静かな場所

音楽を聴きつつ自分のため家族のために「今、できることをする」日々を重ねていきたいと願っています。

サヴァリッシュ=N響の「第9」(73年、NHKホール杮落し公演)を聴いた

2013年08月11日 22時34分19秒 | ベートーヴェン
 今日は妻の誕生日、ということで、日頃は質素倹約・粗食の日々の我が家も夕飯は「三谷の鰻」でした。贅沢ですね~絶滅危惧種(?)になるかも知れませんから、もしかしたら今夜の鰻は「生涯最後の鰻」になるかも知れません。
 さて、20年に一度の御遷宮の年を迎えた伊勢市からは、連日、御白石持の熱気に沸く様子が伝えられております。いやぁ、すごいなぁ。伊勢市民、羨ましいなぁ・・・。今から40年前、私がまだ伊勢に住んでいた1973年も御遷宮の年でした。そういうこともあって、73年は何かと記憶に残っている年であります。正月のFM特番で、NHKの新しいホールが間もなく完成することや、そのホールにはパイプオルガンが備えられていることを知りました。新聞に開館記念コンサートに招聘されるアーティストのラインナップが載り、カラヤン指揮ベルリン・フィルの名前を見た時はけっこう興奮したものです。もしかして、聴きに行けたりして・・・なんて楽しい想像を膨らませたりしました。開館後、しばらくはN響定期でも、他オケの公演でもオルガン付きの曲が頻繁に選曲されていたような記憶がありますが、実際はどうだったのでしょうね。
 さて、この「第9」は1973年、NHKホールこけら落とし公演のライヴです。


ベートーヴェン/交響曲第9番「合唱付き」


アンナ・トモワ=シントウ(ソプラノ)
荒道子(アルト)
ヘルマン・ヴィンクラー(テノール)
ローラント・ヘルマン(バス)

東京芸術大学合唱団

NHK交響楽団

ヴォルフガング・サヴァリッシュ(指揮)

1973年6月27日 NHKホール



 この演奏は、当時(まだ白黒しかなかった我が家の)テレビとFM放送で聴きました。
 記憶の中では「けっこう気迫のこもった激しい演奏」と刻印されていました。

 第1楽章の第1主題が、ティンパニの激しい強打と共に鳴り響いたとき、となりにいた弟(当時、中1)に思わず「これは、すげぇ演奏やでぇ」と言ったのを覚えています。
 テープに録ってないので、細部の記憶はあまりありませんが、昨夜、このCDを聴いて「ああ、こうだった、そうだった」と思い出された部分がいくつもあるのと同時に、当時は気づかなかった、この演奏の特徴をあらためて知り新鮮な感動もありました。
 やはり、むかし懐かしい演奏でも、音源が手元にあって何度も聴いてきた場合と違い、今回のように、その時に接しただけで以後ずっと遠ざかっていた場合は、ある程度勝手に形成された姿で記憶に残ってしまう、ということをあらためて感じました。
 しかし、これは記憶の中の姿以上に素晴らしい演奏でした。
 全体に、いかにもサヴァリッシュらしい細かなところまでよくコントロールされた演奏ですが、それが振幅の大きなうねるような濃厚な表情と共存していて、独特の緊迫感を生じています。
随所に聞かれるサヴァリッシュのうなり声などからも、そうとうに気合が入っていると感じさせられます。
 第2楽章の冒頭やトリオからスケルツォに戻る部分でのフルトヴェングラーばりのルバートや、速い目テンポで美しくも鋭い刃物の上を歩むみたいな凄みを感じる第3楽章など、テレビとFMで一度ずつ聴いただけの記憶にはなかった新しい発見でした。
 東京芸大の合唱もすばらしかった。
 終結部は(これは記憶にも残っていたのですが)合唱が切れたあと、テンポをやたら速めることなくじっくりと楽器を存分に鳴らしながら、最後の管の上昇音型をくっきりと浮き上らせて(こういう「冷静さ」みたいなところが彼らしい所以ですが)鮮やかに終わります。
 会場の熱狂もさもありなん。
 いや~、眩しい程に溌剌(はつらつ)として呼吸の深い、すばらしい「第九」でした。
 サヴァリッシュ=N響のライヴは、たくさん聴いてきましたが、当時は「いつでも聴けるじゃん」みたいな安心感と言うか「日常感」を勝手に持っていて、テープに録っても消してしまったりで、手元に残っている音源はさほど多くありません。
 ずっと「も一度聴きたい」と願ってきた、この演奏を聴くことができて、本当によかったです。







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