私は一度だけ、路上生活者を車に乗せた事がある。 信号待ちで止まってると、いきなりドアを開けて乗り込んできた。男の強烈な悪臭に圧倒され、断る言葉すら思いつかなかった。 決して悪い人じゃなかったが、私の身体は一瞬にして無数のシラミに覆われ、全身が痒くなりだした。野良猫も生臭いが、ここまでは酷くはなかった。 とにかく臭いが半端じゃない。悪臭という次元を遥かに超えていた。玉ねぎが腐ったとかいう、それ以上 . . . 本文を読む
従軍記者でもあったアーネスト・ヘミングウェイの有名な言葉に、”勇気とは困難な中での気高さだ”というのがある。 事実、彼は砲弾で命を落としかけながらも負傷した兵士を背負って生還し、一躍”勇気ある者”として名を馳せた。 若い時、そんな言葉を聞いたら、さぞかし胸が踊った事だろう。 まるで、三島由紀夫の「剣」に出てくる”生への覚悟” . . . 本文を読む
「村上春樹の小説を僕が嫌いな理由」というコラムがあった。 コリン•ジョイスという英国のジャーナリストが書いたものだが。ああ地球と裏側に僕と同じ”偏狭?”な考えを持つ人がいるもんだと感心した。 つまりジョイスさんは、村上春樹の長編モノがどうも嫌いみたいなのだ。 ”ハルキスト”には十分に失礼だとは思うが。私は村上春樹氏の翻訳だけはどうも好きに . . . 本文を読む
「今時のカポーティ回想録(後半)」に寄せられたUNICORNさんのコメントにこうあった。 父は詐欺師に近く、母は高級娼婦に近かった。カポーティ(トルーマン・パーソンズ)が生まれるとすぐに両親は離婚し、父の祖母の親戚を転々とする。 しかしそこには、後のピュリッツァー賞女流作家のハーパー・リーがいた。カポーティは2歳年下のこの幼馴染と永遠の親友となる。 その影響もあってか、早熟のカポーティはすでに文 . . . 本文を読む
昨日の”前半”では、「冷血」(1966)と「カメレオンの音楽」(1980)までの、カポーティの生き様と空白と苦難を、沢木耕太郎さんの解説を交え長々と描きました。 そして今日は、未完に終わる「叶えられた祈り」以降の、悪戯に挫折するカポーティについて紹介したいと思います。 因みに、「カメレオンの音楽」からカポーティが心臓発作で急死するまでの最後の4年間は、彼の”新 . . . 本文を読む
「冷血」の記事に寄せられたコメントに、こうあった。 ”確かにあれは事故だったんだ。 しかし、偶然にしては度が過ぎている。 ペリーは同性愛者で女性的でもあったが、殺人の現場では遥かに攻撃的であった。 その事がカポーティの全てを惹きつけたんだね。カポーティ自身、同性者である事はある短編で吐露してるから。 「冷血」は事故の様に殺人を犯したペリーの物語だが、なぜ、事故の様に人を殺す事になった . . . 本文を読む
出版エージェントのアランは、ヨーロッパから帰国した父ニルスと数年ぶりに会った。ニルスはアランと稀覯書愛好の友人に、パリのアメリカ人夫妻を描いた短編を読ませる。 文体から著者を推定した二人は興奮した。入手経路は明かさずに”1922年パリのヘミングウェイ原稿盗難事件”を匂わせたニルスは、短編は全部で20編あると言う。 ヘミングウェイ学者も巻きこむスリリングな長編(Google . . . 本文を読む
ルポルタージュというより”インタビュー”というより、いや恋人同士の囁きに映った。 沢木耕太郎と言えば、”ルポルタージュの第一人者”として知られ、日本中にファンも多い。私も大ファンの一人で、「深夜特急」や「一瞬の夏」には感服させられた。特に「敗れざる人々」には、我が青春の価値観を一変させた。 「流星ひとつ」は、沢木氏がノンフィクションからルポルタージ . . . 本文を読む
誰しも、世の中には殺したいほど憎い奴は1人や2人はいるだろうか? もしそういうのがいない人は、よほど平和ボンボンか、真剣に”生”を生きてないか、といったら失礼だろうか? そして、もし殺したい奴が目の前にいたら、握手をしてお互いを慰め合い、”過去の事だよ、お互い色々あったし、気にしてないさ”って赦し合えるだろうか? それとも、懐から予め用意してた刃物 . . . 本文を読む
”誹謗中傷と権力批判は別もん”に寄せられたコメントに”大衆の反逆”というのがあった。人と違ってるという事が誹謗中傷のネタになり、”大衆の反逆”を生み出すとしたら? ”強者が強者に敗れ去る時、屈辱は憐れみに変わる”でも書いたが、”大衆の反逆”が古い権力を打ち砕くとしたら?そして、 . . . 本文を読む