
久しぶりに、ガツーンと来る角田光代作品を読んだな、って思いました。
普段は一気に読める角田作品ですが、本作は読むのに時間がかかって、2,3日に分けての読書でした。
いやー、すごかった・・。
内容は、子供を溺死させてしまった女性を裁く事件の補充裁判員に、たまたま選ばれてしまった里沙子という女性のお話。
里沙子にも現在2才の娘がいます。裁判が進むにつれて、被告の水穂と自分を重ね合わせて行き、今まで気がつかずに暮らしていた自らの事を深く考える様になっていきます。
読む前は、子育てに苦労する母親の話と思っていたのですが、読んでみたら、夫婦間のモラルハラスメントについても考えさせられる小説でした。
こういったモラハラについて書かれている小説を、今まで読んだ事がなかったからかもしれませんが、微妙で難しい部分を、ここまで書ける角田さんの力は本当に凄いと思いました。
ちょっとした言葉や、相手の受け止め方によって、こうなってしまうんだ…っていうのが、本当に怖かったです。
何の気なしに言った言葉も、悪い方に解釈される事もあるし、逆に知らないうちに、相手を酷く傷つけてしまう事もあるんだな・・と、言葉って怖い。
私は里沙子や水穂の立場にも共感出来る処があったけれど、里沙子らの母や、姑の事も自分に重ね合わせて考えさせられて、うーーん・・と重苦しい気持ちになりました。
私も2歳の娘と暮らしていた時は、殆ど24時間毎日、母子2人っきりだったので、身につまされる処があったわ・・・。
だから、最初読みながら、里沙子は姑に、こんなに良くしてもらえて、あーちゃんを毎日預かってもらえて、帰りに豪華な食事まで用意してくれて、なんて恵まれてるんだろう?って羨ましく思っちゃった位だったんです。ちょっと里沙子ったら恵まれてるよー!文句多すぎーなんて思ってたんです。
でも、読み進めていくうちに、助けてもらえる半面、こりゃキツイな、イヤだな、って部分もたくさん解って来て・・・。
とはいえ、この姑さんは、やっぱり凄い。2歳の孫を毎日預かりながらも、自分たちと孫に食べさせる食事を作り、それとは別に、豪華な夕食も作るなんて・・・。
それにしても、夫が密かに姑に何か先回りして言うとか、凄くイヤです。
それと、たまたま運が悪く、声をかけたママ友さんや、話した保健婦さんが、傷つくことを言う人だったりして、自ら誰かと交流することを拒んでしまい、どんどん孤立して行く水穂の様子(里沙子の想像による)は、可哀想だったし、ノイローゼになるのも解るなあ・・・と思いました。
里沙子の娘の、あーちゃんが、まぁー腹立つ事するし、言うこと聞かないし、里沙子がイライラするのも良ーーく解る。
夜の道で、こっそり置き去りにして、ちょっと離れた処から見てた時、なんと旦那にその現場を目撃されてしまう!
ここらへんは、よくある日常生活の出来事なのにもかかわらず、非常に緊張するシーンでした。
それ以後、旦那が里沙子の我が子に対する虐待を、少々疑うというか心配するようになって・・・。
あと、里沙子がビールをとても美味しそうに飲むんですよね(^^ゞ 私はそんなに美味しくビールを感じたことが無いのですが、きっと角田さんは、ビールの美味しさをしみじみ感じているんだろうな、私もこの小説を読んで、ひさしぶりにビールを飲みたくなりました。
★この下の方でネタバレです★
以下ネタバレです!
最後の方、409頁で、「憎しみではない、愛だ。相手をおとしめ、傷つけ、そうすることで、自分の腕の中から出て行かないようにする。愛しているから。それがあの母親の、娘の愛し方だった」それなら陽一郎もそうなのかもしれない。
という処。そう来たか?角田さんの、潔く言い切った勇気に驚かされました。
こういうのも歪んだ表現ではあるけれども、愛し方のひとつと言えるんだろうか、と、しばし考えさせられました。
未だに自分の中で答えは出てないんですけれどもね。
417頁で、被告人に裁判長が「懲役9年に処す」と言って判決を読み上げている間に、里沙子が妄想するシーンがある。
里沙子は水穂と、お互いの身の上や、大変だったことを、笑いながら、和気藹々と親しげに会話している・・・。そんな風な友達にもなれたかもしれなかったのに・・・。ここは切なかったです。
さて、里沙子はこれからどうなるんでしょうか・・・。もしや離婚したりするのでしょうか・・。それとも、また数か月たつと、あんな時期もあったよなー、あの時は過剰になっていたっけ・・・って笑って思えるようになっているのかしら。
凄く読み応えのある作品で、さすが角田さん!って思いました。
これからも、また角田さんの小説を楽しみにしています。4つ★半~5つ★。
「平凡」
「私のなかの彼女」
「空の拳」
「口紅のとき」
「それもまたちいさな光」「月と雷」感想
「異性」「紙の月」
「曾根崎心中」「かなたの子」
「なくしたものたちの国」「ツリーハウス」
「水曜日の神さま」
「福袋」
「くまちゃん」面白かったです
「森に眠る魚」(ネタバレです 注意!)
