現在、オーストラリアについて少々調べています。アボリジニの問題、白豪主義の問題、移民政策の問題などいろいろ出てきますが、その中でも現在につながるものとして出てきたのがLOTE教育というものです。LOTEとはLanguages Other Than Englishの頭文字であり、LOTE教育とは「英語以外の言語」の教育のことです。オーストラリアでは「英語」が「公用語」ですからこのLOTE教育は母語以外教育というわけです。日本だったら日本語以外教育であり、筆頭に上げられるのは英語でしょう。日本において英語以外に言語戦略が存在するのかどうかは私の知るところではありません。
岡戸(2002)によればオーストラリアでは1987年に「言語に関する国家の政策(National Policy on Languages)が公表され、そこでLOTEについてさまざまな問題が取り上げられたそうです。さらに1991年には連邦雇用・教育・訓練省(Department of Employment, Education and Training)によって「オーストラリアの言語:オーストラリアの言語と識字政策(Australia's Language: The Australian Language and Literacy Policy)が出され、現在これに基づいて言語政策が行われているといいます。そして「言語に関する国家の政策」では、Nine Key Languages(9つの重要な言語)として、アラビア語、中国語、フランス語、ドイツ語、ギリシャ語、インドネシア/マレー語、イタリア語、日本語、スペイン語の9言語が挙げられているようです。きちんと「日本語」も入っていますね。岡戸(2002)ではグラッドルの『英語の未来』から「第一言語としての使用者数から見た世界の主要言語」の表を紹介しています。これを見ると日本語は世界で9位となっています。だからでしょうか?Nine Key Languagesの1つとして日本語が挙げられているのか。よく分かりません。
岡戸(2002)によれば、「オーストラリアでは、ただLOTEを学校段階で提供するだけにとどまらず、より多くの言語を学ぶ機会について持続的に支援できるような体制が設けられている」といいます。オーストラリアにはオーストラリアの事情があり、日本には日本に事情があるでしょうから、単純な比較はできませんが、それにしても日本の言語戦略にははっきりしたものが見えてきません。単一言語主義を超えて二言語併用を推進しようとしているように見えますが、オーストラリアは多言語主義、あるいは複数言語主義と一歩も二歩も先をいっているようです。このへんどうでしょうか。
岡戸(2002)では現在のオーストラリアでのLOTE教育が成功しているのかどうかについてはあまり述べられていませんが、強いて言えば、「教員不足」「予算不足」によりLOTEを提供することにおいて足踏みをしていることを挙げています。しかし例えば、デイヴィッド・マイヤーズ(David Myers)氏は「オーストラリア人の言語事情」の中で「成功していない」とはっきり述べています。
どちらにしてもこれからの改善が期待されるところなのでしょう。我々もLOTEの理念は受け入れてもよさそうに思いますが、どうでしょうか。
[参考]
・岡戸浩子 (2002) 「オーストラリアの多文化社会とLOTE教育」 河原俊昭(編) 『世界の言語政策―多言語社会と日本』 くろしお出版
・ディヴィッド・マイヤーズ (1999) 「オーストラリア人の言語事情」 中京大学社会科学研究所オーストラリア研究部会 『日・豪の社会と文化Ⅱ―オーストラリアをどう認識するか―』 成文堂
・David Graddol (1997) The Future of English? British Council
※ブログランキングに参加しています。よろしければクリックをお願いします。
岡戸(2002)によればオーストラリアでは1987年に「言語に関する国家の政策(National Policy on Languages)が公表され、そこでLOTEについてさまざまな問題が取り上げられたそうです。さらに1991年には連邦雇用・教育・訓練省(Department of Employment, Education and Training)によって「オーストラリアの言語:オーストラリアの言語と識字政策(Australia's Language: The Australian Language and Literacy Policy)が出され、現在これに基づいて言語政策が行われているといいます。そして「言語に関する国家の政策」では、Nine Key Languages(9つの重要な言語)として、アラビア語、中国語、フランス語、ドイツ語、ギリシャ語、インドネシア/マレー語、イタリア語、日本語、スペイン語の9言語が挙げられているようです。きちんと「日本語」も入っていますね。岡戸(2002)ではグラッドルの『英語の未来』から「第一言語としての使用者数から見た世界の主要言語」の表を紹介しています。これを見ると日本語は世界で9位となっています。だからでしょうか?Nine Key Languagesの1つとして日本語が挙げられているのか。よく分かりません。
岡戸(2002)によれば、「オーストラリアでは、ただLOTEを学校段階で提供するだけにとどまらず、より多くの言語を学ぶ機会について持続的に支援できるような体制が設けられている」といいます。オーストラリアにはオーストラリアの事情があり、日本には日本に事情があるでしょうから、単純な比較はできませんが、それにしても日本の言語戦略にははっきりしたものが見えてきません。単一言語主義を超えて二言語併用を推進しようとしているように見えますが、オーストラリアは多言語主義、あるいは複数言語主義と一歩も二歩も先をいっているようです。このへんどうでしょうか。
岡戸(2002)では現在のオーストラリアでのLOTE教育が成功しているのかどうかについてはあまり述べられていませんが、強いて言えば、「教員不足」「予算不足」によりLOTEを提供することにおいて足踏みをしていることを挙げています。しかし例えば、デイヴィッド・マイヤーズ(David Myers)氏は「オーストラリア人の言語事情」の中で「成功していない」とはっきり述べています。
我々が学校で導入している英語以外の言語(LOTE [Languages other than English])プログラムが成功していない理由には、学習言語の評価をする厳正な試験基準を設けていないこと、親と教師が外国語学習というのは価値のないものだと思っている子供たちに対して、未知の単語を暗記することは楽しいことなのだと教えることを怠っていることが挙げられる。我々が数カ国語をあやつることができるようになった時、また本当の読み書き能力というのは1ヵ国以上の言語を用いて自分を表現できる喜びを味わうことなのだということを悟るようになった時、オーストラリアは多文化主義社会になるのである。 |
どちらにしてもこれからの改善が期待されるところなのでしょう。我々もLOTEの理念は受け入れてもよさそうに思いますが、どうでしょうか。
[参考]
・岡戸浩子 (2002) 「オーストラリアの多文化社会とLOTE教育」 河原俊昭(編) 『世界の言語政策―多言語社会と日本』 くろしお出版
・ディヴィッド・マイヤーズ (1999) 「オーストラリア人の言語事情」 中京大学社会科学研究所オーストラリア研究部会 『日・豪の社会と文化Ⅱ―オーストラリアをどう認識するか―』 成文堂
・David Graddol (1997) The Future of English? British Council
※ブログランキングに参加しています。よろしければクリックをお願いします。
私も2年前まで広島にいたのでご縁を感じました☆
LOTE教育という言葉、初めて知りました。オーストラリアの友人がいるので、今度聞いてみたいと思います☆
えびさんとは広島つながりですかね。
LOTE教育については本からの知識ですので、実際のところどの程度まで行き渡った政策なのかは私も関心のあるところです。