象が転んだ

たかがブロク、されどブロク

ゴーンが堕ちた、21世紀版クーデターの罠とは(12/8追記)〜ゴーン逮捕の7つの疑問〜

2018年12月07日 15時59分45秒 | カルロス・ゴーン

 ブログでも書いたが。ゴーンの逮捕は、法令遵守違反を糾弾する事で、経営トップを追放するという一種の(コンプライアンス)クーデターの側面があると。司法取引が合法化された日本で、今後更に、この新たな”21世紀版クーデター”が広がるのか。

 コンプライアンス・クーデターとは直訳すれば、”法令尊守に基づく反逆”の事である。

 一方、クーデター(暴力的反逆)の語源の国フランスでは、燃料税引上げに大衆が反発し、クーデターの弟分であるデモ(暴動)が起きた。全く笑えますな。

 ゴーンの不正は、腐る程メディアで報じられてるが。《剛腕ゴーンが落ちた”コンプライアンスクーデター”の闇》Newsweek日本版(11/29)を自分なりに主観や愚痴を交えながら、紹介します。
 

①ゴーンの不正の真相とは?________
  
 第一の不正。日産はオランダでベンチャー系子会社を設立してたが、孫会社に資金が移動され、その孫会社がブラジルのコパカバーナにあるリゾート物件を約5億円で購入。さらにこの孫会社は、レバノンのベイルートの高級住宅を約10億円で購入した。
 この2つの”贅沢な”物件は、ゴーン自ら自宅用として購入、その改装等の費用は20億円を超えた。

 第二の不正。皆さんご存知の、有価証券報告書の役員報酬の”過少記載”の件だが。特捜部逮捕の直接のこの被疑事実は、ゴーンが10~14年度の5年間で約100億円を得ていたにも、有価証券報告書上は半分の50億円の記載をさせてた事だ。更に17年度までの8年間では、”過少記載”の総額は計約80億円に達する。

 第三の不正。更にゴーンは、株価連動型インセンティブ受領権(SAR)として約40億円の報酬を得ていたが、これも記載していない。

 以上が、ゴーンの主たる3つ不正の真相である。

 子会社の管理や資金の移動など一連の実務処理を担う法務担当の外国人専務執行役員と、日本人幹部社員が調査に協力し、東京地検との間で司法取引に応じた。
 つまり、日本人だけじゃ不正は見抜けなかったのか。司法取引なくして、不正の真相は埋もれたままだったのか。ウウうーん。

 結局、贅沢物件2つの35億、虚偽の80億、それに、SARの40億。合計155億円の不正を働いてたのだ。よくやりまっせ、ゴーンの旦那。不正の豪華デパートってとこか。


②でも不正とは言い切れない?_______

 しかし、ここから話がややこしくなる。”過小記載”の虚偽以外の件が、不正とは言い切れないのだ。

 ゴーンにコンプライアンス違反(過小記載)があったという事は明らかだが、日産に対する背任容疑にまで追い込めれるかは不透明だと。

 まず最初の”贅沢”不動産物件の購入だが。会社役員用の社宅や福利厚生の為に、法人が不動産を購入するのは珍しくない。
 ゴーンとその家族が独占的に使用してたという実態があったとしても、不動産価額が減少してなければ、投資判断として適切だったと言える。

 仮に損害が発生していたとして、オランダ、バージン諸島、レバノンの関連会社を通じ、複雑に作り上げられた不動産購入スキーム(不動産計画の枠組み)に、特別背任罪などを適用できるかは微妙だと。

 つまり、この2つの不正に関しては、ありとあらゆる抗弁が可能性なのだ。今回の逮捕容疑が、客観的に自明な”有価証券報告書の虚偽記載”だけになったのは、そうした事情が考慮されたんですな。事件という”強引すぎた逮捕劇”とみなされたのも頷けますね。


③でもなんで今更?________ 

 しかし、”有価証券報告書の過小記載”は、少なくとも4年前には、一般に公開されていた既知の事実。でも何故このタイミングで?
  