「何も持たず存在するということ」
角田光代さんの小説色々感想まとめ
「三面記事小説」「マザコン」
「ロック母」
「薄闇シルエット」凄く共感、良かった 角田光代
「いつも旅のなか」「誰かのことを強く思ってみたかった」
「presents」「夜をゆく飛行機」
「恋をしよう。夢をみよう。旅にでよう。」 「恋するように旅をして」の感想
「対岸の彼女」感想と、全あらずじ
「ドラママチ」 「太陽と毒ぐも」「12星座の恋物語 」感想
「八日目の蝉」 角田光代 凄く引き込まれて一気読み
普段は一気に読める角田作品ですが、本作は読むのに時間がかかって、2,3日に分けての読書でした。
いやー、すごかった・・。
内容は、子供を溺死させてしまった女性を裁く事件の補充裁判員に、たまたま選ばれてしまった里沙子という女性のお話。
里沙子にも現在2才の娘がいます。裁判が進むにつれて、被告の水穂と自分を重ね合わせて行き、今まで気がつかずに暮らしていた自らの事を深く考える様になっていきます。
読む前は、子育てに苦労する母親の話と思っていたのですが、読んでみたら、夫婦間のモラルハラスメントについても考えさせられる小説でした。
こういったモラハラについて書かれている小説を、今まで読んだ事がなかったからかもしれませんが、微妙で難しい部分を、ここまで書ける角田さんの力は本当に凄いと思いました。
ちょっとした言葉や、相手の受け止め方によって、こうなってしまうんだ…っていうのが、本当に怖かったです。
何の気なしに言った言葉も、悪い方に解釈される事もあるし、逆に知らないうちに、相手を酷く傷つけてしまう事もあるんだな・・と、言葉って怖い。
私は里沙子や水穂の立場にも共感出来る処があったけれど、里沙子らの母や、姑の事も自分に重ね合わせて考えさせられて、うーーん・・と重苦しい気持ちになりました。
私も2歳の娘と暮らしていた時は、殆ど24時間毎日、母子2人っきりだったので、身につまされる処があったわ・・・。
だから、最初読みながら、里沙子は姑に、こんなに良くしてもらえて、あーちゃんを毎日預かってもらえて、帰りに豪華な食事まで用意してくれて、なんて恵まれてるんだろう?って羨ましく思っちゃった位だったんです。ちょっと里沙子ったら恵まれてるよー!文句多すぎーなんて思ってたんです。
でも、読み進めていくうちに、助けてもらえる半面、こりゃキツイな、イヤだな、って部分もたくさん解って来て・・・。
とはいえ、この姑さんは、やっぱり凄い。2歳の孫を毎日預かりながらも、自分たちと孫に食べさせる食事を作り、それとは別に、豪華な夕食も作るなんて・・・。
それにしても、夫が密かに姑に何か先回りして言うとか、凄くイヤです。
それと、たまたま運が悪く、声をかけたママ友さんや、話した保健婦さんが、傷つくことを言う人だったりして、自ら誰かと交流することを拒んでしまい、どんどん孤立して行く水穂の様子(里沙子の想像による)は、可哀想だったし、ノイローゼになるのも解るなあ・・・と思いました。
里沙子の娘の、あーちゃんが、まぁー腹立つ事するし、言うこと聞かないし、里沙子がイライラするのも良ーーく解る。
夜の道で、こっそり置き去りにして、ちょっと離れた処から見てた時、なんと旦那にその現場を目撃されてしまう!
ここらへんは、よくある日常生活の出来事なのにもかかわらず、非常に緊張するシーンでした。
それ以後、旦那が里沙子の我が子に対する虐待を、少々疑うというか心配するようになって・・・。
あと、里沙子がビールをとても美味しそうに飲むんですよね(^^ゞ 私はそんなに美味しくビールを感じたことが無いのですが、きっと角田さんは、ビールの美味しさをしみじみ感じているんだろうな、私もこの小説を読んで、ひさしぶりにビールを飲みたくなりました。
★この下の方でネタバレです★
以下ネタバレです!
