対立する様は､現在日本が置かれている状況と全く変わらない。
　目前に迫る国際的な行事を優先させたくて封鎖に否定的だったり､過去の事例から楽観視する政治家たちの油断といい加減さは､日本の内閣府のそれと全く同じ状況にある。
　それに､国際的行事を東京オリンピックに置き換えると､2013年に公開されたこの韓国映画は､2021年の日本の緊急事態宣言時をそのまま再現してる事になる。

　以下､”コロナ感染拡大の今こそ観たい”を一部参考にします。

リーダーのあるべき姿

　殺人ウイルスに対する政府の初動の遅れが､後のパニックや悲劇的展開を招いてしまうのは､今の日本も全く同じだ。
　こうした状況を見て､初めてウイルス感染の重大性に気付いた政治家たちが態度を急変させ､自分たちの家族に向かって”今すぐ町を出ろ！”と一斉に電話をかける様こそが､身近に危険が迫らないと重大さに気付かない､人間の驕りや傲慢さが込められている。
　つまり､この作品に登場する政治家は､危機感ゼロの菅政権の官僚や地方議員と全く同類である。
　それに､感染拡大を喰い止める為､盆唐の住人をまとめて隔離した結果､隔離キャンプ内でウイルスが蔓延する様は､長崎に寄港したコスタ･アトランチカ号のクルーズ船の状況とそっくりだ。

　隔離地域から感染者が出たら発砲するよう韓国軍に要請する大国アメリカの思惑と圧力。そして､こんな状況下にてもアメリカの言いなりになり､市民の犠牲を黙認する韓国総理は独断で､軍による民間人への発砲やアメリカ空軍による隔離地域への空爆を許可する。
　しかし､最後まで国民の安全と治療法の発見に全力を尽くそうとする韓国大統領の姿は理想のリーダー像で､思わず私めのハートは最高潮に達した。
　政治や外交上の駆け引きに走り､国民を犠牲にする総理とは逆に､国民の命を最優先し､アメリカの無謀な要求に対して断固抵抗する大統領。その姿は映画の中ではあるが､経済や支持率重視の菅内閣とは大きく異なる。

　この映画は単に､ウイルス感染の恐怖を大げさに描いた作品ではない。
　強いリーダーシップを持ち､国民を第一に考える大統領といった､理想の政治家の姿がそこにはある。
　国家的危機に対しては､これくらいの指導力は発揮して欲しい。我ら日本人にそう思わせる作品でもあった。
　以上､シネマプラスからでした。

最後に〜いま､日本人が見るべき映画

　症状が出ても入院できず､容体が急変し､急死したり､PCR検査で陰性と判断された人がコロナ感染により死亡したりするケースが次々と報告されてる。
　このままで行けば､コロナに感染すればたとえ無症状でも､死に至るケースが出てくるだろう。いや既に出てるかもしれない。

　｢運命の36時間｣ほどにド派手ではないが､”今そこにある最悪の危機”という点では､全く同じである。
　殺人ウイルスの驚異をビジュアルで観客に理解させる"地獄絵図"は､もう1つのコロナ･シュミレーションとも言える。

　政府は､目に見える形でのコロナの”地獄絵図”を国民に説明しない限り､内閣府も国民も危機意識は時間と共に薄れる。
　コロナ危機を正しく理解する為にも､コロナ感染の明確なフロー図は必須だ。数字は分析&解析して初めて有効なデータとなり､データは可視化して初めて意味をなす。
　具体的な対策を練るのはそれからなのだが､今の内閣は対策すら打ち出せない。いや､打ち出したとしても暗中模索状態で殆どがハズレだ。故に､仕方なく高級料亭での会食でごまかし､政府内から感染者を出す始末。

　映画は脅威を可視化する強力なツールでもある。しかし､コロナの脅威が大衆の目にハッキリと映る頃ではもう遅い。コロナウィルスが強力な殺人ツールになる前に､強力な追跡ツールで対抗する必要があった。
　オリンピックは500%中止すべきだ。そして､選手村用の施設を隔離用病棟に変え､都内の自宅療養と調整中の計8400人を今すぐ入居させるべきだ。　
　イベントも全面中止すべきだ。飛沫感染よりも接触感染の方がコロナが拡散しやすいのは証明されていた。事実､江東区の運転士39人が洗面所の蛇口を介し､コロナに感染したとされる。

　殺人ウィルスのリアルな脅威を肌で感じる為にも､日本人はこの映画を絶対に見るべきだろう。いや､少なくとも見て損する事はないだろう。