 ゴーンが、”個人情報だからSARは記載するな”などと、高圧的に指示した事情があったとしても。財務情報の開示は企業法人としての義務であり、日産は会社として8年間も”虚偽記載”を放置していた事になる。
 
 アメリカなら”証券詐欺に当たる重罪だろ”と戒めるのに、何事もなかったかの様に、会社として黙認してきたとすれば、当時の取締役の善管注意義務違反(善良なる管理者としての注意義務)も問われかねない。にも拘らず、なぜ日産はゴーンの不正を告発したのか? 


④密約が引き金になった?________
 
 この事件の背景にあるのが、仏ルノーと日産の経営統合戦略だ。日産株を43.4%保有するルノーの稼ぎの約半分は日産がたたき出してると。

 ルノーの筆頭株主である仏政府は近年、アライアンス(ルノー日産同盟)の維持だけでは飽き足りず、”不可逆的な連携”(奴隷化)として、ルノーによる日産の統合を強めてきた。

 財政再建策として、国有企業株の売却を推し進めるフランス政府は、影響力の希釈化を防ぐ為、14年に株式を2年以上保有している株主の議決権を2倍にする法案を成立させ、筆頭株主でもあるルノーでの発言力を倍増させていた。

 今年6月のルノー株主総会でゴーンが会長が再任されると、それまでアライアンスの現状維持路線を取ってたゴーンとマクロン仏大統領との間で、”日産の経営統合”の密約が交わされたとの噂が流れた。
 ”ゴーンやはりお前もか?”って感じですな。

 ここにて危機感を抱いた日産。99年の資本提携で経営危機から救済してくれた恩があるとはいえ、現在の経営状況の実力からして、ルノーに統合されるのは容認し難い。
 アライアンス(同盟)の守護神であったゴーン会長の統合へ舵を切る姿勢が呼び水となり、”ゴーン追放”の機運が高まった可能性が。

 ゴーンを告発する”内部通報”が、半年前にもたらされたのは単なる偶然か。それともこのような機運の中での戦略的な動きだったのか。
 

⑤司法取引が生んだ造反劇?________

 ブログでも述べた様に、いずれにせよ今回の逮捕劇は、”コンプライアンス違反”を糾弾する事で、経営トップの追放に成功したという意味では、”法令尊守”を掲げた”クーデター”(反逆)だったとも言える。

 クーデターとはフランス語源で、”暴力的な手段の行使による政変”を言う。故に、フランスとしては自業自得なんですな。ザマミろっげです(笑)。

 勿論日産側からすれば、組織を防衛するための”正義の鉄槌”かもしれないが。司法捜査を巻き込み、トップを追放したのであれば、”クーデター”との非難は免れないと。

 しかし、ゴーンのコストカッターも”暴力的排除”に相当するから、クーデターと非難される筋合いはない筈ですがね。違いますかなNewsweekさん?

 つまり、今回のコンプライアンス・クーデター(法令尊守的反逆)を可能にしたのが、18年6月から施行された日本版司法取引だと。

 これまで内部告発を行えるだけの十分な情報を持っている社員は、自身も違反行為に関与してる事が多く、自ら摘発されてしまうのを恐れ、告発を躊躇していた。

 しかし司法取引の導入で、捜査に協力すれば刑事処分の減免を受ける事が可能になった。まるでサスペンス映画の世界ですね。


⑥クーデターによる権力の確立?______

 コンプライアンスを大義に掲げた腐敗の糾弾は、しばしば権力闘争における権力維持、あるいは奪取の手段として用いられる。例えば、中国の習近平政権による権力確立過程では、多くの政敵が腐敗を理由に摘発さ、失脚した。

 ベトナムやサウジアラビアでも同様に、腐敗撲滅が大義に掲げられ、有力者が失脚している。  
 
 これらは権力を奪取するクーデターというより、既に権力を有している側による政敵の排除だ。勿論、歴史的には腐敗糾弾を掲げて政権を崩壊させる本来の意味でのクーデターも多くある。