最後の方、409頁で、「憎しみではない、愛だ。相手をおとしめ、傷つけ、そうすることで、自分の腕の中から出て行かないようにする。愛しているから。それがあの母親の、娘の愛し方だった」それなら陽一郎もそうなのかもしれない。
という処。そう来たか?角田さんの、潔く言い切った勇気に驚かされました。
こういうのも歪んだ表現ではあるけれども、愛し方のひとつと言えるんだろうか、と、しばし考えさせられました。
未だに自分の中で答えは出てないんですけれどもね。
417頁で、被告人に裁判長が「懲役9年に処す」と言って判決を読み上げている間に、里沙子が妄想するシーンがある。
里沙子は水穂と、お互いの身の上や、大変だったことを、笑いながら、和気藹々と親しげに会話している・・・。そんな風な友達にもなれたかもしれなかったのに・・・。ここは切なかったです。
さて、里沙子はこれからどうなるんでしょうか・・・。もしや離婚したりするのでしょうか・・。それとも、また数か月たつと、あんな時期もあったよなー、あの時は過剰になっていたっけ・・・って笑って思えるようになっているのかしら。
凄く読み応えのある作品で、さすが角田さん!って思いました。
これからも、また角田さんの小説を楽しみにしています。4つ★半~5つ★。
「平凡」
「私のなかの彼女」
「空の拳」
「口紅のとき」
「それもまたちいさな光」「月と雷」感想
「異性」「紙の月」
「曾根崎心中」「かなたの子」
「なくしたものたちの国」「ツリーハウス」
「水曜日の神さま」
「福袋」
「くまちゃん」面白かったです
「森に眠る魚」(ネタバレです 注意!)
「何も持たず存在するということ」
角田光代さんの小説色々感想まとめ
「三面記事小説」「マザコン」
「ロック母」
「薄闇シルエット」凄く共感、良かった 角田光代
「いつも旅のなか」「誰かのことを強く思ってみたかった」
「presents」「夜をゆく飛行機」
「恋をしよう。夢をみよう。旅にでよう。」 「恋するように旅をして」の感想
「対岸の彼女」感想と、全あらずじ
「ドラママチ」 「太陽と毒ぐも」「12星座の恋物語 」感想
「八日目の蝉」 角田光代 凄く引き込まれて一気読み
後は、読んでからです。
何気なく言った言葉が誤解されることがよくありますね。
以前、雨の日に同僚がお客様に「 雨の中、わざわざ、ご来場ありがとうございます」とお礼を言ったら、
後から会社に「 おたくの従業員に、こんな雨の日に、わざわざよう来たなと言われた。失礼だ」と苦情がありました。
言葉って取りようによって、すっかり変わってしまうもんですね。
本当に怖いですね。
リクエスト中なのですね。
ウエスティーさんが、読まれて、どういう感想をもたれるのか、とても興味あります!
そうなんですよね・・・言葉って難しい。
面と向かっての会話でさえ、行き違ったり、こちらの思ったのとは、違う風に取られてしまうことがありますよね。ましてや、こういうネットでの文章だけとなると、ますます難しい。
ウエスティーさんの同僚さんの、その雨の日のご挨拶。そんな風に思われてしまったなんて、びっくりです・・・。しかも、後から苦情を言うだなんて、信じられない・・・。
ショックですよー!
その人は、相当へそまがりか、何かにやつあたりしたかったんじゃないだろうか?と、思ってしまいます!
この辺の学校だと、今日が入学式で、桜がどうにか咲いている、って感じですよ。
雨で結構散ってしまったけど。
私、おすすめされた時、正直「・・・重そう」って引いてしまったんですよね。
自分に共感するところがないものを読みたいっていう気持ちがあって。
現実でおなかいっぱいだし、って。
私、女っていうことを持て余しているっていうか・・・こじらせているというような、今風を気取るわけではないんですが・・・
でも、ここですごくプッシュされていたので(そうか、モラハラなら新しい気持ちで読めるかもって思って)よし、って思って予約したけど、何か今年に読むのは難しそうでした・・・
角田ファン、恐るべし!
来年くらいにここに来るかも・・・
昨日、雑誌で辻村深月さんの連載小説を読んだんですが、角田さんのファンの射程圏内を網羅するっていうか、ま、簡単に言うと、かぶってきたな、って思いました。
今「ムジカピッコリーノ」見たけど、あんまりオダギリさん出ませんでしたね。
そうなんですかー、こちらは今が桜が満開の様子です。そちらは、少し早めに咲いたんですね。
この小説、そうなんです・・相当重いですよね、、結構読むのにパワーが要るというか・・・
読み進めるの、結構キツイ本でしたから・・・。
>辻村深月さんの連載小説を読んだんですが、角田さんのファンの射程圏内を網羅するっていうか、ま、簡単に言うと、かぶってきた
わっ!そうなんですか?