 日本企業もそうした動きに無縁ではない。15年6月、孫正義社長の後継者として鳴り物入りで、ソフトバンク副社長に就任したニケシュ・アローラ氏が、僅か1年で”任期満了”に伴い退任したのは、ソフトバンクとの利益相反に当たる投資取引を行っているのではないか、という匿名の告発をきっかけとした特別調査の直後だった。

 退職金を含め、役員報酬として300億円超の巨額の金銭を短期間で手にしたアローラ退任については、利益相反の疑惑追及が社内関係者の内部告発によるものだった可能性が。故にこれも一種のコンプライアンス・クーデターだったと言える。


⑦虚偽の自白を生むリスク?________

 今回の事件は、司法取引を前提としたコンプライアンス・クーデターが今後、日本で本格化する可能性を示してる。コンプライアンスには誰も正面から異議を唱えられないからだ。

 17年には、米ウーバーの創業者トラビス・カラニックCEOが、セクハラなどのコンプライアンス違反の管理責任を問われ、辞任に追い込まれた。 
 このケースは、CEO自身ではなく、部下のセクハラなどのコンプライアンス違反の管理責任を問われたという”間接型”だが。眼の上のタンコブだった”じゃじゃ馬CEO”を投資家が追い落とした、という点ではクーデターだ。

 しかし、企業のコンプライアンス違反を口実とした”クーデター”には、捜査機関との司法取引で都合のいい”虚偽の自白”が行われるリスクも。日本企業はこの”両刃の剣”を使いこなせるのだろうか。


⑨最後に________

 結局、血で血を洗うではないが、(法的な)”造反が造反を暴く”という一見矛盾した縮図は、日本人の感覚にはそぐわないかもだが。”西郷どん”の様に、明治政府の曲解が士族の反逆(クーデター)を許したとも言える。この様に、日本の過去の歴史でも、似た様な事は実際に起こってはいる。

 事なかれ主義の、自己否定や二重外交が不得意な農耕族にとって、単なる”裏切り”に思えるだろうが。権力とはそうやって大きくなり、支配を維持してきたのも事実。

 司法取引によるクーデターという”21世紀版の反逆”は、権力を奪い返す有効で合理的な手段になり得るのか。個人的にはこのやり方も、脆くも危うい安直でインスタントな反逆にしか思えないのだが。

 そうこう思ってるうちに、フランスでは正真正銘の市民暴徒が起きてしまった。デモもクーデターも仕掛けるものではなく、人類の脊椎動物的本能に従い、条件反射的に自然発生するものなのか。

 結局、ゴーンという暴君に頼った時点で日産は、フランス政府の支援を受けた時点で、ルノーは終わってるのかなという気がしなくもない。そして、日米英に切り捨てられるという噂のフランスも(12/8追記)。



12 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
クーデター (paulkuroneko)
2018-12-09 11:28:26
お早うございます。

50億じゃなくて155億の不正ですか。
もうゴーンも終わりですかね。これだけの額になると言い逃れは出来ないでしょうか。

既にフランスのマクロン政権はガタガタになりつつあるし、ルノーと共に去りゆく運命ですかね。

しかし、日産も暴君ゴーンを野放しにしてた罪は問われるでしょうし、99年の赤字のままの頃の方がずっと良かったのかな。
返信する
あの頃に戻りたい (lemonwater2017)
2018-12-09 13:30:33
paulさんコンニチワです。

松任谷由実の歌で”あの頃に戻りたい”というのがありましたね。今の日産の心境はこんな所でしょうか。

ゴーンを逮捕抑留した所で、何かが変わるはずもないんですが。司法取引が日本でも認められるようになり、傲慢で裸の王様的なトップを追い出すケースは次々と出てくるでしょうね。

政治の世界でも司法取引が加速すれば、ワンマン政治家なんてすぐに放り出されるんでしょうか。

最悪、ゴーンもルノーもマクロン政権も、そして日産も終わりになるかもです。でも、自業自得と言えばそれまでなんですが。
返信する
ゴーンも終わりね (HooRoo)
2018-12-10 07:12:20
転んだサン続けてです。

ゴーンの顔見てると腹がたつの、最初から物凄く悪い人に見えた。
転んだサンも言ってたでしょマフィアに見えたって。

そうよあの人最初からマフィアだったの。レバノンのマフィアね。ほんと留置場がお似合いなのよ。

ではバイバイ(^-^)
返信する
ゴーンの逆襲は? (tokotokoto)
2018-12-10 08:15:05
お早うです。

ゴーンやっぱりでしたか。陰で悪いことやってまんねん。日産も見て見ぬふりで同罪ですやろ。

でも、ゴーンの逆襲がウェブでも噂されてますが。どんなシチュエーションが考えられますか?