私の友達で、角田さんの小説が好きな人がいて、その人が最近辻村さんの小説をオススメしてきて(その小説が、上記の連載小説かどうかは解らないんだけれども)
辻村作品、しばらく読んでいなかったので、今度読んでみようかな?
ツナグでしたっけ・・・?あれを読んだのが最後だったのですが、いまひとつ私にはピンと来なくて。その前に読んだ、彼女の作品も、それほど・・・だったので。
ご出産されてから、作風に変化が生じたのかな。
ムジカーは、まだ見てないんです。録画はしました!後で見てみます
いつもは光の差さない閉架図書にあるっていうのが、この小説のあり方としてふさわしいけど、こんなにびっくりしたのは「シックスセンス」以来(古すぎ?)なので、もっと手にとってほしいですね。
「坂の途中の家」は一気に読みました。
難しかったです。
自分は被害者ポジションを先取りして、相手を加害者ポジションに立たせて、保身を何とかとって、自己肯定感をとりあえず満たす。んで、相手や周りに失礼な態度を取った後、地球の裏側までめり込む、その繰り返しのような私の人生にはとにかく耳が痛かったです。
困るなぁ、角田さん、って思いながら読んでました。
でも私の一番気になったところは、↑でlatifaさんも少しおっしゃってましたが、義理のお母さん。
今、孫がストレスって、新聞なんかで見るんだけど、毎週末、娘が孫を連れてくる、自分としては働く娘を応援したい、でも、年を重ねて、ご飯作って面倒をみるっていうのが負担になってきている、(夫は役に立たない)でも言えないから、月曜日は寝込むっていう(そして夫は役に立たない)・・・
老化って脳も柔軟じゃなくなってくるから、限られた情報から、分かりやすいストーリーを見たいように見る、っていうのはある(多分私もそうやって娘をいつか傷付けると思う、今もか?)ことだし、実際にご飯を作るって大変ですよ。
お義母さん目線で読みたいですね。
角田さんなら、60代とかになってそういうの書きそう。
嫁がこうでああで、っていう。
愛について断言されているところは、私は、話半分にして読みました。
あなたは断言されたけど、私は分かりませんから、保留です、ってつっぱねちゃった。
>「この闇と光」は閉架図書にある
こっちも、そうだったかも。
リクエストして、他館にあったのを、引っ張って来てもらったの。
もうちょっと目立つところにあっても、よさそうなものなのに。
ところで、MOZUの件、旦那に聞いたら、おどろき!そうなのね、びっくり・・・。彼は、ちと無理よねぇー。
全然話違うんですが、昨日デスノートの特番やっていて、10年ぶりくらいに見たら、マツケンがシャープでカッコよくて、びっくり。
脇を固める人が、今や主役クラスになっている人がゴロゴロいて。
戸田さんも若くてまだほっぺぷりぷりで、シューイチの司会やってるお姉さんが、アナウンサー役で出てたり、満島さんがライトの妹役とか・・・。10年で様変わりするなあ・・・と感傷的になってました。見てなかったら、なんのこっちゃですよね。
>孫がストレス
多いですよね・・・ 昔は、こういうの聞いたことがなかったけれど、実は表に見えないだけで、あったのかしら?
それとも、昔と今とでは、じじばばの気持ちの変化があるのかな?
>月曜日は寝込む
そうそう、GWとかお正月とか、孫と子供らがやってきて、嬉しいけど疲れて、その後寝込む人が多いんですってね・・・。
ひとごとではないわ。
いつか私もその立場になったら・・・と想像するとね・・・。
>お義母さん目線で読みたいですね。
角田さんなら、60代とかになってそういうの書きそう。
うん、うん!! そういうのも是非読んでみたいです。誰か書かないかなあ・・・
今、嫁年齢の人が書く小説を中心に読むことが多いから、70代くらいの作家さんのを、ちょっと探してみようかしら!
娘が妊娠中。そして出産後新居に引越しという今、とても重かったです。
娘夫婦はうまくいってる、幸せな今だと信じていますが子育てがどんなものか夢みている状態でしょうね。実母としての今後の関わり方も含めて色々考えさせられました。
娘達はこの本読んだことあるのかしら?
薦めてみたいような、読むなと言いたいような複雑な気持ちです。いや、今は読まないで欲しいです。
コメントありがとうございます!
現在、まさに娘さんが妊娠中、そしてその後お引越しの予定なんですね。
先の事を考えると色々不安はつきませんが、とりあえずまず今は、母子ともに元気で無事出産が終えられて、元気な赤ちゃんに会える事を楽しみに!ですね
娘さんも読書好きなのですか?
これは事前に読むのも有りですが、子育てがひと段落して、数年経った後に読むのも、また良いかと・・・。