でもヤル事はやってんですから、逆襲のしようもないと思うんですが。その逆襲というのが日産に向けるものか?ルノーに仏政府に向かうものか?

海外サスペンスみたいになりそうですかね。

転んださんの<ゴーンの逆襲>ブログを楽しみにしてますよ。
返信する
Hoo嬢サン今晩わ。 (lemonwater2017)
2018-12-10 21:19:18
でも、本当に悪い人って人相は良いんだけど。ゴーンは例外かな。人相通りの悪い人?

結局、日産の再建は誰でもよかったのかな。借金さえチャラにしてくれればね。

日産の古い体質を改善するには、ゴーンの様なバカが必要だったかもよ。

Hoo嬢も色エロと勉強だね。

では、バイバイ。
返信する
ゴーンの逆襲? (lemonwater2017)
2018-12-11 00:20:01
tokoさん今晩わです。

ゴーンの逆襲は、あってない様なもんですかね。
海外メディアは、ゴーンの逮捕を厳しく捉えてますが。

やはり、ゴーンのした事はアカンですね。あまりにも幼稚過ぎた。

ブログにするか迷ってますが、多分何らかの報いは受けるでしょうか。

様子を見守るしかないですね。
返信する
ゴーン再逮捕 (hitman)
2018-12-11 10:23:53
続けてですが。
ゴーン再逮捕されました。期間が異なるだけで同じ逮捕容疑です。

欧米メディアからは批判が集まってますが。日本国内でも意見は真っ二つみたいです。私的には、お互い様だろってとこですが。転んださんも言ってられた様に、司法取引とは元々不正を不正で暴くのが基本理念ですから、わざわざ批判するのもお門違いとは思うんだが。

でも再逮捕により、ゴーンの傷口が広がりつつある事は事実ですね。そういう意味では日本人お得意の兵糧攻めというとこでしょうか。
返信する
Re.ゴーン再逮捕 (lemonwater2017)
2018-12-11 11:58:08
hitmanさん続けてです。

ゴーンの再逮捕はやっぱりという感じですかね。勾留期間を引き伸ばしてゴーンの不正をじわりじわりと暴いてく戦法ですか。

海外のメディアは今の所ゴーン寄りの発言ですが。不正の真相次第では鞍替えする可能性もなくはないですね。

これも司法取引の大きな特徴で、やり過ぎると違法取引になるから、東京地検もメディアからパッシングを受けながらも慎重に進める必要があります。

ま、それ以上に民事訴訟で株主側が賠償請求する金額次第ではゴーンが破産するという噂もありますが。

これもじっくりと様子見ですかね。
返信する
サムライホームラン (プロの魂)
2023-08-17 13:02:26
ルパン三世のマモーの正体。それはプロテリアル安来工場で開発されたSLD-MAGICという高性能特殊鋼と関係している。ゴエモンが最近グリーンレジリエンス新斬鉄剣と称してハイテン製のボディーの自動車をフルスピードで切り刻んで、またつまらぬものを斬ってしまったと定番のセリフ言いまくっているようだ。話をもとにもどそう、ものづくりの人工知能の解析などを通じて得た摩耗の正体は、炭素結晶の競合モデル/CCSCモデルとして各学協会で講演されているようだ。
返信する
プロの魂さん (象が転んだ)
2023-08-17 13:19:17
はじめましてです。
でもゴーンは今頃何してるんでしょうね。
唯一、それだけが興味あるんですが
コメントどうもです。
返信する

コメントを投稿